DMO全国フォーラム 観光地の国立大学が観光人材を育成

 

人材不足は観光産業の抱える大きな課題の1つだ。さまざまなデータを収集し、それに基づく施策を打ち出す司令塔の機能を期待されているDMOでは、特に高度な教育が必要になる。2018年1月30日のDMO全国フォーラムでは、、今後の観光産業を支える人材育成について、北海道大学観光学高等研究センターの石黒侑介准教授と、京都大学大学院経営管理研究部経営研究センタ―の前川佳一特定准教授が、それぞれの大学での取り組みを語った。

 

北海道大学観光学高等研究センターは、2006年に開設され、観光を通じた地域づくりや、コンテンツ・ツーリズム、エコツーリズムなど、観光に関する様々な研究を進めつつ、観光創造専攻の修士・博士課程で専門家を育成してきた。2017年からは、観光振興の実務家として「デスティネーション・マネージャー」を育成する、社会人向けの講座(履修証明プログラム)を設置。このコースは、1年間、平日夜や休日などに集中開講することで、仕事をしながら学べる設計になっている。

 

デスティネーション・マネージャーは、日本版DMOにおいて中心となって活躍する人材という位置づけで、北大で商標登録した。同プログラムでは、地域観光資源の発掘から誘客、観光地域づくりの各プロセスに関する専門知識を身に着け、現場で活用できるような人材を育成する。石黒准教授は、「プログラム在籍中から受託研究に参加し、修了後も教員が積極的にサポートしつつ、道内に横のつながりを作ってデスティネーション・マネージャーの地域への定着を図る」と今後の展開を語った。

京大の観光MBAは4月に開講

 

北大のデスティネーション・マネージャーが社会人向けの教育プログラムであるのに対し、京都大学経営管理大学院が2018年4月に設置する観光経営科学コースは、社会人経験のある人を対象としたフルタイムのMBAだ。レジャーから出張、国際会議の誘致などまでを幅広くカバーする、観光・DMOのプロデューサーを育成する。1年目の前半は通常のMBAと同じ科目を履修し、1年目の後半から、観光に特化した科目を履修する。MBAの中の観光専門のコースであるため、経営学をコアに、観光に関する組織論、ファイナンス、マーケティング、経営戦略を学ぶ。

 

学習内容は観光全般だが、京都という世界的な観光地で学ぶアドバンテージも生かす。京都の文化や観光をテーマに、地元の専門家を招聘する授業や、町屋や寺社など京都の観光資源を事例とした授業を計画しており、既存のMBAの講義として2016年、2017年と授業を実施してきた。「志願者には、観光業界出身で経営管理について学びたい人もいれば、他の業界出身で卒業後に観光産業で働きたいという人もいる。4月の開講を前に、走りながらカリキュラム開発をしているところ」と前川准教授は話した。

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