トランプ政権で米国の気候変動政策はどう変わるか 2025年以降の見通しは?

(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年11月7日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

トランプ大統領がキャメロンLNG輸出ターミナルを視察している様子

米国が新たなトランプ政権を迎える準備を進める中、気候変動政策は新たな大統領が明確に方針転換することを検討している分野の一つである。

気候変動政策の新方針はまだ公式には発表されていないが、トランプ氏の過去の大統領任期中の戦略と、クリーンエネルギーに対する頻繁な批判は、今後の動向を予測する手がかりとなる。

パリ協定から再離脱の可能性

2017年、トランプ氏は初の大統領任期の開始から6カ月も経たないうちに、2015年に締結された国際的な気候協定「パリ協定」から米国を正式に離脱させた。この協定には、気候変動による温度上昇やその他の影響を抑えるために、ほぼすべての国が参加している

今回の重大だが過小評価されているリスクは、トランプ氏がパリ協定にとどまらず、さらなる行動を取る可能性があることだ。

トランプ大統領が国連会議に出席し、近くに米国政府高官が座っている様子。
2019年の国連気候行動サミットに出席するトランプ氏。2017年にパリ協定からの離脱を表明した際、「米国にとってより公平な国際協定への再交渉を試みる」と発言した。

例えば、トランプ氏はパリ協定からの再離脱だけでなく、1992年に締結された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)からの脱退を目指すかもしれない。この条約は国際的な気候交渉の基盤となるものであり、これを脱退すれば将来の政権が再参加することはほぼ不可能となる。なぜなら、再参加には上院の3分の2の承認が必要となるからである。

こうした動きの影響は世界中に波及するだろう。パリ協定自体は法的拘束力がなく、信頼とリーダーシップに基づいている。しかし、世界最大の経済国である米国の姿勢は他国の行動にも影響を与える。

結果として、気候政策におけるリーダーシップの役割が中国に移る可能性もある。

バイデン政権下では、他国がクリーンエネルギーを拡大し、気候変動に適応するための米国の資金提供は大幅に増加した。初の米国国際気候金融計画により、新興国や発展途上国を支援するために2024年には110億ドルが拠出された。また、米国国際開発金融公社(U.S. International Development Finance Corporation)の拠出額は、旧トランプ政権の4年間で120億ドルだったのに対し、現バイデン政権の最初の2年間でほぼ140億ドルに急増した。さらにバイデン大統領は、国連のグリーン気候基金に30億ドルを拠出することも約束した。

トランプ氏による次期政権では、これらすべての取り組みが再び縮小される可能性が高い。

クリーンエネルギー政策を転換することは簡単ではない

しかし、他の分野ではトランプ氏がそれほど成功を収めるのは難しいかもしれない。

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