Acompany、「秘密守れるAI」を既存アプリに組み込める形で提供開始
株式会社Acompany(アカンパニー、名古屋市中区)は2026年11月4日に「Confidential AI Suite(CAS)事業戦略発表会」を開き、企業が今使っている業務アプリやツールに組み込んで使える推論API「Acompany API」の提供を同日に始めたと発表した。AIチャット「Acompany セキュアチャット」に、大企業が全社でAIを管理するための「エンタープライズ向け管理機能」を追加したほか、無償の「AI活用リスク 簡易診断」の提供開始も併せて発表した。
サービス説明を行う代表取締役CEOの高橋亮祐氏(画像はクリックで拡大します)
同社は2018年6月の設立。データの中身を計算中も秘匿したまま処理する「機密コンピューティング(Confidential Computing)」を核に、AI製品ブランド「Confidential AI Suite(CAS)」を展開している。
侵入されても処理中のデータ保護
代表取締役CEOの高橋亮祐氏は、機密コンピューティングについて、半導体が作る保護領域(TEE)の中でだけデータを復号・計算する技術だと説明した。承認されたプログラムだけが動いていることを外部から確かめる「リモートアテステーション」と組み合わせることで、インフラ事業者からも中身が見えない状態で処理できるという。
高橋氏は、AIの進化でサイバー攻撃の手口が高度になり、システムに侵入されることが当たり前になったと指摘した。一方で、IDやパスワードを盗まれて不正にログインされる被害までは防げないため、多要素認証など従来の対策と組み合わせることが前提になると述べた。
既存のアプリから接続先を変えるだけ
新サービスは、Tech PdMの平岡拓海氏が説明した。平岡氏は、機密データをAIで扱うために自社でGPUを導入すると、稼働までに時間がかかり、GPUやモデルの更新など運用の負担も大きいと指摘した。
Acompany APIは、機密コンピューティング環境の中で大規模言語モデル(LLM)の推論を行う。運用するAcompanyやクラウド事業者からもプロンプトと応答の中身は見えず、どこにも保存しない「ゼロデータリテンション」の設計とした。
OpenAI互換とAnthropic互換のAPIに対応し、CodexやClaude Codeなどのツールから、接続先、APIキー、モデル名の3点を変えるだけで利用できる。提供中のモデルはQwen3.8とGemma 4で、要望に応じてほかのモデルも提供する。GPUの調達や保守、モデルの更新は同社が担い、料金はクレジット制の従量課金とした。
セキュアチャットに全社向け管理機能
Acompany セキュアチャットは、機密情報や個人情報をそのまま入力できる法人向けAIチャットだ。標準のプライベートモードでは機密コンピューティング環境の中で処理し、外部のAIベンダーにデータは渡らない(Web検索を有効にした場合を除く)。Gemini、ChatGPT、Claude、Grokといった外部AIも同じ画面で切り替えて使え、自動マスキング機能を備える。
今回、2026年9月から順次提供してきたエンタープライズ向け管理機能が6つそろった。部署の階層を管理画面に再現し、部署ごとの「グループ責任者」にメンバーや業務専用AIエージェント「Gears」の管理を任せられる。Gearsの棚卸し、使えるAIやツールの設定、シングルサインオン(認証オプション)、操作履歴、利用状況の確認にも対応した。平岡氏は、管理者1人で全社のアカウントやAIの利用状況を管理するのは難しく、全社展開の壁になってきたと説明した。
AI活用リスク 簡易診断は、約25分のヒアリングで、企業の生成AIやAIエージェントの利用状況とリスクを可視化する。AIによる自動診断と専門家の助言を経て、期待効果とリスクレベルを軸にした4象限で、利用対象ごとの優先順位と進め方を示す。1回あたり最大5件の利用対象を診断する。
「学習されない」と「見られない」は別
執行役員VP of Business Developmentの五十嵐修平氏は、AIサービスの規約で入力データを学習に使わないとしていても、閲覧されないとは限らないと指摘した。多くのAIサービスは、不正利用の監視などのために入出力を一定期間保持し、人が確認しうる運用を前提にしているという。機密コンピューティングを使えば、クラウドの導入しやすさを保ちながらオンプレミスのような秘匿性を確保できるとして、「第3の選択肢」と位置付けた。
同社の顧客数は2026年10月時点で18社。2027年10月に150社、2028年10月に500社へ広げ、利用ユーザー数も2027年10月に1.5万人、2028年10月に5万人とする目標を掲げた。売上は毎年3倍の成長を目指す。