兵庫県の先進的DX戦略 不妊治療助成オンライン化の成功事例に見る官民連携の未来
兵庫県が、AI型デジタルアダプションプラットフォーム(DAP)「テックタッチ」を導入し、県民向け電子申請システムの利便性を大幅に向上させたことが注目を集めている。これは、行政手続きのオンライン化をただ進めるだけでなく、実際に住民に利用してもらうことを目指した、先進的なDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の成功事例である。なお、テックタッチ株式会社はDAP市場国内シェアNo.1の実績を持つ。
兵庫県は、2021年度に策定した「行政手続オンライン化推進計画」を、今年度からは「スマート兵庫戦略」へと発展させながら、申請手続きのオンライン化を推進してきた。しかし、一部の申請では、入力項目の複雑さやデジタル操作に不慣れな方が途中で断念してしまうなどの課題に直面していた。この課題に対し、兵庫県は生活に密着した支援制度である「不妊治療における先進医療費および通院交通費助成事業」の申請に「テックタッチ」を導入した。この申請は、年間約3,300件の申請のうち半数以上で不備が発生しており、支援策としての実効性を高めるためにも、操作支援の導入が急務となっていた。
「テックタッチ」の導入により、この状況は大きく改善された。兵庫県保健医療部健康増進課の田野元規氏によると、昨年度は申請件数3,320件のうち、約1,500件の不備があり、入力漏れ入力間違いによる差戻しが約100件あったが、今年度は入力漏れや入力間違いによる差戻しはなくなった。また、画像の添付漏れ等についても、減少が確認されている。この改善は、「テックタッチ」の持つ3つの機能、すなわち①入力ガイダンスの表示、②自動入力、③マスク機能による入力制限を活用したことによるものだ。令和7年度から本格的に活用を開始し、申請者の画面において、選択項目に合わせた入力の必要性や入力方法の明確化、入力漏れ・入力間違いの防止、入力内容固定箇所の修正防止を実現している。
今回の導入で特に評価されたのが、ノーコードで誰でも簡単にガイドを作成・修正できる点である。兵庫県企画部デジタル改革課の大野和樹氏が指摘するように、システム改修するとなるとお金も時間もかかるが、「テックタッチ」であれば、ノーコードツールの強みを活かして、既存システムを改修することなく、早ければ数分で機動的に対応できる。この柔軟性により、将来的には県庁職員が状況に応じて最適なナビゲーションを構築・運用できるようになり、現場主導のDX推進体制の実現につながることが期待されている。
実証実験後の職員アンケートでは、「操作が分かりやすい」との回答が多数を占め、操作時間削減や業務負担の軽減が確認された。田野元規氏は「申請不備"0"を目指して、ガイダンス等の改善を進めているところです」と述べ、今後も貴社のサービスが県民の利便性向上に資することを期待すると語っている。
兵庫県のこの取り組みは、行政サービス向上に向けた新たなモデルを示している。複雑な行政手続きをシンプルにし、誰もがスムーズにデジタルサービスを利用できる環境を整備することは、住民の利便性を高めるだけでなく、行政の効率化にも直結する。暫定的な庁舎分散計画も見据え、場所やITリテラシーを問わず誰もが円滑に電子申請を利用できる環境整備の一環として位置付けられているこの事例は、公共サービスと民間技術が連携することで社会課題を解決できる可能性を示唆している。テクノロジーを活用して、より良い社会を創造するという「事業構想」の理念を体現する、兵庫県の先進的な挑戦は、これからの日本におけるDXのあり方を考える上で、貴重な示唆を与えてくれる。