AIに代替されない強み 北海道の大地で鍛える 中高生向けアンラーニング新潮流

株式会社Birchbit(バーチビット)代表取締役CEOの田中大幸氏が、この夏、北海道北広島市を舞台に中高生向けの教育プログラム「KEE(Kitahiroshima Edu-sport Explorers)」を本格始動させる。AI技術が急速に進化し、情報収集そのものは誰でも容易にできるようになった時代に、あえて問うのは「人間にしかできないことは何か」という根本的な問いだ。スポーツ、パフォーミングアーツ、一次産業体験を英語学習と掛け合わせた独自のカリキュラムは、単なる体験プログラムの枠を超え、これからの社会を生きる若者に「移行可能スキル(様々な環境下で応用可能なスキル)」を育む場として注目を集めている。

北広島という地を舞台として選んだことには、明確な戦略的意図がある。2023年に北海道日本ハムファイターズの本拠地「エスコンフィールドHOKKAIDO」が開業し、街と自然が共存しながら急速に進化を遂げているこの地域は、課題発見と事業構想の観点から見ても格好のフィールドだ。

田中氏自身も、北広島市・株式会社エスコン・学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学の三者が2025年4月11日付で締結した産官学連携協定に基づき発足した「北海道事業構想イノベーションラボ」の第1期研究員として、定員20名のなかから選出され、地域の実情を内側から学んできた。農家での早朝農作業に加わりながらリサーチを重ねるなかで痛感したのは、エスコンフィールドをはじめとするハード面の整備が進む一方で、教育をはじめとするソフト面の充実が急務であるという現実だった。「東京から移住した家族が東京と同水準の教育を子どもに与えようとしたとき、今の北広島ではまだ難しい。だからこそ、ここでしか得られない体験と学びを設計する必要があった」と田中氏は語る。

KEEのプログラム設計には、田中氏がこれまで歩んできたキャリアが色濃く反映されている。広島市出身の田中氏は、高校時代に参加したスイスでの6週間のサマープログラムを契機に海外への関心を深め、卒業後に渡英してイギリス・カンタベリーのケント大学に進学した。言語学の学士号と応用言語学の修士号を取得するとともに、英語教授法の国際資格「CELTA(Certificate in English Language Teaching to Adults)」を2013年に取得。帰国後はタクトピア株式会社での研修設計・ファシリテーション、楽天グループ株式会社での会話系AI部門でのユーザー体験向上、ByteDance(TikTok)日本法人での検索AIデータ管理チームのマネジメント職、そして外国人労働者向け多言語対応研修用AIソリューション「BeTrained(ビートレインド)」を提供する株式会社ビースポークでのプロダクトマネジメントリードと、教育とAIの双方にまたがる実務経験を積んできた。

北広島への移住を決断した後は、事業構想大学院大学が主導する「北海道事業構想イノベーションラボ」での研究を経て、2026年4月に株式会社Birchbitを創業した。「AI業界での7年間は、技術が人間の働き方と学び方をどう変えるかを間近で見続けた時間だった。だからこそ、テクノロジーが代替できない部分に焦点を当てた教育の必要性を、肌感覚として持っている」。

KEEが掲げる中心概念は「アンラーニング」、日本語で「学びほぐし」と訳される概念だ。既存の知識やスキルを意識的に検証し、必要に応じて棄却したうえで新しい情報を取り込むプロセスを指す。AIが情報収集の手段として日常に浸透した今、知識をインプットすること自体の希少性は失われつつある。KEEが重きを置くのは、参加者が自分自身を客観視する「メタ認知力」、意見を発信する「表現力」、仮説を立て検証する「アントレプレナーシップ思考」の三つだ。プログラムはすべて英語で実施されるが、バイリンガルの大学生メンターが伴走するため、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のA2(英検準2級相当)未満の参加者でも、コミュニケーション能力を伸ばす意欲があれば参加できる設計になっている。

プログラムの構成は、座学にとどまらず徹底して身体性を重視する。スポーツやダンスのプロフェッショナルから直接学ぶ時間、トラクターの操作やドローンを活用した農業体験、大自然のなかでの食育体験が、パフォーミングアーツの要素を取り入れたグループ表現活動と有機的に組み合わされる。「AIやロボティクスが進化するほど、身体を使うフィジカルな活動の価値は高まる。スポーツを学びのきっかけにすることで、一次産業や地域課題と若者がリアルにつながれる」と田中氏は話す。体験をただの体験で終わらせないために、事前の資料共有とオンラインプレセッション、そしてプログラム終了後も参加者とファシリテーターが継続的に対話できるラーニングコミュニティーへの参加案内が用意されている。

プログラム始動の2026年第1回目は8月16日から8月19日の3泊4日、続けて第2回は9月20日から23日に実施される。対象は国内外の中高生で、定員は各回14名。参加費は19万600円(税込)で、羽田空港・関西国際空港と新千歳空港間の往復航空券、宿泊費、食費、教材費、現地移動費を含むパッケージ価格となっている。北広島市や札幌市近郊に居住する参加者向けには、宿泊・航空移動なしの「通いタイプ」プランも用意されており、道民割適用で7万200円(税込)から参加可能だ。第1回の一次申込締切は7月26日、第2回の一次申込締切は8月30日。7月と8月には、ウェビナー説明会も開催予定である。旅行実施は株式会社コープトラベル(観光庁登録旅行業2019号、JATA日本旅行業協会正会員)が担当する。第2回以降、大阪の旅行事業者とのコラボレーションも開始し、10月以降も連休などの期間を中心に開催される。

「新時代のアンラーニングは北海道から始まる」という会社コンセプトが示すとおり、田中氏が目指すのは、北広島という土地ならではの文脈のなかで生まれる学びを、国内外の若者に届けることだ。街と自然の共存、一次産業とテクノロジーの融合、そしてAI時代における人間固有の強みの探求という三つの軸が交わる場所として、北広島は今、日本の教育の新しい実験場になろうとしている。尚、Birchbitではこの新たな取り組みに共感する、事業者やビジネスパーソンとの共創型スポンサーシップや、学校教育機関等とのグループ実施でのプログラム参加者も絶賛募集中だ。

・株式会社Birchbit(バーチビット)
・所在地:北海道北広島市栄町1丁目52番地
・代表取締役CEO:田中大幸
・公式サイト:https://www.birchbit.com/