日立製作所がOpenAIとの連携本格化 AIでレガシー基幹システム刷新とサイバー防衛を加速

株式会社日立製作所(以下、日立)は2026年6月17日、OpenAIとの連携を本格化し、先進AIを活用したモダナイゼーションの加速とサイバーセキュリティ強化を推進すると発表した。

覚書締結から約8カ月、連携がいよいよ実装段階へ

両社は2025年10月2日にグローバルAIデータセンター拡大を軸とした戦略的パートナーシップに関する覚書(MoU)を締結し、同月21日にパートナーシップ合意を発表して以来、次世代ソリューション群「HMAX by Hitachi(以下、HMAX)」をはじめとする日立のLumadaソリューション強化に向け、OpenAIが有する先進的なAI技術の活用検討を進めてきた。今回の発表は、その連携を実装段階へと移行させるものだ。

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背景にあるのは、産業横断的な二つの課題だ。熟練エンジニアの引退が相次ぐなか、ブラックボックス化した基幹レガシーシステムの刷新が企業のAIトランスフォーメーション(以下、AX)推進における障壁となっている。加えて、サイバーセキュリティをめぐる環境の急変を受けて、高度な防御体制の構築が喫緊の課題となっている。

AIで既存コードを解析し、基幹システム移行を安全に支援

一つ目の取り組みが、AIを活用したモダナイゼーション手法の確立と提供だ。日立とOpenAIの双方のForward Deployed Engineers(FDE、自社プロダクトやAI技術を活用して顧客企業の課題解決から実装・運用定着まで一貫して担う上級ソフトウェアエンジニア)が連携し、OpenAIのAIエージェント「Codex」の高度な解析力と、日立が長年にわたるミッションクリティカルなシステム開発で培ったノウハウを組み合わせる。既存コードをもとにした上流仕様の可視化から新システムへの移行テストまで、一連のプロセスに信頼性の高いアプローチを確立することをめざす。今後は、モダナイゼーション事業の統括・推進を担う専門組織「Modernization CoE」が中核となり、確立した手法をAIソリューションとして開発したうえで「モダナイゼーション powered by Lumada」に組み込み、金融機関をはじめとした幅広い産業の顧客企業へ順次提供していく予定だ。

OpenAIのサイバー防御AIを活用し、国内重要インフラを守る

二つ目の取り組みが、次世代サイバーセキュリティ環境の検証・強化だ。日立はOpenAIの「Trusted Access for Cyber(TAC)」を通じ、OpenAIのサイバーセキュリティ向けAIモデルへのアクセスを取得する予定である。同プログラムは2026年2月5日にOpenAIが発表したもので、同社が掲げる「日本サイバー・アクションプラン」の一環として、高度なAI能力を信頼できる防御側の関係者に責任ある形で届けるものだ。日立はOpenAIのDaybreakに基づく防御重視の枠組みのもと、適切な安全策・管理体制・人間による監督を前提に、脆弱性の特定、優先順位付け、修復・検証など正当な防御目的での活用を検討する。日立のセキュリティ専門組織「Cyber CoE」は、自社内で実践する「カスタマーゼロ」として日立が提供するシステムの検証を推進するとともに、そこで得られた知見を今後のサイバーセキュリティ強化に活用していく。

連携で得た知見をHMAXに統合し、提供価値を高め続ける

三つ目の柱が、実践的な現場派遣エンジニアの育成とHMAXの高度化だ。本取り組みを通じてモダナイゼーションおよびサイバーセキュリティ領域に強みを持つ現場派遣エンジニアとしての能力向上をめざし、得られた知見はAIの社会実装を牽引する専門組織「Frontier AI Deployment Center」がハブとなって順次HMAXへ統合していく。

日立製作所 執行役社長兼最高経営責任者の德永俊昭氏は「日立は長年、ミッションクリティカルな社会インフラを支えるシステム開発に携わっており、その数は国内だけでも約1万5,000に及びます。レガシーシステムのモダナイゼーションとセキュリティ向上は、AI時代の持続的な成長に向けた、すべての企業にとって重要な経営課題です。OpenAIと共に、安全で信頼性の高い社会インフラの革新に取り組めることを誇りに思います」と述べた。OpenAI Japan合同会社 代表執行役社長の長﨑忠雄氏も「日立との取り組みは、AIを日本の重要な産業・社会インフラにおいて、より安全かつ実践的に活用していくための重要な一歩です。企業が安心してAIを活用し、新たな価値を創出できる環境づくりを後押しするとともに、AIが人々や組織の可能性を広げ、社会を支える実践的な力となるよう取り組んでまいります」とコメントしている。