内田洋行グループ×文化財活用センター 東京国立博物館「日本美術のとびら」を刷新 「一期一会」の鑑賞体験を提供

株式会社内田洋行は、博物館や図書館、教育施設の空間演出や教育コンテンツ制作を手がける企業グループとして、東京国立博物館(東京都台東区)本館1階の展示室「日本美術のとびら」のリニューアルに携わった。2026年6月30日にオープンした同室で、内田洋行グループはインタラクティブな映像コンテンツ「とーはくワンダーウォール〈一期一会〉」を制作した。

(左から)内田洋行 代表取締役社長 大久保 昇、東京国立博物館長 藤原 誠氏、文化財活用センター センター長 大美 慶昌氏

このコンテンツは、幅14メートルの大型スクリーンを使い、東京国立博物館が所蔵する約12万件の収蔵品情報を活用する。国立文化財機構の所蔵品統合検索システム「ColBase(コルベース)」と連携し、その日に実際に展示されている約3,000件の作品からリアルタイムに名品を選び出して紹介する。来館者はモーションセンサーで身体の動きを読み取る画面を通じて作品と出会い、小さな子どもから車いすの利用者まで参加できる。表示は日本語・英語・中国語・韓国語の4言語に対応する。「研究員の推しと出会う」「国宝や重要文化財と出会う」など6つのテーマを設け、東京国立博物館の50名以上の研究員が持つ専門知識を反映させた。狙いは、その日に見られる名品との出会いを来館者一人ひとりに異なる形で届け、展示室への期待感を高めることにある。

内田洋行が全体を統括し、グループのパワープレイス株式会社や内田洋行共創システムデザインチーム、ユビキタスライブラリーが開発を担った。事業主体として企画・プロデュースを手がけたのは、独立行政法人国立文化財機構の文化財活用センター(東京都台東区)である。東京国立博物館は施設の提供と研究員の協力を担い、館の研究成果を体験設計へと反映させた。

文化財活用センターは、来館者の困りごとやニーズを起点にコンテンツを構想したとする。約12万件の収蔵品のうち、その日展示されるのは一部にとどまり、脆弱な文化財は保存上の理由で展示日数が限られるため、目当ての名品に必ず出会えるとは限らない。同センターは、こうした条件を逆に「今日その文化財と出会うのは二度とない巡り合わせ」と捉え、テーマを「一期一会」に定めたと説明する。そのうえでコンテンツは、来館者が選んだテーマに沿って、その日確実に展示されている作品の中からおすすめの一点を提案し、自分で選ぶ楽しさと偶然の出会いを両立させることを狙ったという。

内田洋行の大久保昇社長は、このプロジェクトで最も大切にしたのは「本物と出会う楽しさをどう伝えるか」だと説明する。来館者の興味や関心に合わせて文化財にアクセスできる切り口を6つ設け、その日にその場に立つ人によって現れる作品が変わる、偶然の出会いを楽しめる仕掛けにしたという。こうした体験は技術だけで実現できるものではなく、企画の初期段階から東京国立博物館の研究員と何度も議論を重ね、文化財のどこに魅力があるかを語ってもらったうえで表示の方法を考えたと述べた。システムが扱うのはデータベースや映像だが、そこには研究員の知見や思いも織り込まれているとする。同社が教育の場や図書館、公共施設で「人が主人公となる創造的な場づくり」に取り組んできたことに触れ、今回も人と人、人とデータ、人と本物の文化財をつなぐ体験を目指したとし、この展示を通じて文化財の価値が次の世代へ受け継がれる一助になればと語った。

博物館の常設展示は、収蔵品の入れ替えによって来館日ごとに見られる作品が変わる。今回の取り組みは、収蔵品データベースと展示状況をリアルタイムに結び付けることで、その変化を鑑賞体験の入り口へと転換するものである。膨大な文化財情報をデジタル技術で来館者に手渡す試みは、博物館における鑑賞体験のあり方に一つの選択肢を示す。