屋内ナビ「IndoorFlow」、日本橋で街全体の移動を支援 三井不動産とHonda発Ashiraseが社会実装

三井不動産株式会社は、本田技研工業(Honda)発のスタートアップである株式会社Ashiraseと協力し、スマートフォンを使った屋内ナビゲーションサービス「IndoorFlow(インドアフロー)」を東京・日本橋エリアで社会実装した。2026年10月1日に運用を開始し、GPSの電波が届きにくい地下・屋内空間での移動を支援する。日本橋エリアでの導入は今回が初めてとなる。

IndoorFlowは、スマートフォンのカメラで周囲の環境を認識して現在地を把握し、音声案内やAR(拡張現実)表示で目的地まで案内するサービス。カメラ画像から位置を割り出す独自のVPS(Visual Positioning System=画像測位技術)を用いている。ビーコンなどの専用設備を施設に設置する必要がなく、工事を伴わないため導入や更新の負担が小さく、複数の施設へ広域に展開しやすい。また、測位にGPSを使わないため、電波が届きにくい地下や屋内でも高精度に現在地を把握できる。

視覚障がい者には音声と振動で、車いす利用者には段差のないバリアフリールートを優先して、訪日外国人には6か国語の多言語で、それぞれ目的地まで導く。トイレや飲食店、駅改札、授乳室、コインロッカーなどへの誘導を想定している。技術の開発・提供を担うAshiraseは、視覚障がいのある人々とともに歩行支援で培った技術と知見を生かしており、開発段階から当事者の声を反映する「インクルーシブ・デザイン」の考え方を採り入れた。三井不動産は日本橋エリアでの導入・運用と、街全体への展開推進を担う。導入に先立つ事前テストでは、視覚障がい者・車いす利用者の計42名を対象に検証を行い、目的地への到達率は100%を記録。「移動時の不安が解消された」との回答が88%、「一人で行ける場所が増える」との回答が95%にのぼったという。

今回の取り組みの特徴は、単一の施設にとどまらず、駅・地下道・商業施設をまたいで街全体の移動を一つにつなぐ点にある。導入対象は東京メトロ三越前駅の地下道と、そこに直結する「COREDO室町1」「COREDO室町2」「COREDO室町3」「COREDO室町テラス」、日本橋三井タワー、複合施設「YUITO(ユイト)」の計6施設。両社は、施設の垣根を越えて誰もが迷わず移動できる環境を整え、歩いて回遊しやすい「ウォーカブルな街・日本橋」の実現を目指す。

国内の視覚障がい者は約27万人(2022年、厚生労働省調査)とされ、訪日外国人旅行者数も2025年に約4,300万人、2030年には約6,000万人が見込まれている。障がいの有無や言語にかかわらず迷いやすい地下・屋内空間を案内する仕組みは、誰もが移動しやすい街づくりにつながる。両社は今後、利用者の声や運用実績を踏まえて対象施設や案内ルートを順次拡充し、八重洲・東京駅周辺への展開や、MICE(国際会議や展示会などのビジネスイベント)での活用、将来的な他エリアへの展開も視野に入れている。