八王子市 大腸がん検診SIBの最終報告書を発表
八王子市は、2020年11月20日、大腸がん健診の受診率向上を目指したソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)導入モデルの結果を発表した。この事業は、2017年度から2019年度まで実施していたもの。最終報告書は、八王子市、ケイスリー(東京都渋谷区)、キャンサースキャン(東京都品川区)の3者でまとめた。
この事業の目的は、大腸がん検診の受診率および検診において精密検査が必要と判定された市民の精密検査受診率を向上させること。これにより、大腸がんの早期発見・早期治療による健康寿命の延伸、さらには医療費の適正化に寄与する。SIB導入モデルの対象としたのは、国民健康保険の被保険者のうち、前年度に大腸がん検診を受診しなかった人6.5万人から抽出した1.2万人の受診率向上と、用精密検査と判定された約3000人の精密検査受診率の向上。
キャンサースキャンによる個々の対象者に対するオーダーメイド受診勧奨で、3200人超が検診を受診し、前年度未受診者全体での受診率は9.5%から11.1%に上昇した。精密検査についても、基準値と本人の検出値を伝えるなどして、82.1%に当たる2561人が受診した。SIBでは、事業者に対する報酬は出した成果に応じて支払われる。八王子市の事業では、事前に定めた成果指標に基づき、540万円を事業者に支払った。
八王子市は、今回のモデル事業を通じて得た学びとして、「事業者間の競争を促すためには、これまでの経緯、実績を含め、革新的手法により事業実施を担える事業者がさらに必要」「死亡率減少効果と医療費適正化効果が示されれば、資金提供者は民間に委ねるのではなく、広域行政が積極的に役割を果たすべき」等を挙げている。
また、京都大学大学院医学研究科の医師に依頼して、早期がん発見時・進行がん発見時の医療費比較分析を行い、新しい成果指標を作成した。この成果指標に基づき計算すると、今回の事業の医療費の適正化効果は3900万円になるという。八王子市は、今後類似の事業を検討する自治体に向け、「大腸がん検診支払条件試算ツール」も併せて公開している。
同市では今後、他のがん検診事業でも、医療費適正化効果額の算出など医療費分析を実施し、成果連動型契約の実施が可能か検討する。他事業への展開については、事業の実施内容と介入効果がつながった客観的な成果指標が作れるかどうかが課題となるという。
