カード手数料の時代が終わる?RBAの改革案があなたの財布に与える影響
※本記事は『THE CONVERSATION』に2025年7月15日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています。

朝のコーヒーに加算される10セント。タクシー利用時にかかる2ドルの追加料金。地元のレストランでカード払いをしたときに発生する1.5%の“隠れ手数料”。こうしたコストが、間もなく過去のものになるかもしれません。
オーストラリア準備銀行(RBA)は、カード決済時の手数料(サーチャージ)を廃止するという抜本的な改革案を打ち出しました。RBAはこの制度を廃止することで公共の利益につながるとし、消費者全体で年間12億豪ドルの節約が見込まれると試算しています。
とはいえ、こうした大規模な金融改革には、細部に“落とし穴”が潜んでいます。
20年続いた実験の終焉
サーチャージ制度は、支払い手段ごとの実際のコストを明示するため、20年以上前に導入されました。2000年代初頭はカード手数料が高く、現金決済が主流だった時代。手数料の可視化は、消費者により低コストの決済方法を選ばせる“誘導策”として機能していました。
しかし2025年の現在、決済環境は一変しています。対面決済における現金の利用率はわずか13%。パンデミックを機に非接触決済が急速に普及し、カードはオーストラリア国民にとって“当たり前”の支払い手段となりました。
選択肢が実質的に存在しない今、サーチャージは「価格のシグナル」ではなく、「利便性への罰則」として機能してしまっているのです。
8カ月にわたる検討の末、RBAの決済システム委員会は「キャッシュレス経済において、サーチャージモデルは機能しない」と結論づけました。現在提案されているのは、段階的なサーチャージ廃止と、価格表示をシンプルかつ包括的にする方向への移行です。
誰が得をし、誰が負担するのか?
表面的には、サーチャージの撤廃は消費者にとって朗報に見えます。RBAの試算によれば、平均的な世帯で年間約60豪ドルの節約につながるといいます。しかし、手数料が消滅するわけではなく、その負担が「どこに移るか」が重要な論点です。
RBAの提案は、実は想像以上に精緻な設計となっています。サーチャージを禁止する一方で、店舗側がカードネットワーク(VisaやMastercardなど)に支払う「インターチェンジ手数料」の引き下げや、海外発行カードに対する手数料の上限設定も合わせて導入される予定です。
こうした措置により、店舗側の負担を軽減し、商品の値上げ圧力を抑えることが狙いです。
それでも物価は上がる?
サーチャージが廃止されれば、店舗が商品価格に手数料分を上乗せする可能性がある――。こうした懸念も当然あります。ただしRBAの予測では、仮に価格転嫁があったとしても、物価全体への影響は「0.1%ポイント程度」にとどまると見られています。
その根拠は以下の3点です。
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