【10月27日古川俊治デジタル大臣会見要旨】サイバー攻撃の緊急対策パッケージを来週中に

古川俊治デジタル大臣は2026年10月27日、記者会見を開いた。サイバー安全保障担当大臣として、前日に開かれた「サイバーセキュリティに関する関係閣僚会議」の内容を報告し、来週中をめどに政府の「緊急対策パッケージ」を取りまとめると説明した。人工知能戦略担当としては第7回人工知能戦略専門調査会の開催を、科学技術政策・宇宙政策担当としては茨城県つくば市にある国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の視察を報告している。質疑応答では、防衛省の研究支援制度に大学等からの応募が増えたことや、GMOインターネットグループ株式会社とGMOインターネット株式会社が求めた能動的サイバー防御の適用について見解を述べた。

相次ぐ情報漏えいで関係閣僚会議を初開催

2026年10月26日、総理大臣官邸で第1回「サイバーセキュリティに関する関係閣僚会議」が開かれた。古川大臣によると、会議には高市早苗内閣総理大臣が出席し、木原稔内閣官房長官が議長を務めた。国内の事業者などを狙ったサイバー攻撃で大規模な情報漏えいが相次ぎ、漏えいした情報を悪用した二次被害も起きている。国民の安全・安心な暮らしを脅かす深刻な事態となり、対策が急務であることから、これまでの取り組みに加えて今後の対策を検討する場として会議が設けられた。

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会議では、高市総理から具体的な指示が出た。古川大臣が挙げたのは、被害企業などへの支援の強化、情報集約体制の強化、的確な情報発信、アクセス・無害化措置などの対処オプションの戦略的な実施、システムの脆弱性の検証である。政府はこの指示を受け、来週中をめどに緊急対策パッケージを取りまとめる。古川大臣は、関係省庁と緊密に連携して必要な対策を速やかに具体化し、政府一丸となって実施していく考えを示した。

AI戦略専門調査会でAXの具体像を議論

人工知能戦略担当としては、人工知能戦略本部の下に置かれた人工知能戦略専門調査会の第7回会合を10月26日に開いたと報告した。会合には古川大臣と塩崎彰久デジタル副大臣兼内閣府副大臣が出席している。議題は「信頼できるAIで社会全体を駆動するAXの具体像について」。AXは「AIトランスフォーメーション」の略称だ。委員からは、人とAIが協働する日本のAXをどう実現するか、日本の強みである現場力や知識をAIでどう価値の創出につなげていくか、その前提となる信頼できるAIをどう確保するかについて、活発な意見が出たという。

法律を含む制度の見直しについては、28日に制度のあり方を検討するグループの第1回会合を開き、議論を深める。古川大臣は、委員の意見を踏まえ、2030年のAXの具体像と政策のあり方を年末までに示せるよう検討と具体化を進めると述べた。

足元でサイバーセキュリティへの懸念が高まっていることを受け、会見当日の27日には、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に設置されたAIセーフティ・インスティテュート(AISI)を視察する予定も明らかにした。信頼できるAIの構築に向けた今後の取り組みの方向性について、意見を交わすという。

産総研G-QuATで量子計算基盤を視察

科学技術政策・宇宙政策の担当大臣としては、10月26日に茨城県つくば市を訪れ、産総研とJAXA筑波宇宙センターを視察したと報告した。

産総研では、量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)を訪問した。超電導方式をはじめとする多様な量子コンピュータと、スーパーコンピュータをハイブリッドで活用する計算基盤などを見学している。量子技術は、2026年度から2030年度を対象とする第7期科学技術・イノベーション基本計画で「国家戦略技術領域」の一つに位置付けられた。日本成長戦略本部でも「危機管理投資」と「成長投資」の戦略分野とされる重要技術だ。古川大臣は、G-QuATが量子技術の産業化を目指す中核拠点として、研究開発から社会実装までを一体的に進めていることを確認したと述べた。

JAXA筑波宇宙センターで民間連携を確認

JAXA筑波宇宙センターでは、月面活動で使われるローバの実物大展示などがある展示館「スペースドーム」や、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の運用管制室を見学した。宇宙デブリ(宇宙ごみ)を除去する技術などを民間企業と連携して実証するプラットフォームも視察している。

JAXAでは、民間企業とそれぞれの強みを生かして連携し、研究開発の成果の社会実装や新しい宇宙ビジネスの創出につなげる取り組みが進む。古川大臣は、JAXAが宇宙活動を支える中核的な研究機関であるだけでなく、日本の産業競争力の強化にとっても極めて重要な存在だとの認識を示した。視察で得た知見を、科学技術政策と宇宙政策の推進に生かしていく考えだ。

防衛省ファンディングに大学の応募増

質疑応答では、防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度(防衛省ファンディング)について質問が出た。防衛省が2026年10月20日に公表した2026年度の採択結果によると、応募件数は制度創設以降最多の560件だった。大学等からの応募も291件と、前年度の2.4倍に増えている。

古川大臣は、所管ではないため応募の詳細は把握していないと前置きした。そのうえで、第7期科学技術・イノベーション基本計画では「科学技術と国家安全保障との有機的連携」を柱の一つに据えていると説明した。デュアルユース(軍民両用)技術の研究開発や社会実装は非常に重要であり、大学も積極的に参加しているのではないかとの見方を示した。

大学などのアカデミアが果たす役割については、挑戦的な研究をデュアルユースで進めることが、最終的には民生分野の大きな発展にもつながると指摘した。医療ロボットに携わってきた古川大臣は、手術支援ロボット「ダビンチ」もデュアルユースから始まったと記憶していると話した。米モデルナのmRNAの研究も、米国のDARPA(Defense Advanced Research Projects Agency)から予算を受けていた経緯があると紹介し、科学技術研究が安全保障との関わりの中から生まれた事例は世界各地にあると述べた。

輝く女性研究者賞の受賞者2人に祝意

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が表彰する第8回「輝く女性研究者賞(ジュンアシダ賞)」の受賞者決定についても質問があった。同賞には東京大学物性研究所の高木里奈准教授が、「輝く女性研究者賞(科学技術振興機構理事長賞)」には東京大学大気海洋研究所の高木悠花准教授が選ばれた。古川大臣は、2人の受賞に心から祝意を表した。

日本の女性研究者の割合はほぼ一貫して増加傾向にあるものの、諸外国と比べるとまだ低い水準にとどまっている。古川大臣はこうした認識を示したうえで、第一線で活躍する女性研究者の姿が賞を通じて広く社会に伝わり、女性研究者や研究者を目指す若い世代の励みになることに期待を寄せた。内閣としても関係省庁と連携し、出産・育児などのライフイベントと研究を両立できる環境の整備、研究環境のダイバーシティ実現に向けた大学等の取り組みへの支援、女子中高生の理系への進路選択の促進などに取り組む方針だ。

サイバー対策の課題は事案分析とAI悪用

関係閣僚会議に関連して、サイバー対策で足りない点を問われた古川大臣は、まず情報の収集と分析を挙げた。サイバー対処能力強化法(重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律)と同整備法は2025年5月23日に公布され、規定ごとに段階的に施行されている。2026年10月1日には「官民連携の強化」と「アクセス・無害化措置」に関する規定が施行された。古川大臣は、官民連携の枠組みである「サイバー協議会」を通じてさまざまな事案を共有してもらい、しっかり分析すると説明した。不正な攻撃には多様な手口があるため、手口を解析して有効な防御方法を考えることが非常に重要だという。

もう一つの課題は、高性能AIの悪用である。高性能AIが使われたのではないかと疑われる事案が出ているとの報告も受けているという。古川大臣は、AIを用いた脆弱性の診断を、政府機関だけでなく民間でもできるようにすることが重要だと述べた。費用がかかるため簡単ではないとしつつ、措置を一つずつ積み上げて情報を共有し、脆弱性を適切に管理していく必要性を強調した。被害がまだ続いている最中であり、政府として今後しっかり取り組む構えだ。

古川大臣は、個人情報が大量に流出しているとの報告も届いており、国民に大きな不安を与えていると受け止めている。二次被害の防止が重要になることから、国民にも基本的な対策の徹底を呼びかけていくという。

GMOの要請には個別事案として回答控え

続いて記者は、GMOインターネットグループの代表がブログで、能動的サイバー防御の適用を要請したと表明した件を取り上げた。GMOインターネットグループ株式会社とGMOインターネット株式会社が公表している経緯によると、両社は「お名前.com デスクトップクラウド」への不正アクセスを受け、2026年10月24日の第4報で能動的サイバー防御の適用を政府関係機関に要請した。記者は、同グループが特定社会基盤事業者ではないことや、能動的サイバー防御が民間の要請を受けて動く仕組みではないことを代表自身も述べていると指摘し、政府の対応を尋ねた。

古川大臣は、GMOインターネットグループへのサイバー攻撃と被害状況について、同グループがお知らせを出していることは承知していると答えた。一方で、個別のサイバー事案に対する政府の対応状況を明らかにすることは控えるとした。

一般論として、政府は被害を受けた組織からさまざまな情報提供を受け、事情に応じて必要な支援措置を講じている。警察も被害の申告を受け、必要に応じて捜査を行っているとの認識を示した。今後はサイバー対処能力強化法に基づく「サイバー協議会」を活用し、一連のサイバー攻撃に関する情報共有などを通じて官民の連携をさらに強める。従来の注意喚起に加え、新たに導入されたアクセス・無害化措置も含めて多様な手段を効果的に組み合わせ、国や重要インフラなどへのサイバー攻撃による被害を未然に防ぐ方針を示した。

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