自治体におけるSDGsの実践 知っておきたい歴史的背景

自治体にとってのSDGsには、グローバル目標と地域の課題解決を結びつけて実践しなければならない難しさがある。本連載では、「持続可能な都市と地域をめざす自治体協議会」(ICLEI、イクレイ)日本事務局長の内田東吾氏に国内外の事例とともに自治体SDGs実践のヒントを提示いただく。

深刻化する地球環境問題と
自治体の役割

世界的に環境問題への関心が高まったのは、第二次世界大戦後、欧米、日本などで急速な経済成長と工業化・都市化が進行し、これに伴い1960年代に公害問題が顕在化したことがきっかけです。さらに、欧米諸国では国境を越えた汚染物質の長距離移動による酸性雨問題が深刻化して国際的な環境問題への取組みが課題となり、1972年にはUNEPが発足しました。1980年代に入ると地球規模の環境問題をして成層圏オゾン層の破壊が注目を浴び、1987年にオゾン層を破壊するフロンガスの規制が始まりました1)。同じ年、環境と開発に関する世界委員会が4年をかけて取りまとめた報告書『我ら共有の未来(Our Common Future)』2)が公表され、ここで初めて"持続可能な開発"という概念が打ち出されました。経済成長と環境のバランスを取るという、後にSDGsにつながる議論が世界で本格的にスタートしました。

こうした流れと並行して注目されたのが自治体の役割です。1982年にアメリカで地球規模課題の解決に向けた行動を促すことを目的として、Center for Innovative Diplomacy(CID)という自治体職員や市民のネットワークが誕生しました。1989年にはアメリカ・カナダの関係者が一堂に会し、オゾン層保護の国際条約を踏まえた国の対策が遅れる中で、自治体がフロンガスを廃止する条例の制定を約束しました。これをきっかけに、国際的な環境問題における自治体の役割の重要性が認識され、CIDが中心となり自治体を支援する組織の設立に向けた検討が始まりました。

表 持続可能性をめぐる世界の動き

 

イクレイ発足

冷戦後の世界の発展と国家間の新たな協力体制への期待から、1992年には国連環境開発会議(地球サミット)が史上最大の加盟国の参加のもとで開催されました。その準備段階において、UNEPはCIDが進める自治体ネットワークの構想に賛同し、1990年に国連本部で開催した「持続可能な未来のための地方自治体による世界大会」で、世界43カ国200自治体の参加のもとイクレイが設立されました。2年後に開催された地球サミットでは、「気候変動枠組条約」「生物多様性条約」「国際連合砂漠化対処条約」3)のほか、持続可能な開発を実現するための行動計画『アジェンダ21』が採択されましたが、地球規模課題に取り組む上で、変化を生み出すことができるのは市民一人ひとりであり、その生活と密接に関わる自治体に対し、大きな期待が寄せられました。

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