セントレア、駆除したヒトデを山の鳥獣忌避剤に 海と山をつなぐ資源循環を本格展開
中部国際空港株式会社は、空港周辺海域で駆除したヒトデを、岐阜県大野町の植林地で鳥獣の忌避剤として再利用する資源循環プロジェクトを2026年から本格展開する。同社が運営する中部国際空港(セントレア)が立地する伊勢湾の環境保全活動の一環で、海で未利用となっていた資源を山の課題解決に役立て、「海と山をつなぐ」循環モデルの確立を目指す。
セントレアは「伊勢湾の豊かな海を守る」ことを掲げ、海の環境を支える上流域の森林づくりを支援する「山づくりから始める海づくり」を進めてきた。2023年に植林した大野町の植林地では、シカやイノシシなどによる苗木の食害が課題となっていた。一方、空港周辺海域では二枚貝などを食べるヒトデが漁業者にとって駆除の対象となっている。乾燥させたヒトデを苗木の周辺に設置したところ、シカ、イノシシ、ハクビシンなどの食害を抑える効果が確認された。2025年に活用を開始し、2026年は漁業関係者も加わって本格的に取り組む。今後はクマ対策への応用も検証する。
プロジェクトは三者の連携で進む。中部国際空港株式会社が植林活動を主導し、ヒトデの乾燥加工を担う。愛知県鬼崎漁業協同組合がヒトデを調達・寄贈し、設置作業にも参加する。岐阜県大野町は植林地での設置と効果測定を担当する。2026年は約200キログラム(乾燥後約40キログラム)のヒトデを寄贈し、傾斜30度の斜面で共同設置作業を実施した。植林活動は長野県木曽町(2022年度)、大野町(2023年度)、岐阜県郡上市(2024年度)、下呂市(2025年度)、三重県いなべ市(2026年度)と、流域の自治体で継続している。
駆除の対象だったヒトデが山で価値を持つ取り組みは、漁業の未利用資源に新たな用途を示す事例となる。空港、漁協、自治体という異業種が連携し、海の環境保全と山の鳥獣被害という二つの地域課題を同時に解決しようとする点に特徴がある。鬼崎漁業協同組合の平野正樹参事は「海で困っているものが山で価値を持つ循環」への協力の意義を述べ、大野町の宇佐美晃三町長は資源循環と地域の自然環境保全の両立を評価し、農作物やクマ対策への展開を視野に実証を続ける考えを示した。