PwCコンサルティングが提案する地域ビジネスの在り方

地域に入り込み、「共に創る」ことを重視

少子高齢化が加速的に進むなかで、地域に対する注目は高まっている。そのなかでPwCコンサルティング合同会社は地域共創推進室を設立し、地域内のプレイヤーや地域内外のステークホルダーとともに課題解決へ取り組んでいる。同社が重視するポイントと、地域ビジネスに関する調査結果から見えてきた現状について聞いた。

地域共創推進室を設立
「共に創ること」がキーワード

PwCコンサルティング(以下、PwCコンサルティング)は2022年より「地域共創推進室」を設立し、自らも地域に入り込みながら、企業の地域ビジネスの支援に取り組んでいる。地域の最前線に立ち、多様なステークホルダーを結び付けることで、課題解決に向けた取り組みの共創を支援することを狙う。

同社 執行役員 パートナーの松原隆介氏は設立の背景について次のように話す。

「国内GDPの6割を占める“地域”は今後ますます重要になると考えています。日本は課題先進国であり、地域の課題に対するソリューションを創出することができれば、今後同様の課題に直面するであろう海外で大きなマーケットを獲得できる可能性があります。そういった観点で首都圏や大都市圏の企業も地域に注目しており、当社も地域に対する解像度を上げて、私たちなりの正解をもっておくことが重要と考えています」

同社が地域ビジネスに取り組む姿勢は、その部署名に込められている。何よりも大切にしているのは「共創」だ。

「私たちは地域と共に創っていくことが課題解決のキーワードになると考えています。日本各地には、その地域のことを真剣に考えているプレイヤーが必ず存在します。地域共創推進室は、外部からリスクのない立場で助言だけをするのではなく、一緒に地域に入り込み、地域のプレイヤーやステークホルダーからの信頼を得て、連携をするなかで取り組みを進めています」

PwCコンサルティング合同会社 執行役員 パートナー 松原隆介氏
PwCコンサルティング合同会社 執行役員 パートナー 松原隆介氏

地域ビジネスを成功へ導く
5つのキーアジェンダ

同社は地域共創推進室の取り組みの一環として「地域ビジネスの実態に関する調査」を実施している。第1回は2023年10月、日本企業の管理職以上を対象に行った。

着目すべき点として、同社マネージャーの太田陽氏は「地域ビジネスで収益をあげられている(想定以上/想定通り)」と回答した割合が計40%だったことを挙げる。

「予想以上に多い印象だと思います。一方で収益をあげられない企業も多く、地域や商材が単一でスケールしない、地域の社会構造は複雑ゆえにニーズを正確に把握できていない、ケイパビリティが不足している、将来的にどうビジネス展開するかを描き切れずにはじめてしまうといった要因があります」

この状況をふまえて、同社は「地域ビジネスを成功するための5つのキーアジェンダ」を提示している。ビジョン(長期視点での取り組み、明確な目的意識)、体制(コミットした組織体制、効果的な外部連携)、収益性(受益者負担のマネタイズモデル)の5点だ。

地域ビジネスを加速させるためのキーアジェンダ
地域ビジネスを加速させるためのキーアジェンダ

「収益をあげている企業は初期段階から目的意識をもち、専門組織をつくり、リソースを割いています。支店に戦略や事業を任せるのではなく本社に地域ビジネスの推進組織を置き、企業全体として取り組むなどです。外部連携に関しては地域の複雑な課題は単一事業者だけでは解決することは難しく、政府機関や専門家、地域プレイヤーといったステークホルダーを巻き込むなど、まさに共創により推進することが大切です」(太田氏)

PwCコンサルティング合同会社 マネージャー 太田陽氏​
PwCコンサルティング合同会社 マネージャー 太田陽氏​​

地域とのリレーションを重視

2024年5月には1回目の調査を踏まえ、地域ビジネスで成果をあげられていると回答した人を対象に2回目の調査を実施した。地域ビジネスで成功している企業は「地域の声を拾い上げ、ニーズを的確に反映させる」「地域の納得を得たうえで効果的なサービスを展開する」という2つのステップを実行しているケースが多いことが判明したと太田氏。

「地域のニーズはアンケートを実施しただけでは掴みづらいため、地域行事に参加するなどして、いかに住民や地域企業を巻き込んでリアルな課題を把握できるかが重要です。支店がある場合はそれが強みになり、支店や地域のグループ企業やパートナー企業と連携して地域の声を拾い上げていくことが効果的です」(太田氏)

ニーズをふまえたサービス展開では、サービスの内容とともに地域へと浸透させることが重要であるという。

「浸透させるためには地域住民や地域内のプレイヤーとリレーションをつくり、企業の独りよがりにならないことです。地域には利害関係もあるので、その場合は間に入るなど、成功している企業はそこも工夫して実施しています」(太田氏)

松原氏はPwCコンサルティングの地域共創推進室も地域に入り込んで活動することを最重視していると話す。

「外部から助言をするだけでは信頼を得られません。私たち自身がプレイヤーになることもあります。地域のプレイヤーにはそれぞれ事情があり、個別の企業や団体の利益にとらわれていてはまとまることが難しい。私たちには俯瞰的かつ全体最適の視点で地域課題解決に取り組む役割が求められていると考えています。そのためにも泥臭く地域のみなさんとコミュニケーションを取り、合意形成を進めることを大切にしています」

フラッグシップ地域を設定し
マネタイズモデルを確立

PwCコンサルティングは、マネタイズモデル確立のためのマーケティングを試行錯誤するフィールドとして「フラッグシップ地域」をもつことも1つの解決策として提案している。

その理由について「地域社会の特性やニーズ、企業としての事業戦略やケイパビリティなど複数の要素があるなかで的確なサービスを投入することは簡単ではない。検証したうえでビジネスとして育てるためにフラッグシップ地域は有効と考えています」と太田氏。

図表 フラッグシップ地域の活用の方法
図表 フラッグシップ地域の活用の方法

フラッグシップ地域を活用するポイントとして、①収益性、②ソリューション/ビジネスモデル、③人材育成、④情報/ナレッジの4つの視点を挙げる。

「収益性に関するKPIのみならず住民の満足度など別のKPIも考えられます。当該地域のみならず他地域のニーズも考慮したソリューションを構築・検証し、人材育成では地域愛をもった人材を育て、その推進者自身が主体的に地域を開拓する仕組みをつくること。担当者に紐づく現場知見やナレッジを形式知化するだけでなく、担当者が他の地域も開拓することを意識するべきです」(太田氏)

人材育成に関しては、地域ビジネスに取り組むことを社内で評価する制度も重要になる。ただ、実際は本社と支社で、意識のギャップが生まれているケースも多数あるという。

「全社で地域ビジネスは重要かつ意義があると示す必要があります。社内連携は重要で、本社から支社へのメッセージは伝わっていても、支社は本社が自分たちを理解してくれていないと感じていることもある。そのギャップを埋めていくことは不可欠です」(太田氏)

PwCコンサルティングは今後も地域に関わり、ステークホルダーと共に創りあげる活動を進めていく。

「PwC Japanグループのパーパスに『社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する』というものがあります。地域共創推進室がそれを体現する存在になれればよいと考えています。これからも泥臭く現場に入って地域の解像度を上げて、地域に求められているものを提供することにチャレンジしていきます」(松原氏)

本記事で言及している提言・レポートを下記よりダウンロードいただけます。

地域ビジネス成功に向けた提言(レポート)
地域ビジネス成功の5つの要諦(レポート)

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