大手のサポートを受けてIPOへ ソラコムから生まれた「スイングIPO」とは

(※本記事は日本M&Aセンターが運営する「M&Aマガジン」に2025年2月4日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

皆さん、こんにちは。日本M&Aセンター IT業界専門グループの坂森拓実と申します。

日々IT・スタートアップ業界を中心にM&Aのサポートをさせていただく中で、IPOを目指している、というお声をお客様からよく聞きます。自己資本での成長、外部資本の活用(VC含む)など、いろんな成長オプションがありますが、大企業のサポートを受けて上場を目指す「スイングバイIPO」がトレンドとなりつつあると考えています。2年ほど前までは日本での前例がなく、近年非常に注目を集めています。

本記事では、「スイングバイIPO」についてご紹介していきたいと思います。

スイングバイIPOとは

スイングバイIPOとは大手企業のサポートを受けて成長した企業が、株式市場に上場する新たなIPO手法で、2024年3月、IoTプラットフォーム事業を手掛ける株式会社ソラコムが東京証券取引所グロース市場に上場し、誕生したモデルです。

宇宙用語のスイングバイ(※大きな惑星の引力を使うことで、宇宙船や探査機を再加速し、より遠くまで進む技術)を比喩としてつくられた用語です。

「スイングバイIPO」が誕生した背景

「スイングバイIPO」とはソラコムが上場を目指す過程で生み出した新たな用語です。ソラコムは、2014年に創業してから、2017年にM&AによりKDDIグループへ参画しました。

その際は、「スイングバイIPO」のようなコンセプトは、まだ産まれておらず、当時の公式ブログで、KDDIによるM&Aを、「Exitというより、むしろ、これまで単独では届かなかった領域に道を拓くEntrance」と表現されております。

きっかけは、ソラコムがKDDIの支援を受け、事業を成長させていくうちに、更なる成長戦略のアイデアとして、上場を検討するようになったときだったそうです。

ソラコム玉川社長が、KDDI髙橋社長に、成長戦略のアイデアとして上場を相談した際、「事情を知らない外部から見ると疎遠になる印象もあるから、何かポジティブなメッセージを考えてほしい」と言われたのですが、その時、玉川社長がふと思い出したのが、KDDIグループに参画した直後の2018年年始にチーム全員でその年のスローガンをディスカッションした時のことです。

創業メンバーの一人であるエンジニアの方が、宇宙用語「スイングバイ(※大きな惑星の引力を使うことで、宇宙船や探査機を再加速し、より遠くまで進む技術)」を比喩として持ち出して、「KDDIという大きな惑星の引力により、宇宙船であるソラコムも大きく飛躍したい」、と言っていたのを思い出し、そこから「スイングバイ」と「IPO」をくっつけた「スイングバイIPO」を生み出したそうです。

この言葉に髙橋社長も共感され、2020年のSORACOM Discoveryという年に一度のイベントで、玉川社長と髙橋社長が一緒に「スイングバイIPO」のコンセプトを発表したのがきっかけとなっています。

スイングバイIPOの特徴

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