近大病院、中外製薬、NTTなど 純国産LLMで治験候補患者抽出へ、4者で共同研究
近畿大学病院 腫瘍内科、中外製薬、NTT、NTTデータの4者は、実臨床で蓄積されるリアルワールドデータと大規模言語モデル(LLM)を活用し、新薬の治験に参加する候補患者を抽出する精度と効率を検証する共同研究を6月に開始した。2026年6月30日に発表した。NTTが独自開発した純国産LLM「tsuzumi 2」を用い、従来の抽出手法とLLMを組み合わせた手法を比較・評価する。研究期間は2027年3月までを予定する。
研究では、近畿大学病院が保有する電子カルテデータなどを対象に、中外製薬が策定した治験実施計画書の適格基準に基づいて治験候補患者を抽出。医師や治験コーディネーター(CRC)の判定結果を比較基準とし、実運用における有効性や作業負荷の低減、治験参加者の組み入れまでのリードタイム短縮への寄与を多面的に検証する。
新薬の臨床開発において、治験候補患者の抽出は時間がかかるプロセスだ。治験実施計画書の適格基準に沿って医師やCRCが個別に診療情報を確認する必要があり、多くの労力を要してきた。その結果、参加者の組み入れが計画通りに進まず、治験全体のスケジュールに影響がでることもある。
技術検証では、NTTデータが医療情報活用基盤「千年カルテ」の運用で培った安全な情報管理・データ運用設計の実績と、医療データの活用・解析に関する知見を活かし、LLMとルールベース手法による抽出の検証を実施する。NTTが独自開発した純国産LLM「tsuzumi 2」をベースに、医学的な公開論文などの事前学習を継続的に行った医療特化型LLMとして検証する予定だという。
抽出手法は、PythonとSQLによるルールベースの手法、LLMを活用した手法、両者を組み合わせた手法の3通りを実施。それぞれの結果を医師・CRCの判定結果と比較して抽出精度を評価する。あわせて抽出に要する時間や、医師・CRCの作業量・内容の変化も確認し、精度と効率の両面からリードタイム短縮につながるかを検証する。なお、AIの出力はあくまで医師の判断支援を目的としたもので、最終的な診療判断は医師が行う。
今回の共同研究は、2026年5月に近畿大学病院とNTTデータが発表した技術検証の成果を基盤としている。各機関の役割分担は、近畿大学病院が医療データの提供と抽出精度・プロセス効率の比較・評価を担い、中外製薬が治験実施計画書(適格基準)の提供と評価協力、NTTがLLMによる抽出の技術検証、NTTデータがルールベースによる抽出と比較・評価を担当する。本研究は近畿大学医学部等倫理委員会の承認を得て実施する。4者は本研究の成果を踏まえ、医療機関や製薬企業とのさらなる連携を通じて、リアルワールドデータとAIを活用した治験候補患者抽出基盤の社会実装の可能性を検討していく方針だ。LLM活用によるリードタイム短縮は、治験全体の期間短縮や製薬企業の開発スピード向上、医療機関の治験実施体制のスリム化につながり、患者が新たな治療選択肢へより迅速にアクセスできる環境の整備に貢献すると期待される。