【8月4日鈴木憲和農水大臣会見詳報】備蓄米と新米、販売時期重なった誤算 機動的放出目指す
農林水産省は2026年8月4日正午過ぎ、鈴木憲和農林水産大臣による定例記者会見を本省で開いた。大臣は冒頭、2026年上半期の農林水産物・食品の輸出実績を報告したほか、熊本地震への対応状況と、退任する幹部への謝意を述べた。質疑では、輸出5兆円目標の達成に向けた方策、太平洋クロマグロを巡る日本とメキシコの協議結果、そして政府備蓄米の販売終了に伴う需給への影響などについて質問が相次いだ。
輸出額、最高更新も伸び鈍化
農林水産省が同日発表したところによると、2026年1月から6月までの農林水産物・食品の輸出額は前年同期比10.9%増の8,977億円となり、上半期として2年連続の過去最高を更新した。米国や香港をはじめとする輸出先上位10カ国・地域はいずれも前年同期を上回り、首位の米国は15.3%増の1,626億円、2位の香港は3.0%増、3位の中国は4.3%増だった。
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品目別では抹茶ブームを背景に緑茶が220億円増の482億円となったほか、牛肉やりんご、米なども上半期として過去最高を記録した。鈴木大臣はこの結果を輸出に携わる事業者の努力によるものだと評価する一方、伸び率は前年同期の15.5%から鈍化しており、2030年に5兆円という目標の達成には抜本的な加速が欠かせないとの認識を示した。
目標達成に向けた具体策を問われた鈴木大臣は、残り5年間で年率24.1%の増加が必要になるとの見通しを示したうえで、4つの取り組みを挙げた。第一に、日系の店舗にとどまらず、現地資本のスーパーやレストランへの売り込みを強化すること。第二に、東南アジアやイスラム圏など開拓の余地が大きい市場への展開を進め、輸出先を多角化すること。第三に、現地で求められる量や価格帯、旺盛な需要に応じられるよう生産現場の供給力を高めること。特に緑茶は世界的な需要の高まりに供給が追いついていない状況にあるとし、優先的に対応する考えを示した。第四に、食品安全規制など非関税障壁の撤廃や緩和に向けた協議を前進させることである。大臣はこれらの施策を、輸出に取り組む事業者や関係省庁と一体となって進めていく考えを強調した。
熊本地震対応と幹部人事
気象庁によると、2026年7月28日に熊本県熊本地方を震源とする地震が発生し、マグニチュードは7.1、宇城市と八代郡氷川町で最大震度7を観測した。気象庁はこの地震を「令和8年熊本地震」と命名している。鈴木大臣は冒頭発言で、避難生活の長期化に伴い被災者ごとのニーズが変化していることを踏まえ、現地できめ細かな対応を続ける考えを示した。農林水産関係の被害については、農地や農業用施設の被害箇所が判明分だけで2,389カ所に上ることを明らかにし、水田をはじめ水を必要とする現場が多いことから、可能な限り応急的な水の手配を進める方針を述べた。
大臣はまた、7月31日の記者会見で発表した幹部人事にも触れた。2026年8月5日付で退任する渡邊毅農林水産事務次官(後任は長井俊彦氏)をはじめ、6日付で交代する渡邉洋一農林水産審議官(後任は坂勝浩氏)、小坂善太郎林野庁長官(後任は長崎屋圭太氏)、杉中淳輸出・国際局長(後任は山口潤一郎氏)ら、長年にわたり日本の農林水産業の発展に尽力してきた幹部への敬意を表した。
クロマグロ資源管理はメキシコが支持へ転換
太平洋クロマグロの資源管理を巡っては、2026年7月30日に山下雄平農林水産副大臣がメキシコを訪問し、ロペス農業・農村開発大臣、サルガド国家水産養殖委員長らと協議したことが報告された。長崎で開かれた全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)と中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の合同作業部会で関係国が取りまとめた調整案について、メキシコ側はこれまでの反対姿勢を転じ、支持する意向を示したという。鈴木大臣は、方針転換の背景にあるメキシコ側の事情については言及を控えたうえで、山下副大臣が強行日程を組んで現地に赴き、直接働きかけた成果だとの見方を示した。今後は合同作業部会の早期再開に向けて、関係国・地域との調整を急ぐ考えを述べた。
備蓄米、新米と販売時期重複の誤算
会見終盤には、政府備蓄米の販売・使用が7月に終了したことを受け、2025年産米の需給や価格への影響を問う質問が出た。鈴木大臣によると、2025年3月から売り渡しを始めた主食用の備蓄米計59万トンは、契約手続きに時間を要したことなどから、当初の想定であった2025年8月末までに販売を終えられず、令和7年産米が出回り始めた9月以降も店頭に並び続けた。この結果、民間の在庫量や店頭価格に一定の影響があったことは否定しないとしつつ、銘柄米やブレンド米、随意契約による備蓄米など価格帯の異なる複数の商品が並んだことで、消費者の選択肢が広がった側面もあると説明した。
随意契約分28万トンについては、2025年5月下旬から小売事業者向けに売り渡しを始め、2026年3月までに引き渡しを完了したものの、実際に販売や使用が終わったのは2026年7月中旬だったことも明らかにした。長期化の要因として、買受者の要件確認や契約手続き、配送手配に想定以上の時間を要したこと、備蓄倉庫が米の主産地である東北や北陸に偏って立地しており消費地への輸送に時間がかかったこと、出庫前の品質確認(メッシュチェック)に時間を要したことを挙げた。加えて、小売事業者への聞き取りでは、需給状況に応じて販売ペースが想定より遅れたことや、備蓄米と令和7年産米をブレンドして販売したことで時間がかかったとの声もあったという。
こうした課題を踏まえ、農林水産省は2026年7月8日に成立した改正食糧法(主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律)に基づき、民間事業者にも計20万トン程度の備蓄を求める民間備蓄制度を新設したほか、売り渡し方法や倉庫の地域的な偏りを見直すため、保管・管理を委託する民間事業者との意見交換を継続しているとし、今後は備蓄米をより機動的に放出できる体制の構築を進めるとした。
今回の会見では、輸出額が過去最高を更新する一方で伸び率の鈍化という課題も浮かび上がり、5兆円目標の実現には輸出先の多角化や供給力強化など複数の施策を同時に進める必要があることが改めて示された。また、備蓄米の販売長期化が新米の流通時期と重なった経緯は需給調整の難しさを浮き彫りにしており、新設された民間備蓄制度や倉庫配置の見直しが実効性を持つかどうかが注目される。熊本地震への対応や幹部人事の刷新も重なるなか、輸出拡大と食料の安定供給を両立させる農林水産省のかじ取りが注目される。
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