東大発ベンチャー・イノカ 海洋の環境再現・解析サービスβ版をリリース

イノカ(東京都港区)は、任意の海洋環境をモデル化して水槽内閉鎖環境に再現することにより、実験室での環境解析を提供する事業(環境移送解析サービス)の実証を開始したと2022年7月22日に発表した。サンゴの人工産卵を成功させた高度な環境構築技術(環境移送技術)を応用したもので、養殖における大量斃死のメカニズム解明や、ブルーカーボンの定量評価への貢献が期待できる。2022年 8月1日〜10月31日にかけてClosed βテスト、2022年11月1日よりβ版正式ローンチを予定している。 

環境解析を試みる上では従来、次の3点が困難とされてきた。①環境を構成する各種パラメータのうち、センサー等によりデータとして取得可能なものが限定的であること、②水温・水質等の取得可能な環境パラメータに関しても、天候等の影響により時系列でのデータの乱れが大きく、メカニズム解析においては不向きなケースが多いこと、③沖合・海中などの場合、定点での高頻度なデータ取得には多額のコストがかかること。同社が提供する環境移送解析サービスでは、これらの問題を乗り越えることが可能になるという。今後は、課題ごとにカスタマイズした手法による解析、専門家チームによる課題解決に向けたアドバイザリーの提供を目指して、実証を推進していく。 

イノカは、「人と自然が共生する世界をつくる」というビジョンを掲げ、2019年に創業した東京大学発ベンチャー企業。天候をはじめとする条件が日々変化する海の中のモデル生態系を閉鎖空間(水槽)に再現することで、安定した環境でデータをとることができる環境移送技術を開発し、海の見える化に取り組んでいる。これまでも世界で初めて閉鎖空間でサンゴの産卵時期のコントロールに成功し、モーリシャスでの重油流出事故における現地調査など、サンゴの保全研究を進めてきた。

ニュース2_0725小宮