骨太の方針2024とは 政府の支援領域や経済活性化策、投資分野など具体的な内容を解説

政府は6月21日、2024年の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を閣議決定した。サブタイトルを「賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現」とし、政府の最重要課題を、2024年春の春闘で33年ぶりに実現した高水準の賃上げや高水準の設備投資を中小企業や地方経済にも広げ、物価上昇を上回る賃金上昇の定着を目指す。

また、グリーン、デジタル、科学技術などの分野で官民連携による戦略的投資を進め、経済全体の生産性を高めるとする。

本稿では、骨太の方針2024のうち、政府が注力する政策ポイントを中心に紹介する。

【目次】

  1. 骨太の方針2024は政府が重要視する分野や予算投入の傾向を知る材料に
     1-1 政府の重要課題や予算投入の傾向を知る材料になる「骨太の方針」
     1-2 骨太の方針2024の短期的な「Action」と長期的な「Vision」とは?
     1-3 持続的な経済成長や令和7年度の予算編成など4章構成で作成
  2. 骨太の方針2024で政府が支援や強化を行う具体的な政策のポイントとは
     2-1 スタートアップ支援
     2-2 地方創生及び地域における社会課題への対応
     2-3 投資の拡大及び革新技術の社会実装による社会課題への対応
     2-4 中堅・中小企業の活性化
     2-5 政府の対応
  3. まとめ

骨太の方針2024は政府が重要視する分野や予算投入の傾向を知る材料に

岸田政権の3年目である2024年の骨太の方針は、デフレからの完全脱却に向けて賃上げを定着させるため、労働市場改革などを推進することを目指している。また財政面では、来年度に基礎的財政収支を黒字化する目標は維持するとしている。

本項では、骨太の方針2024の概要や目次を確認する。

政府の重要課題や予算投入の傾向を知る材料になる「骨太の方針」

「骨太の方針」とは、政権の重要課題や翌年度の予算編成の方向性を示すもので、正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」という。国民にとっては、政府が重要視する課題や今後の予算投入の傾向を知る材料となる。

「骨太の方針」は小泉政権時の2001年度に始まり、かつての宮沢喜一財務相が同会議の議論を「骨太」と表現したことから、骨太の方針と呼ばれるようになった。官邸主導で議論を進めており、毎年6月頃に、首相が議長を務める経済財政諮問会議で策定される。

骨太の方針2024の短期的な「Action」と長期的な「Vision」とは?

今回の骨太方針では、デフレから完全脱却をし、成長型の新たな経済ステージへの移行することで、少子高齢化・人口減少を克服し、持続可能な経済社会を作るために、短期的な「5つのAction」と長期的な「5つのVision」を掲げている。

5つのAction

  • 物価上昇を上回る賃上げの定着
  • 構造的価格転嫁の実現
  • 成長分野への戦略的な投資
  • スタートアップネットワークの形成
  • 新技術の徹底した社会実装

5つのVision

  • 社会課題解決をエンジンとした生産性向上と成長機会の拡大
  • 誰もが活躍できるWell-beingが高い社会の実現
  • 経済・財政・社会保障の持続可能性の確保
  • 地域ごとの特性・成長資源を活かした持続可能な地域社会の形成
  • 海外の成長市場との連結性向上とエネルギー構造転換

出典:骨太方針2024PR資料(総論)

持続的な経済成長や令和7年度の予算編成など4章構成で作成

骨太の方針2024は、4章構成で作成されている。

第1章では足元の高水準賃上げに触れつつ、デフレからの完全脱却や官民一体投資を通じた「成長型の新たな経済ステージ」への移行といった、全体のビジョンが掲げられている。

第2章では、具体的な施策の内容が列挙されている。テーマ自体は昨年と変更がないが、先述のように、中堅・中小企業の活性化の節が前に出ていることが特徴的だ。

第3章は、中長期の経済財政政策の枠組みについて。今年の骨太の方針は財政再建計画見直しのタイミングに当たるため、新たに2030年までを対象とする「経済・財政新生計画」を掲げ、「2040年度名目GDP1000兆円」といった新しい数字目標を示した。

第4章では、第2章・第3章を踏まえ、短期的な経済財政運営や2025年度の編成方針などを示している。

目次の詳細は以下の通り。

第1章 成長型の新たな経済ステージへの移行

  1. デフレ完全脱却の実現に向けて
  2. 豊かさと幸せを実感できる持続可能な経済社会に向けて

第2章 社会課題への対応を通じた持続的な経済成長の実現~賃上げの定着と戦略的な投資による所得と生産性の向上~

  1. 豊かさを実感できる「所得増加」及び「賃上げ定着」
    1. 賃上げの促進
    2. 三位一体の労働市場改革
    3. 価格転嫁対策
  2. 豊かさを支える中堅・中小企業の活性化
    1. 人手不足への対応
    2. 中堅・中小企業の稼ぐ力
    3. 輸出・海外展開
  3. 投資の拡大及び革新技術の社会実装による社会課題への対応
    1. DX
    2. GX・エネルギー安全保障
    3. フロンティアの開拓
    4. 科学技術の振興・イノベーションの促進
    5. 資産運用立国
  4. スタートアップのネットワーク形成や海外との連結性向上による社会課題への対応
    1. スタートアップの支援・ネットワークの形成
    2. 海外活力の取り込み
    3. 大阪・関西万博の推進
  5. 地方創生及び地域における社会課題への対応
    1. デジタル田園都市国家構想と地方創生の新展開
    2. デジタル行財政改革
    3. 地方活性化及び交流の拡大
    4. 農林水産業の持続可能な成長及び食料安全保障
  6. 幸せを実感できる包摂社会の実現
    1. 共生・共助・女性活躍社会づくり
    2. 安全・安心で心豊かな国民生活の実現
  7. 持続的な経済成長の礎となる国際環境変化への対応
    1. 外交・安全保障
    2. 経済安全保障
  8. 防災・減災及び国土強靱化の推進
    1. 防災・減災及び国土強靱化
    2. 東日本大震災、能登半島地震等からの復旧・復興

第3章 中長期的に持続可能な経済社会の実現~「経済・財政新生計画」~

  1. 新たなステージに向けた経済財政政策
  2. 中期的な経済財政の枠組み
  3. 主要分野ごとの基本方針と重要課題
    1. 全世代型社会保障の構築
    2. 少子化対策・こども政策
    3. 公教育の再生・研究活動の推進
    4. 戦略的な社会資本整備
    5. 地方行財政基盤の強化
  4. 改革推進のためのEBPM強化

第4章 当面の経済財政運営と令和7年度予算編成に向けた考え方

  1. 当面の経済財政運営について
  2. 令和7年度予算編成に向けた考え方 

骨太の方針2024で政府が支援や強化を行う具体的な政策のポイントとは

本項では、「骨太の方針2024」の2章に記された主な政策について取り上げる。

スタートアップ支援

2022年に決定された「スタートアップ育成5か年計画」に沿って、スタートアップを産み育てるエコシステムを創出する。また、資金供給の強化と出口戦略の多様化を進める。

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