【10月27日赤澤亮正経済産業大臣会見要旨】中小企業のサイバー対策に無料の特別相談窓口

赤澤亮正経済産業大臣は10月27日、記者会見を開いた。前日のサイバーセキュリティに関する関係閣僚会議で高市早苗内閣総理大臣から受けた指示を踏まえ、中小企業・小規模事業者向けに無料の「サイバーセキュリティ特別相談窓口」を同日設置すると発表した。質疑応答では、ガソリンなどの燃料補助金の見直しと、欧州委員会が提案したEV(電気自動車)の優遇策への対応について説明した。GMOインターネットグループ株式会社などが受けたサイバー攻撃の予告や、経済産業省が立ち上げるホワイトハッカーチームについても言及した。

中小企業向けサイバー無料相談窓口を全国に開設

10月26日に総理大臣官邸で開かれたサイバーセキュリティに関する関係閣僚会議で、高市総理は赤澤大臣に2点指示した。中小企業・小規模事業者向けの相談窓口を抜本的に拡充することと、プッシュ型で情報を提供することである。

Photo by  moonrise/ Adobe Stock

これを受け、赤澤大臣は27日、無料のサイバーセキュリティ特別相談窓口を設置すると発表した。窓口を置くのは、各都道府県の「よろず支援拠点」などと、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)の「IT経営サポートセンター」だ。よろず支援拠点は2014年、全国の都道府県に1カ所ずつ設けられた経営相談窓口で、無料で何度でも相談できる。IT経営サポートセンターは、中小機構が運営するIT分野に特化したオンラインの無料相談窓口である。

窓口に関する情報は、全国の商工団体や金融機関、税理士といった支援機関を通じて、中小企業・小規模事業者にプッシュ型で届ける。大臣は、全国の中小・小規模事業者の個別の相談にきめ細かく対応していく考えを示した。

ガソリン補助金の見直し、総理から2つの指示

質疑応答では、まず燃料補助金の見直しについて質問が出た。政府は2026年3月19日から「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」を実施している。ガソリンの全国平均小売価格が170円程度を超えないよう補助する仕組みで、軽油・重油・灯油にもガソリンと同額の補助を行う。補助金は石油元売・輸入事業者に支給し、卸価格を下げることで店頭価格を抑える。

大臣は、この措置を国民の命と暮らしを守り、経済活動に支障が出ないよう実施してきたと説明した。一方で、あくまで急激な値上がりを和らげる激変緩和措置であると述べた。与野党から財政負担への懸念を理由に、段階的な見直しや出口戦略を求める指摘が出ていることも承知しているという。

こうした指摘を踏まえ、大臣は10月23日に高市総理から2つの指示を受けた。1つ目は、中東情勢が今後の物価動向や経済に与える影響を注視しながら、各党の提案も踏まえて支援のあり方を検討することだ。2つ目は、当面の燃料支援に必要な基金の規模を確保するため、片山さつき財務大臣と調整を進めることである。大臣は、検討の最中のため予断を持っては言えないとした。そのうえで、支援単価や措置の終わらせ方(出口)も含めて柔軟に検討すると述べた。

補助縮小は為替や原油の予測で判断せず

続いて記者から、原油の増産などで、補助金を減らしても店頭価格が急騰しない環境が整ったと判断したのか、と質問が出た。大臣は為替について論評しない立場を示し、個別の経済指標の予測をもとに判断しているわけではないと答えた。

大臣は、中東情勢が物価や経済に与える影響を注視していると述べた。そのうえで、与野党から寄せられた財政負担への懸念や、脱炭素(GX)など中長期の視点から補助をいつまでも続けるべきではないとの指摘も踏まえ、見直しを進めていると説明した。

冬の灯油価格が暮らしに与える影響も考慮

補助の縮小が生活を直撃するのではないか、との質問も出た。大臣は、企業が上昇した原油価格を織り込み、価格転嫁を進める動きもあると指摘した。大臣によると、中東情勢の悪化は2月28日から続いている。発生直後は想定外の事態で、急いで激変緩和措置を講じたが、現在は社会経済がある程度なじんできた面もあるとの見方を示した。

そのうえで、これから冬を迎えるにあたり、灯油価格が大きく上がった場合に北海道などの暮らしにどう影響するかも含めて考えていると説明した。財源との兼ね合いも踏まえ、総合的に判断するという。

EVの「EU原産」要件、メルツ首相に懸念伝達へ

欧州のEV優遇策についても質問があった。欧州委員会は2026年3月4日、域内産業の競争力強化を目的とする「産業加速法案(Industrial Accelerator Act、IAA)」を提案した。法案には、EVへの補助を「EU原産」に限る内容が盛り込まれている。大臣は、この要件が導入されれば日本製EVが導入支援の対象外となり、欧州市場から排除されかねないとして、好ましくないとの懸念を示した。

会見の翌日には、フリードリヒ・メルツ・ドイツ連邦共和国首相が来日する。大臣は、日独の経済界関係者約300人が出席する経済サミットに足を運び、冒頭で挨拶する予定だ。その場でメルツ首相と直接話す機会を持ちたいと述べた。大臣は、EUと日本は相互補完性を持つ信頼できるパートナーだと強調した。EVを含む日本製品がEU製と同等に扱われることは、双方の産業競争力の維持・強化にとって極めて重要だという。

影響の規模について大臣は、台数で見れば米国市場ほどではないとした。それでも日本の自動車メーカーは、欧州向けにかなりの輸出や現地生産を行っていると説明した。生じる不利益は看過できるものではないと述べた。今後もドイツをはじめとする関係者に日本の考えを丁寧かつ毅然と説明するとともに、日本企業が不利益を被らないよう、適切な対応を強く求めていく考えを示した。

GMOの能動的サイバー防御要請に大臣の見解

GMOインターネットグループ株式会社とGMOインターネット株式会社は、「お名前.com デスクトップクラウド」への不正アクセスを公表している。両社によると、攻撃者とみられる者から、10月27日12時に顧客情報の公開とランサムウェア攻撃を行うとの予告を受けた。両社は10月24日、能動的サイバー防御の適用を政府関係機関に要請した。

この要請について問われた大臣は、報道は承知していると述べた。そのうえで、能動的サイバー防御は、いわゆるサイバー対処能力強化法に基づき、内閣官房と警察庁、防衛省が実施するものだと説明した。同法の正式名称は「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律」である。関連する整備法とあわせ、重大な危害を防ぐために警察などが攻撃元にアクセスし、無害化する措置などを定めている。

経済産業省としては、古川俊治サイバー安全保障担当大臣や内閣官房国家サイバー統括室(NCO)をはじめとする関係省庁と連携し、必要な措置を講じていくという。

ホワイトハッカーチームの役割は「攻撃者の視点」

経済産業省は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に、来月中にホワイトハッカーチームを立ち上げる予定だ。大臣は、このチームは能動的サイバー防御を行うことを念頭に置いたものではないと明言した。

大臣によると、防御は攻撃を想定して備えるため、どうしても後手に回る。攻撃側は1カ所の穴を見つければ成功するが、防御側は全面的に守らなければならない。しかも攻撃は常に想定外を突いてくる。そのため、攻撃者の視点に立たなければ守りの質は上がらないという。

チームは高性能AIを防御側にも活用し、模擬的な攻撃でシステムの弱点を確かめる「ペネトレーションテスト」を行う。大臣は、こうした政策を通じて産業界のセキュリティ対策を一層強化したいと述べた。

自民党提言も念頭に総合的に判断

最後に再び燃料補助金について、前日に自民党がまとめた提言を軸に検討するのかと問われた。記者によると、提言は目標価格の170円を段階的に引き上げる内容である。

大臣は、与党の意見も聞きながら判断していくとした。一方で、支援のあり方は検討の最中であり、予断を持って言える段階にはないと改めて述べた。与党の提言に加え、野党からこれまでに寄せられた意見も念頭に置き、さまざまな観点から総合的に判断したい考えを示した。