電通グループ 新AI戦略発表、シミュレーションでマーケティング効果を事前測定
国内電通グループの4社(電通、電通デジタル、電通総研、イグニション・ポイント)は2026年5月25日、新AI戦略「AI For Growth 3.0」を公開し、統合AIプロダクトシリーズ「AI For Growth Suite」の提供を同日開始したと発表した。電通グループが長年培ったマーケティング領域の実践知を組み込んだ複数の専門AIを、SaaS製品およびサービスとして顧客企業に提供する。AIを用いて、調査・戦略立案・企画・実行・改善という一連のマーケティング業務の継続的な価値創出を狙う。
電通グループ代表執行役社長グローバルCEO兼dentsu Japan CEOの佐野傑氏は、クライアント企業のトップが求めるのは「高度なAIそのものではなく、自社の事業成長や企業価値の向上だ」と指摘。AIを単なる効率化ツールではなく、人とAIが互いに高め合いながら事業成長を実現するパートナーとして位置付ける同戦略の意義を強調した。
新戦略の中核を成すのが、独自フレームワーク「PSDCAモデル」だ。従来のPDCAに、計画段階で複数の選択肢や結果を予測する「Simulation」を組み込んだ。これを支える2つのエンジンが、人の行動や価値観を構造的に捉える「People Model」と、電通グループのクリエイティブ思考を体系化した「Creative Thinking Model」である。約1億人規模のAIペルソナで生活者や市場の反応を仮想的に再現する「AIマーケットツイン」によって、市場投入前に施策の成功確率を高める仕組みだ。
「AI For Growth Suite」は、仮想定量調査ツール「People Research」、AIインタビューツール「Talk」、戦略立案AI「Plot」、メディアプランニングAI「Media Flow」など複数の専門AIツールに加え、10種類のマーケティング専門AIエージェントを搭載したプラットフォーム「Canvas」、データ統合・分析基盤で構成される。SaaSでの提供に加え、企業が既に利用するChatGPTやGeminiなどのAIツールからもAPI経由で利用できる。
dentsu Japan チーフ・AI・オフィサーの並河進氏は今後の目標として、年内の導入は100社を見込み、来年以降はこれを200~300社へと増やしていくこと、AIマーケティングツール領域でのトップシェア獲得を狙う方針を示した。既にdentsu Japan社内では4500以上のAIエージェントが常時稼働しており、2026年度は年間20万時間の業務時間創出を見込む。
開発・運用体制では、電通総研が2026年2月に新設した「AI開発センター」と、約1000人規模の専門人財を擁する「dentsu Japan AIセンター」が中核を担う。企業の壁を越えてそれぞれのAI同士が連携する将来構想として「Marketing Agent Protocol」の整備にも着手し、LINEヤフー、電通マクロミル・インサイト、NTTドコモなどと実証実験を進めている。