【11月6日赤澤亮正経済産業大臣会見要旨】企業のセキュリティ対策状況可視化、2027年3月に新制度
赤澤亮正経済産業大臣は2026年11月6日、閣議後記者会見を開いた。冒頭、中部電力株式会社に電気事業法に基づく業務改善命令を出したと報告した。防災庁の緊急要請を受けた所管業界団体への事前防災の要請や、日本たばこ産業株式会社(JT)グループのロシア資産を巡る大統領令への対応、SNSのXで自動翻訳により人名が誤訳された問題についても説明している。質疑応答では、中国によるレアアースの輸出管理への対策、企業のサイバー攻撃対策、米国の中間選挙後の日米関係について見解を述べた。
3件の不適切事案受け、改善命令
中部電力を巡っては、浜岡原子力発電所3号機・4号機の新規制基準適合性審査で、地震動の評価を不適切な方法で実施していた事案が確認されている。赤澤大臣によると、経済産業省は10月29日に中部電力から3件の不適切事案に関する報告徴収命令への回答を受け、業務改善命令の発出に向けて準備を進めてきた。
経済産業省の発表によると、同省は受領した報告の内容を検証し、業務改善命令が必要と判断した。10月30日に行政手続法に基づく弁明の機会を与えたところ、中部電力は同日中に弁明を行わない旨を申し出ている。11月2日には電気事業法の規定に基づいて電力・ガス取引監視等委員会に意見を求め、11月4日に命令の実施に異存はないとの回答を得た。こうした手続きを経て、6日に命令を発出した。
外部人材の目で再発防止策を検証
命令は中部電力に対し、実効性のある再発防止策をつくり、実施方法と実施時期を明確にしたうえで実行するよう求めた。再発防止策には、役職員の責任の所在の明確化、法令等遵守体制の抜本的な強化、原子力部門など高い専門性が求められる部門の閉鎖性の排除、内部通報制度の運用体制の抜本的な強化と対応プロセスの見直しを盛り込む。さらに、外部人材を活用した審査体制を含め、再発防止策の実効性を客観的に検証する体制づくりも求めている。
中部電力は、具体的な施策の実施方法と実施時期を盛り込んだ業務改善計画を2026年11月30日までに提出し、取り組みの決定と実行の状況を2027年3月31日までに報告しなければならない。その後も、経済産業省からの確認や報告の求めに継続して応じる必要がある。
赤澤大臣は、命令への対応を通じて中部電力の改革が抜本的かつ十分なものとなり、確実に実行されるよう、引き続き最大限に対応すると述べた。質疑応答で受け止めを問われると、3件の事案は同じ部署で起きたものではないようだとしつつ、ガバナンスを見直す必要があるとの認識を示した。法令遵守の意識や、内部通報があったにもかかわらず生かされなかった点には、大きな問題があると受け止めているという。原子力発電所などの政策は国民の理解を得ながら進めており、安全は絶対の大前提だと強調した。正すべき点は必ず正さなければならないと強く感じていると語っている。
所管約1,100団体に事前防災を要請
防災庁は2026年11月2日に発足し、同日に「事前防災徹底のための緊急要請」を出した。各府省庁に向けた要請には、所管分野の企業・団体などの事前防災の徹底が盛り込まれている。赤澤大臣は、令和8年熊本地震で被災した中小企業を自ら視察し、中小企業の事前防災には改善の余地が大きいと感じたという。この問題意識は防災庁側とも共有しており、今回の要請はこうした問題意識に沿って出されたものだと評価した。
これを受けて経済産業省は6日、所管する約1,100の業界団体などに対し、会員企業の事前防災を徹底するよう要請した。中小企業には「事業継続力強化計画」の策定を促す。中小企業が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を、経済産業大臣が認定する制度である。計画の策定が難しい事業者には、災害リスクと対策を自ら点検できるシートの活用を求める。
認定審査に棚の固定などを追加
今後の強化策として、事業継続力強化計画を認定する際に、棚の固定といった基本的な防災対策の実施状況を含む審査項目を加える。事前に備えておけば、人的被害や建物・設備の被害が抑えられ、サプライチェーンへの影響も軽くなる効果が期待できるという。赤澤大臣は、中小企業の事前防災の取り組みは必ずしも十分ではないとの認識を示した。中小企業が自分のこととして本気で取り組めるよう、効果的な支援のあり方について検討を深める考えだ。
JT子会社のロシア資産で抗議
赤澤大臣は、JTの子会社であるJT International S.A.がロシアに持つ資産を、ロシア企業の一時的な管理下に移す大統領令が11月5日に出された件について、詳細を精査していると説明した。
日本政府はこれまでもロシアに対し、日本国民や日本企業の正当な利益が損なわれないよう求めてきた。経済産業省と外務省の幹部がロシアを訪問中で、ロシア政府に抗議するとともに、措置の撤回などを至急行うよう求めたという。大臣は、引き続き状況を注視し、政府として適切に対応すると述べた。
9月以降の事例続き、警戒していた
記者は、両省幹部の訪ロが今回の件を受けたものかどうかを尋ねた。不安を抱く企業も多いとして、所管する企業や団体との意思疎通のあり方もあわせて問うている。赤澤大臣によると、9月以降、ロシアが西側諸国の企業の資産を一時的な管理下に置く事例が続いており、経済産業省も警戒していた。日本企業の資産保全に向けた働きかけはこれまでも定期的に行ってきたが、必要性が特に高いことから、資産保全の働きかけを主な目的として出張したと承知しているという。ロシアとのやり取りの詳細は外交上の観点から明らかにしなかったものの、今後も日本企業の資産保全のため、ロシア政府と意思疎通を図る考えを示した。
Xの自動翻訳、首相の名前を誤訳
赤澤大臣は冒頭発言の最後に「番外編」として、SNSの自動翻訳による人名の誤訳を取り上げた。10月28日に行ったタレク・ラーマン・バングラデシュ人民共和国首相との会談について、大臣はXに日本語で投稿した。ところが英語に自動翻訳された際、ラーマン首相の名前が、その前に首相を務めた人物の名前に誤って訳された。翻訳を読むと、首相が交代した後の10月28日に、大臣が前の首相と会ったかのように見えてしまうという。
投稿には1万1,000から1万2,000ほどの反応が寄せられ、その多くが首相の名前の間違いを指摘する内容だった。クウェートの閣僚とのオンライン会談に関する投稿でも、相手の名前がカタールの閣僚の名前に誤訳されていた。大臣は、ビッグデータとAIの時代にあって、AIの学習が最新の情報に追いついていないことが原因との見方を示している。
同様の誤訳は今回で3件目になる。以前にはハワード・ラトニック米国商務長官から、名前が間違っていると冗談交じりに指摘されたこともあった。大臣が、日本語で正しく投稿しており、プラットフォームの機械翻訳の誤りは自分ではどうしようもないと返すと、親友同士の二人は互いに笑って終わったと明かした。
反応を寄せた人の多くはバングラデシュの国民である可能性があり、日本の閣僚が自国の首相をよく分かっていないと受け止められかねないと、大臣は懸念を示した。X社にはすでに訂正を依頼し、修正されたと認識している。そのうえで、人名を誤訳するようなプラットフォームには抜本的な改善を求めたいとして、自動翻訳で同様の誤りが生じないよう同社に申し入れていく考えだ。
レアアース輸出の減少に懸念
記者は、中国によるレアアースなどの輸出をめぐり、製造業への影響と今後の対策を尋ねた。赤澤大臣は、中国の輸出管理の影響で、中国から世界向けのレアアースの輸出量が減少傾向にあると説明した。日本の産業界からも安定調達への懸念の声があるという。大臣はこうした中国の振る舞いについて、英語でいうエコノミック・コアーション(経済的威圧)にあたり、世界的に問題視されているとの見方を示した。
日本はこれに対応するため、在庫の活用、代替品への切り替え、リサイクルの推進、国家備蓄の活用などを進めている。さらに総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会では、鉱山開発などの権益を迅速に確保する観点から、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が自ら権益を取得できるよう制度を整える必要があるとの考えを示した。政府内で具体化に向けた調整を進めており、重要鉱物の安定供給の確保を強化していく。
鍵は組織トップの指導
記者は、企業の情報漏えいが相次ぐなかで、企業の対策では何が重要になるかを尋ねた。赤澤大臣は、企業への不正アクセスはサプライチェーン上の取引先にも悪影響を及ぼすおそれがあると指摘した。そのため、中小企業も含め、組織のトップによる指導、脆弱性の早期把握と対応、ゼロトラストへの移行といった対策を徹底することが重要だと述べた。
一方で、中小企業は人材や資金に限りがある。経済産業省は、異常の監視や初動対応といった対策を安価にひとまとめにした「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の導入経費を「デジタル化・AI導入補助金」の対象とし、中小企業への普及を進めている。10月27日には、各都道府県のよろず支援拠点と、独立行政法人中小企業基盤整備機構の「IT経営サポートセンター」に、無料の「サイバーセキュリティ特別相談窓口」を設けた。
2027年3月からは、企業のセキュリティ対策の状況を可視化する「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」を始める。取引先の対策状況を外部から判断しにくいという、発注元企業側の課題などに対応する仕組みである。こうした取り組みを通じて、中小企業のサイバーセキュリティ対策を支援していく考えだ。
中間選挙後も日米合意を着実に実施
記者は、米国の中間選挙の結果が日米関係や対米投資に与える影響を尋ねた。赤澤大臣は、他国の内政に関することだとして、政府の立場からのコメントは控えた。そのうえで、米国は世界最大の経済大国であり、その政策の動向は日本にも大きな影響を与えるため、中間選挙後も状況を注視していくと述べた。
「日米政府の戦略的投資イニシアティブ」を含む2025年の関税措置に関する日米間合意については、日米両政府の間で合意したものであり、議会選挙の結果によって直ちに影響を受けるものではないとの認識を示した。日米の強固な経済関係を維持する重要性も、選挙結果によって変わらないという。合意は両国にとって経済安全保障の確保や経済成長の促進などにつながる多面的な意義を持ち、日本としてその着実な実施に強く取り組む姿勢だ。中間選挙の結果が判明した直後には、大臣自らが米側のカウンターパートと連絡を取り、米側も引き続き合意に取り組む姿勢であることを確認したと明かした。
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