【6月9日赤澤亮正経済産業大臣会見】ナフサ論争に「全体量は足りている」と真っ向反論
赤澤亮正経済産業大臣が2026年6月9日の記者会見で、原子力発電所の建て替え見通しとナフサ(粗製ガソリン)をめぐる流通目詰まりの二つの重要課題について方針を語った。原子力では2040年代に最大5基の建て替えが必要との試算を示した改定指針を説明し、ナフサについては「国全体として必要量は確保できている」との立場を重ねて強調した。
原発建て替え、事故後初の数値目標 2040年代2〜5基、2050年代には累計11〜14基
記者からの質問に答える形で、赤澤大臣は同月5日に総合資源エネルギー調査会原子力小委員会(第49回会合)において経済産業省が示した「今後の原子力政策の方向性と行動指針」改定案への考えを明らかにした。
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改定案の核心は、将来の供給力不足に対応するための具体的な数値目標だ。一定の前提条件のもとで供給不足が生じる場合、2040年代には約220万キロワットから約550万キロワット(2基から5基相当)、2050年代には2040年代分を含め約1270万キロワットから約1600万キロワット(11基から14基相当)の設備容量の建て替えが必要になるとの試算を提示している。東京電力福島第一原子力発電所の事故後、政府が具体的な建て替えの基数目標を示すのは初めてとなる。
赤澤大臣はこの見通しを示す意義を「原子力のサプライチェーンと人材の維持・強化」と位置付けた。既存の原子力発電所が2040年代以降に供給力を大幅に失っていく中で、エネルギー安全保障への寄与度が高く脱炭素効果の大きい原子力を長期的に活用するためには、あらかじめ将来の可能性を示しておく必要があるとした。
安全性の確保と立地地域の理解が大前提であることを繰り返し強調したうえで、高い独立性を有する原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合に建て替えを行う方針を改めて示した。最終処分などの課題についても「国が前面に立って関係者の理解を得られるよう取り組む」とした。
「全体量は足りている」 ナフサ目詰まり論争に真っ向反論
記者から、ナフサの流通目詰まり解消策として「ナフサクラッキング設備(原油から分解してエチレン等の基礎化学品を製造する設備)の稼働率を上げ、川上から豊富に流してやれば川中・川下も支えられる」との主張が提示されると、赤澤大臣は正面からこれを否定した。
「全く当たっていないご指摘だ」と述べたうえで、二つの構造的な問題を指摘した。第一に、需要側の問題だ。仮に国内に必要な量のナフサが存在していたとしても、市場参加者が不安に駆られて通常の数倍の量を発注すれば、供給は絶対に回らなくなると話した。
第二に、供給側の物理的な制約だ。原油を精製した際に生産されるナフサの割合は約10パーセントで、ガソリンが約29パーセント、軽油が約24パーセントと、各製品の比率はほぼ固定されている。ナフサだけを大幅に増産しようとすれば、同時にガソリンや軽油も増産されるが、それらを貯める備蓄タンクが国内に存在しないと大臣は説明した。「増産して上から流せばいい、というのはそういうことを全部すっ飛ばした議論だ」と語った。
実際に流通段階で何が起きているかについても、具体的な事例を挙げた。シンナーメーカーがトルエン等の原料供給元から「4月は例年通り、5月は未定」と通知を受けた途端、主要顧客向けの在庫を確保しようと4月分の供給量を半分に絞った結果、下流の事業者が大混乱に陥った事例を紹介した。また、大臣に直接「接着剤をいつもの10倍頼んだ」と告げた事業者が出ている状況も明かした。
赤澤大臣はこうした行動を「商売上の合理的な判断であり、非難する意図はない」としつつも、こうした個々の行動が積み重なると全体の流通が機能しなくなると説明した。そのうえで「量が足りている」という情報発信を続けることこそが、不安の連鎖を防ぐための責任ある行動だと述べた。
稼働率最低の原因は「定期修理の集中」 夏に向けて回復の見通し
同じ記者からナフサクラッキング設備の稼働率が2026年3月・4月に1996年の統計開始以来最低水準となった理由を問われると、赤澤大臣は「定期修理の集中が最大の原因だ」と答えた。定期修理中の設備を含めた稼働率は例年と比べて低下しているものの、夏に向けて回復していく見通しだとした。
ナフサの調達全体については、通常の精製を継続しつつ、川中在庫の取り崩しと輸入増加の二つの手段で対応してきたと説明した。大臣は「川中在庫は1.8か月分あったものが0.1か月分に減っただけ」と述べ、調達が概ね順調に進んでいるとの認識を示した。
関連業界への安定供給要請を継続 8業界団体から前向きな供給見通し
経産省はこれまでも関係業界に対して段階的に安定供給を要請してきた経緯がある。3月26日には赤澤大臣が石油連盟、全国石油商業組合連合会、石油化学工業協会、日本貿易会の代表者と会談し、安定供給を要請した。3月30日付では石油関連製品事業者に対して、4月3日付と4月13日付では溶剤等関係事業者に対して、それぞれ要請を行った。要請の内容は「原料調達に課題が生じた場合は即座に生産を抑制せず、速やかに経済産業省や関係事業者に相談すること」を求めるものだった。
こうした取り組みの結果として、5月末にはシンナーや塗料、印刷インキ、塩ビ管など8つの業界団体から、供給量が安定的に増加しており今後も継続的な供給が見込めるとの情報が発信された。赤澤大臣は「引き続き関係業界と連携しつつ、供給の偏りや流通の目詰まり解消に全力で取り組む」と締めくくった。