経産省 FCV普及と水素インフラ整備へ中間とりまとめ公表

経済産業省は、2023年7月11日、「モビリティ分野における⽔素の普及に向けた中間とりまとめ」を発表した。2022年9月から5回にわたって開催した、モビリティ⽔素官⺠協議会における議論の成果で、2023年6⽉に改定した⽔素基本戦略の内容も反映している。脱炭素社会の実現のために燃料電池自動車(FCV)を普及させ、水素ステーションなど必要なインフラの整備が進むよう、有望な利⽤分野、FCVの⾞両の供給の時期や台数の試算、需要が⾒込まれる地域の考え⽅、⽔素の供給コストの⾒通しをまとめた。

FCVの特徴として、EVよりも航続距離が長く、エネルギー補給にかかる時間が短い点が挙げられる。中間とりまとめでは、移動距離が長いトラックやバス、タクシー、社用車などとしての潜在性があるとした。そして、FC小型トラックについては2030年までに累計1.2~2.2万台、FC大型トラックについては同5000台の供給が必要と試算している。路線バスで導入が先行しているFCバスは、年200台の供給が必要になるとした。いずれも、数年先のモデルチェンジによる販売価格低下を見込んでいる。

水素供給コストについては、いくつかの前提から検討したところ、ユーザーの利便性を上げると水素供給コストも上がることが分かった。すなわち、短時間で水素を充てんできるようにしたり、水素ステーションの利用が一定の時間に集中すると供給コストが上昇する。このようなトレードオフの関係を関係者間で考慮しつつ、適切な使用の水素ステーションの整備を模索する必要があるという。

また水素ステーションの整備では、すでに多くの水素ステーションがある福島・関東圏・中京圏・関⻄圏・福岡を中心に、輸送事業者や荷主のFC車両導入の検討が進んでいるエリアと、エリア間を結ぶ幹線に水素ステーションを整備するとした。その際、需要の変化に柔軟に対応できる仕様の水素ステーションを整備する。2023年度をめどに、重点地域の精緻化を目指す。

国としても、2023年度に開始したGX移行債を活用した約136億円の補助金や、FC化に伴うトラックの積載量減少に対応するための規制緩和の必要性の検討などを通じて、FC商⽤⾞の普及を積極的に支援する方針だ。中間取りまとめでは、水素利用の拡大には自治体の存在が重要であるとも指摘しており、地域ごとの議論ができるしくみ作りを検討するという。

水素ステーションイメージ