【11月2日古川俊治デジタル大臣会見要旨】郵便局を地域の行政・生活支援の拠点に 誰一人取り残されないデジタル社会へ
古川俊治デジタル大臣は2026年11月2日、記者会見を開いた。古川大臣は、内閣府特命担当大臣(知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策、人工知能戦略、海洋政策、サイバー安全保障)、AI・デジタル改革推進担当、サイバー安全保障担当、コンテンツ戦略担当を兼ねる。質疑応答では、全国約2万4000局の郵便局を地域の行政・生活支援サービスの拠点として活用する考えについて問われ、総務省の取り組みも踏まえながら、誰一人取り残されないデジタル社会の実現に取り組む考えを示した。このほか、日本学術会議の加藤和人会長らから表敬訪問を受けたことと、表形式データの機械可読性を点検・採点する機械可読性ルール適合チェックツール「Harunobu」について報告した。OASE+とエルゼビアによる転換契約への受け止めや、Excelで仕様書や設計書を作る慣行の見直しについても答えている。
郵便局を地域の行政・生活支援の拠点に
質疑応答では、郵便局関連の新聞を発行する記者から、デジタル社会が急速に進むなかで、高齢化によりデジタルについていけない層が増えているとの指摘があった。そのうえで、全国に約2万4000ある、人がいる郵便局を接点となる拠点として、さらに活用する考えはあるかとの質問が出た。古川大臣は、デジタル庁が「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。」をミッションに掲げていると答えた。デジタルに不慣れな人も含め、誰もがデジタルの恩恵を受けられるよう、さまざまな施策を進めているという。
Photo by uki_koto/ Adobe Stock
古川大臣によると、郵便局を地域の拠点として活用する取り組みは、今年決定された政府の重点政策の一つとして進めることとされている。具体的には、総務省が全国約2万4000局の郵便局ネットワークを活用し、自治体と連携したオンライン行政相談やオンライン手続きのサポートなどの実証事業を実施していると承知していると述べた。郵便局を地域の行政・生活支援サービスを一元的に提供する拠点として活用することが狙いである。古川大臣は、郵便局が遠隔医療の拠点などさまざまな形で活用されていると理解しているとも語った。そのうえで、総務省の取り組みも踏まえながら、誰一人取り残されないデジタル社会の実現に取り組んでいく考えを示した。
日本学術会議の加藤和人会長が表敬訪問
会見ではまず、10月30日に日本学術会議の加藤和人会長をはじめとする役員から表敬訪問を受けたことを報告した。日本学術会議は2026年10月1日に法人化し、会長に加藤氏が選任されている。
古川大臣は面会の冒頭、会長・副会長の就任を祝い、国民や社会の期待に応えて成果を上げることを期待していると伝えた。続いて、会長・副会長からそれぞれの研究分野に関わる話を聞き、意見を交わした。
加藤会長からは、AIについて新体制のもとですでに議論を始めているとの説明があった。加藤会長は「技術は社会のためにある」という考え方を踏まえ、長年の専門であるELSI(Ethical, Legal and Social Issues/倫理的・法的・社会的課題)の考え方が重要だと述べたという。ELSIとは、新しい科学技術に関わる倫理的・法的・社会的な課題を指す。古川大臣は、今後も日本学術会議としっかり意思疎通を図り、アカデミアの立場から助言や提案を受けていきたいと語った。
表データの機械可読性を採点
古川大臣は続いて、Excelなどの表形式データがコンピューターやAIにとって読みやすい形になっているかを自動で点検し、採点するツール「Harunobu」を紹介した。Harunobuはデジタル庁が開発し、公開している。古川大臣によると、表形式データはセルの結合や空白行など、人間には読みやすくてもコンピューターには扱いにくい形で作られることが少なくない。
HarunobuはExcel・CSV・TSVファイルを「行政データにおける機械可読性に関するルール」に照らして点検し、100点満点で採点する。ルールに適合しない箇所とその理由も示されるため、データのどこをどう直せばよいかがひと目でわかる仕組みだ。利用者自身のパソコン上で動くほか、大量のファイルを一括で点検したり、システムに組み込んだりすることもできる。
古川大臣は、AIの利活用を進めるうえでも、機械可読性が確保されたデータの整備が重要だと強調した。Harunobuは行政機関の職員に限らず民間の人も使えるツールで、GitHubで公開されている。古川大臣は、Harunobuでデータを使いやすい形に整えることで、データの利活用が一層進むことに期待を寄せた。なお、デジタル庁によると、ツールの実行にはPythonなどの環境構築が必要となる。
エルゼビアとの転換契約、交渉力強化へ
このほか質疑応答では、OASE+(Open Access for Scholarly Empowerment +)とエルゼビアによる転換契約について、受け止めを問われた。OASE+は政府から体制構築の支援を受け、大学等を主体とする集団交渉のために活動するチームである。2024年に発足したOASEの活動を引き継ぎ、大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)とOASEが共同で参画する体制をとっている。
OASE+は2026年9月2日付で、エルゼビアからの転換契約に係るコンソーシアム提案に合意した。提案期間は2027年から2029年までの3年間で、合意内容は10月26日付のプレスリリースで「次期Read and Publish契約」として公表された。Read and Publish契約は、研究機関が論文を読むために出版社へ支払う購読料と、論文をオープンアクセスで出版するための論文掲載料(APC)を、一つの契約にまとめたものだ。
古川大臣は今回の合意について、「喜ばしいことだと純粋に思っている」と述べた。長く大学に身を置いてきた立場から、シュプリンガーネイチャー、エルゼビア、ワイリーの大手3社の学術誌を読まなければ、世界の研究水準についていけない状況があったと振り返っている。そのうえで、研究者一人ひとりや一つの大学の力では到底無理であり、団体で交渉する形が取れるようになったと説明した。複数年にわたる合意によって値上げを一定の水準に抑えられたことを評価し、今後も体制を整えて交渉力を一層強めていきたいと意欲を見せた。
Excelの仕様書、人とAIの両面で対応を
続いて記者は、IT業界の悪弊としてExcelで仕様書や設計書を作る慣行が広がっていると指摘し、見直しの必要性について大臣の考えを尋ねた。古川大臣は、現場で仕様書がどのような形で作られているかはすぐには答えられないとしたうえで、データを機械可読な形にしておけばAIがそのまま読み込めるため、使いやすくなると述べた。一方で、書面の内容を人が確認する工程も欠かせないとして、人とAIの両面から対応が求められるのではないかとの見方を示した。
※政策動向・省庁会見の要点などを、毎日メールでまとめてお届けしています。▶無料メルマガ登録はこちら