【6月30日経済財政諮問会議詳報】政府、「骨太方針2026」原案提示 国内投資拡大で「強い経済」実現へ

政府は2026年6月30日、経済財政諮問会議を首相官邸で開き、「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太方針2026)の原案を示した。高市内閣として初めてまとめる骨太方針であり、国内投資の拡大を起点に「強い経済」を構築し、財政の持続可能性と両立させる方針を打ち出した。同日夜には城内実内閣府特命担当大臣(経済財政政策、規制改革)が記者会見を開き、原案の内容や関連する会議の結果を説明した。

国内投資を起点とした「強い経済」の構築

骨太方針2026の原案は、長年続いてきた過度な緊縮志向と投資不足の流れを断ち切り、新たな経済財政運営へ転換することを掲げている。柱となるのは「危機管理投資」と「成長投資」であり、AI・半導体や量子、防衛産業、創薬・先端医療など17の戦略分野に官民の投資を集中させる。政府はこの分野で62の主要製品・技術を選定し、官民投資ロードマップに基づく施策を進める考えだ。内閣府の試算では、2040年度までの累計投資額は370兆円を超える見通しとなっている。

Photo by 健太 上田/ Adobe Stock

投資を後押しする財政上の措置としては、通常歳出とは別枠で『「強く豊かな日本」投資枠』を新設する。要求上限(シーリング)を設けず、事項要求を含めて必要な額を要求できる仕組みとし、複数年度にわたる予算措置を基本とする。あわせて、大規模な経済対策を補正予算で賄う従来の運営から脱却し、恒常的な施策は当初予算で措置する方針も明記した。

財政運営目標は「債務残高対GDP比」の安定的低下

財政運営の目標については、単年度のプライマリーバランス(PB)黒字化を機械的に追うのではなく、国と地方をあわせた債務残高対GDP比の安定的な低下を中核に据える。景気変動や危機管理投資・成長投資の必要性に応じて、PBの一時的な悪化も許容し得るとした点が特徴だ。これまで基本方針で繰り返し使われてきた「財政健全化」という表現は姿を消し、「財政の持続可能性」という言葉に統一されている。

城内大臣は記者会見で、この用語変更について、財政健全化という考え方を否定するものではなく、より具体的な概念である財政の持続可能性に焦点を当てた結果だと説明した。諸外国でも財政の持続可能性(フィスカルサステナビリティ)という考え方が広く使われている点を、変更の背景として挙げている。

最低賃金は2030年代前半に全国平均1,500円

賃上げ環境の整備も重点分野の一つに位置付けられた。最低賃金については、2020年代に全国平均1,500円という目標の達成に向けて官民で努力を続け、遅くとも2030年代前半のできる限り早期に実現することを目指す。中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化を通じて、賃上げを支える環境を整えるとしている。

同日開かれた第6回日本成長戦略会議では、日本経済団体連合会(経団連)会長の筒井義信氏が国内投資目標について、従来の200兆円を上回る2040年度250兆円という目標を目指す考えを表明した。これを受けて高市早苗総理は、官民連携をこれまで以上に強化する考えを示すとともに、賃上げの責任を事業者だけに負わせず、継続的に賃上げできる環境を政府として整備していく考えを述べた。

日銀との連携巡るやり取り

こうした成長投資・賃上げ策とあわせて、原案は金融政策との関係にも触れており、「強い経済」の実現には適切な金融政策運営も重要であるとの記載を盛り込んだ。会見では、日本銀行法第4条や政府・日本銀行の共同声明への言及が増えた背景を問う質問が出た。城内大臣は、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、日本銀行が政府と緊密に連携し十分な意思疎通を図りながら適切な金融政策運営を行うことを期待すると述べた一方、日本銀行法第3条が定める自主性についても触れ、金融政策の具体的な手法は日本銀行に委ねられるべきだとの認識を重ねて示した。

中東情勢を注視、原油価格は緊迫化以前の水準に接近

同日、政府は月例経済報告等に関する関係閣僚会議も開き、当面の経済情勢を確認した。景気の基調判断は「緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある」で維持した。城内大臣によれば、原油やナフサの国際価格は中東情勢の緊迫化以前の水準に近づいており、国内の石油・化学製品の生産も原料の代替調達が進んだことで4月を底に増加に転じている。消費者物価は激変緩和措置により上昇が抑えられ、賃上げの進展とともに実質賃金はプラスを維持しているという。政府は米国とイランの覚書が着実に履行され、ホルムズ海峡での自由で安全な航行が早期に再開されることに期待を示し、中東情勢が日本経済や物価に与える影響を引き続き注視するとした。

 規制改革と人口戦略も同時に前進

骨太方針の議論とあわせて、城内大臣は前日に決定した規制改革や人口戦略に関する取り組みについても説明した。6月29日には第28回規制改革推進会議が開かれ、「規制改革推進に関する答申」が決定された。政府は答申を踏まえて「規制改革実施計画」を速やかに閣議決定し、実行に移す。同じく29日には第2回人口戦略本部が持ち回りで開催され、高市総理から城内大臣に対し、有識者会議を含めた推進体制を強化し、2026年末をめどに一貫した人口戦略を策定するよう指示があった。策定にあたっては、将来必要となる労働力人口の規模も検討課題とする。

政府は今後、骨太方針2026の原案について与党との調整を進め、閣議決定を目指す。あわせて、2027年度予算の概算要求に向けた準備も本格化する見通しだ。