Ashirase、シリーズAで3.4億円を調達 屋内空間データ基盤の社会実装を加速
視覚障害者向け歩行支援を手がけるAshirase(東京都千代田区、千野歩代表取締役CEO)は2026年8月5日、シリーズAラウンドで総額3.4億円の資金を調達したと発表した。様々な分野からの新規の出資を得て、屋内空間データ基盤「IndoorFlow」の社会実装を加速する。
Ashiraseは、本田技研工業の新事業創出プログラム「IGNITION」第一号として2021年に設立されたHonda発のスタートアップ(関連記事)。靴に装着したデバイスの振動で進行方向を伝え、視覚障害者の単独歩行を支える「あしらせ」を2024年に国内で発売した。2026年3月にはオーストラリアで販売を開始し、欧州でも医療機器認定を取得して今秋の発売を予定するなど、海外展開も進めている。
同社が事業の軸に据えるのが、この歩行支援で培った測位・誘導技術を屋内空間に広げる取り組みだ。人は生活時間の約9割を駅や商業施設、オフィス、病院などの屋内で過ごすとされる一方、屋外がGPSやデジタルマップで最適化されてきたのに対し、屋内には高精度な測位情報や共通の空間情報基盤が存在せず、「データの空白地帯」となってきた。従来の屋内測位は専用機器の設置工事や保守コストが重く、普及の壁となっていた。
2026年4月にサービスを開始した「IndoorFlow」は、独自のVPS(Visual Positioning System)技術により、特別な工事なし、カメラ画像だけで屋内空間を高精度にデータ化する。スマートフォンのみで多くの施設に導入でき、施設のデジタルツインに活用できる高精細な3D空間データも同時に生成する。この基盤上に、ナビゲーションや施設運営のDXなど多様なサービスを展開する構想だ。
「IndoorFlow」は公共・商業・オフィス・医療など多様な現場で導入・実証が進む。東京都庁本庁舎では東京都のスタートアップ支援策「キングサーモンプロジェクト」に採択され、本庁舎への実装と公共調達認定を取得。TAKANAWA GATEWAY CITYでは視覚障害者向けの移動・ショッピングサポート実証を、JR東日本のシェアオフィス「STATION WORK」では予約ブースまで誘導するナビゲーションを提供している。JR広島駅周辺のほか、東京・愛知・大阪などの商業施設やオフィス、病院でも導入・実証を進めている。
今回の資金調達では、第三者割当増資により、ウイング・キャピタル・パートナーズが運用するファンド、復建調査設計、住友生命保険のCVC「SUMISEI INNOVATION FUND」、ピー・シー・エーのCVC「飯田橋クロスパートナーズ」の4社を新たに株主に迎えた。調達した資金は、「IndoorFlow」の開発・社会実装、「あしらせ」の改良と欧州を中心とした海外展開、エンジニアや事業開発人材の採用・組織強化に充てる。