三菱重工 蒸気加熱方式によるアンモニア分解で純度99%の水素製造に成功

三菱重工業株式会社(千代田区、以下「三菱重工」)は、同社総合研究所長崎地区に設置したパイロットプラントにおいて、蒸気を加熱源として利用して原料のアンモニアを分解し、純度99%の水素を製造することに成功した。12月10日に発表した。蒸気加熱方式によるパイロットスケールでの水素製造は、同社の把握する限りでは世界で初めてだという。


同社のアンモニア分解システムは、三菱重工と株式会社日本触媒(大阪市中央区、以下「日本触媒」)が水素・アンモニアサプライチェーンの導入と大量輸送の本格化を見据え、2023年に共同開発契約を締結して開発を進めてきたもの。脱炭素社会の実現に向け、燃焼してもCO₂を排出しない燃料である水素の利活用は世界的に拡大している。その中でアンモニアは、燃焼してもCO₂を排出しないゼロエミッション燃料である水素を、安全かつ大量に長距離輸送・貯蔵することが可能な水素キャリアの1つとして注目されてきた。アンモニア分解技術はアンモニアから水素を取り出すために不可欠であり、サプライチェーン構築の実現において重要な役割を担う。

三菱重工の蒸気・排ガス加熱方式は、バーナー燃焼熱を用いる従来の技術に比べ、低い反応温度でのシステムの運転が可能で、運転コストを削減できる。また、燃焼炉が不要なため、システムの小型化を実現できるなど、優れた特徴を有している。

三菱重工業と日本触媒によるアンモニア分解システム開発は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業」に応募し、採択されたことを2025年10月に発表している。

三菱重工は今回のパイロットプラントにおける成果を生かし、アンモニアを水素キャリアとする水素サプライチェーンの構築をさらに推進する。水素需要地の近くに設置可能な中規模・分散型アンモニア分解システムを開発するほか、NEDOに採択された事業における開発を、日本触媒、北海道電力株式会社と協同で加速する。これらによって、脱炭素技術の早期確立・社会実装を図るとともに、持続可能なカーボンニュートラル社会の実現に貢献していく。