内田洋行、「予約本貸出ロッカー」で地域の読書環境拡充を後押し

公共図書館の役割が「図書の保管・閲覧」から「地域の知的インフラ」「賑わい創出」「生涯学習・教育の拠点」へと多様化する中、デジタル技術を活用した図書館サービスの展開や業務DXに注目が集まっている。「図書館総合展2026」に出展した株式会社内田洋行のブースでは、生活動線上で本を受け取れる「予約本貸出ロッカー」をはじめ、地域の学びと賑わいを創出する多彩なソリューションが展示され、多くの自治体関係者や図書館関係者の関心を集めた。 

日常の合間に出会える機会増やす

内田洋行は、ICTを活用した図書館デザインや利用者サービスの提供を通じて、地域の活性化を担う拠点づくりを支援している。その代表的な取り組みの一つが「予約本貸出ロッカー」だ。図書館へ足を運ぶことが難しい通勤・通学客や子育て世代、高齢者に対し、駅通路や複合施設といった日常の生活動線上で予約図書を受け取れる仕組みを提供している。 

代表的な導入事例として、奈良市での取り組みが挙げられる。奈良市では、デジタル田園都市国家構想交付金の採択を受け、近鉄大和西大寺駅の南北自由通路内や近鉄学園前駅隣接の公共施設に、マイナンバーカード対応の「予約本貸出ロッカー」を県内初導入した。24時間365日いつでも受取が可能で、あらかじめ図書館貸出券と連携させたマイナンバーカードをかざすだけで認証が完了する。


「予約本貸出ロッカー」から本を取り出す様子。 

大型絵本や変形本にも対応する広い間口設計や地域独自のデザインなどを採用した結果、年間約1万2,000冊の貸出冊数増加が見込まれるなど、顕著な導入効果を上げている。2026年10月には市内で6台目の「予約本貸出ロッカー」が稼働。同市教育委員会・中央図書館の村田直史氏は、「特にポイントになったのは、駅の自由通路など、生活の導線上にロッカーを配置した点です」と好評の理由を話した。 

また、2026年10月にオープンした東京都八王子市駅南口の複合施設、「桑都の杜(そうとのもり)」内の「いこいライブラリ」にも、東京都内初となる「予約本貸出ロッカー」が設置された。地域の集いと交流をコンセプトとする複合施設に設置されたことで、市民が日常の買い物や交流のついでに本を受け取れる利便性を実現。既存の図書館システムとの連携や、専用の貸出袋の活用など運用面の工夫も施され、駅前エリアの賑わい創出と地域の読書機会拡大を同時に支えている。 

予約本貸出ロッカーは単なる利便性の提供にとどまらない。人流が存在する駅や複合施設に行政サービスを接続することで「駅前・まちの活性化」を促すとともに、共働き世帯や子どもたちが時間や距離の制約なく本に親しめる「教育・子育て支援の拡充」、さらにマイナンバーカード活用による「行政DXの推進」など、多様な価値を生み出している。 

同社のブースでは「予約本貸出ロッカー」のほかにも、図書館を核とした地域・教育の活性化を多角的に後押しするソリューションが展示された。
 

例えば、子どもたちが借りた本のタイトルを銀行の通帳のように記録できる「読書通帳」。読書意欲を引き出すだけでなく、通帳の表紙をご当地キャラクターや地元の景観デザインにカスタマイズすることで郷土愛(シビックプライド)を育む。地元企業がスポンサーとなるなど、地域を巻き込んだ持続可能な仕組みづくりとしても高い評価を得ている。 

ICタグ(RFID)を活用した蔵書点検・探索システム「YOMMONⅢ(ヨムモン3)」は、書棚にかざすだけで高速かつ確実に蔵書を点検・探索でき、図書資料の棚卸し作業を大幅に省力化する。図書館スタッフの業務負担を軽減することで、レファレンスサービスや地域連携イベントの企画といった高付加価値業務へ注力できる環境を創出する。 

誰もが利用しやすい図書館を実現するリアルタイム翻訳「VUEVO(ビューボ)」は、直感的なインターフェースで会話をリアルタイムに文字起こし・翻訳するシステムだ。増加する外国人住民・観光客への多言語案内だけでなく、耳が聞こえにくい方へのコミュニケーション支援にも活用されており、あらゆる人が円滑に利用できるインクルーシブな公共空間づくりに貢献する。 

人口減少や多様化が進む地域社会において、公共図書館は単なる施設の枠を超え、街の魅力や教育を支える重要な社会インフラとなっている。内田洋行が提案する様々なデジタルソリューションは、リアルな地域拠点とDXを掛け合わせることで、行政サービスと市民をシームレスにつなぐ新たな図書館のあり方を示している。