2014年10月号

「場」の共創にビジネスチャンス 2020年の都市デザイン

馳浩衆議院議員に聞く 東京オリンピックのイノベーション分野

馳浩(衆議院議員)

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東京オリンピック・パラリンピックを契機に、インフラやサービス、ICTなどさまざまな側面でイノベーションが起こり、都市の姿は大きく変わるだろう。ビジネスチャンスはどこにあるか。自民党・馳浩衆議院議員に聞いた。

馳浩議員は、自民党2020年オリンピック・パラリンピック東京大会実施本部・本部長を務めている。政治経済評論家(元衆議院議員)の谷本龍哉氏と、事業構想大学院大学の岸波宗洋准教授がインタビューした。

イノベーションの宝庫として

馳 浩 衆議院議員 自民党2020年五輪東京大会実施本部長

岸波 あらゆる分野の日本企業がオリンピック・パラリンピックイヤーに向けて、新技術や新商品の開発を進めていますが、馳先生が特に注目されているイノベーション分野は何でしょうか。

馳 一つは、犯罪・テロ対策としての警備産業です。警察官や民間警備員といった人的警備はもちろん、入国から移動、会場への入場までの人・モノ・車両の動きをITによって一元管理することが求められます。かつてセコムが1964年の東京五輪を契機に警備をビジネスとして確立したように、ITを活用した機械警備も飛躍する可能性が高いとみています。日本にはどんな小さな町にも交番があり、警察官が常駐している。そうした日本独自の「おもてなし」を、ITの活用によってさらに進化させ、世界に広く知っていただきたいと思います。

もう一つは、暑さ対策。開催時期(7月下旬から8月上旬)を鑑みると、暑さをやわらげる素材や器具の開発もビジネスチャンスにつながるのではないでしょうか。すでに、企業から新素材の売り込みも受けています。

東京五輪を偉大な万国博覧会と捉え、日本の本質や技術をアピールしていきたいですね。

岸波 自民党IT戦略特命委員長の平井卓也議員も、東京五輪を先端ITのショーケースにする、と仰っていました。

馳 私も副委員長として参加するIT戦略特命委員会は、6月に提言書「デジタル・ニッポン2014」をまとめました。2020年をターゲットとしたICTイノベーションの具体例や政策について整理したもので、東京五輪についても入国や観戦、交通、医療などの場面ごとにICTの利用案を表記しています。例えば観光客に「スーパーID」を発行し、会場への入場や決済、通信アクセス、セキュリティなどをスマートフォンなどで一元管理することも可能でしょう。

障がい者スポーツの可能性日本の技術力を生かせ

東京五輪を契機に新しいインフラやICTサービスなどが創造され、都市の姿は大きく変わるだろう photo by t-mizo

岸波 もう一つ、世界にパラリンピックをどう発信するか。この辺りも東京五輪のポイントになりそうですね。

馳 東京でのパラリンピック開催は2020年が2回目で、同一都市での開催は史上初です。これを機会に、東京という都市のバリアフリー化・ユニバーサルデザイン化が進み、差別のない社会というメッセージが発信したいと考えています。ユニバーサルデザインをコンセプトにした街づくりを進める上で、障がい者の方がスポーツを楽しめる場所が少ないことも問題です。解決策として考えられるのは、公共体育館や特別支援学校、養護学校などを障がい者スポーツの拠点にすること。特に学校については、指導者の人材育成などを文部科学省と一体で取り組むべきでしょう。

谷本 パラリンピックでゴルフが正式種目に選ばれないのは、車いすで入れる芝生がないといった施設や設備上の問題があるのかもしれません。

馳 場の提供に加え、競技用機器の開発も同時に進めていただきたい。たとえば、軽さと強さを併せ持つ炭素繊維は、車いすや義足などの新規分野に活用が広がっています。こうした新素材の開発は日本の製造業の得意分野であり、世界のスタンダードになる力を持っている。競技用に開発された技術が福祉用器具に応用されれば、パラリンピックは障がい者スポーツにとってこれまで以上に大きな意味を持つでしょう。

プロジェクションマッピングで日本全体が会場に

プロジェクションマッピングなどを活用すれば、日本全国が会場になる photo by Carl Milner

谷本 19.2兆円の経済効果とも言われる東京五輪ですが、その恩恵が地方経済に届かないのではと、懸念する自治体も少なくないようです。

馳 ポイントは「一体感」。つまり、「東京五輪は日本の五輪だ」という共通認識を持つことです。たとえば、建物や壁面に映像を投影するプロジェクションマッピングを使って、会場にいなくてもリアルタイムで臨場感のある試合が楽しめれば、その映像を見ることが一つのイベントになり、商店街の活性化にもつながる。テクノロジーを駆使することで、地域のみんなで参加し、体験する五輪に変えることができるわけです。

岸波 確かに、プレゼンテーションビジネスの観点から五輪を捉え、イベント性を付加し、地域活性化を推進することは重要ですね。

馳 私は東京五輪にあわせて「日本遺産」を提言しています。ストーリー性のある祭りや文化、食などを1都道府県1つ以上認定し、これを五輪と合体したイベントにするというものです。特に五輪は、和食文化を世界に発信する絶好の機会でもあり、これはあらゆる地域に可能性がある。例えば蕎麦や寿司を改良した“和食ファストフード”を仕掛けるといった、さまざまなアイデアが考えられます。

また、自分の町を直前練習や合宿地としてチームを誘致することも重要です。選手たちを間近で応援しながら本番を迎えることで、サポートした体験が思い出になる。オリンピックで28競技、パラリンピックで22競技。これに、170カ国以上の参加国を掛ければ、日本全国がどこかのチームの合宿地になるチャンスがあるのです。

岸波 オリンピックをどう活かすかは、自治体や地方企業の取り組み方次第と言えそうですね。

馳 教育者でもある私が常々思うのは、子どもたちに知識や知恵を与えることは簡単ですが、体験や感動は思い出がなければ与えられないということです。次世代を担う子どもたちを育てるためにも、さまざまな体験をしてほしいというのが私の願いです。

アスリートファーストを先端技術で実現

谷本 改めて、東京五輪が目指す大会の姿を教えて下さい。

馳 一言でいえば、「アスリートファースト(選手第一)」です。八百長やドーピングといった不正防止や防犯対策も含め、オリンピック・パラリンピックはアスリートが安心して競技に臨める舞台でなければなりません。二度目の東京五輪を契機に、「五輪は選手のためのもの」という原点に立ち返ることで、選手は最高のパフォーマンスが発揮できるようになり、本当のドラマが生まれるのです。

そうした舞台づくりをサポートできるのは、日本のイノベーション力に他なりません。オリンピックとパラリンピックの融合も大きなテーマです。オリンピックには価値観外交といった側面もある。障害者や高齢者の参加を通じて多様な価値観を共有し、その価値観を次世代につなぎたい。そんな思いでいます。

岸波 最後に、事業構想家にメッセージをお願いします。

馳 東京五輪をビジネスとしてとらえると、とかく物質的なものに目が行きがちですが、日本の文化や伝統、日本人特有の感性や人生観といった目に見えないものにも着目していただきたい。つまり、事業構想の根底には教養が必要なのだと思います。たとえば、百人一首には人生観や季節感を詠んだ歌が多くあり、日常に当たり前に存在するものを、「これがなかったらどうなるのか」と反芻する機会を与えてくれます。ビジネスでも同じように、「世の中にこれがなかったらどうなるのか」と自らに問いかけることで、社会にとって必要なものが見えてくるのではないでしょうか。

左から、事業構想大学院大学・岸波宗洋准教授、馳浩衆議院議員、政治経済評論家・谷本龍哉氏(元衆議院議員)

馳 浩(はせ ひろし)
衆議院議員
自民党2020年五輪東京大会実施本部長

 

事業構想大学院大学 事業構想研究所

「2020ビジネスイノベーション~オリンピックイヤーの事業構想プロジェクト研究」
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事業構想大学院大学付属研究機関である事業構想研究所では、自民党・IT戦略特命委員会の標榜するデジタル・ニッポン2014の事業構想を支援する「プロジェクト研究」を発足します。参画する自治体・企業の方々を研究員としてお招きし、IT戦略特命委員会・委員長である平井卓也衆議院議員、政治経済評論家谷本龍哉氏、本学教授、一流のゲスト講師が事業構想に取り組んでいきます。「プロジェクト研究」のご案内を希望する皆様には、無料で資料をお送りいたしますので、以下のお問い合わせ先まで、電話、メール、FAXにてご連絡ください。

  1. 事業構想大学院大学 事業構想研究所(担当者:岸波)宛
  2. 電話番号:03-3478-8401
  3. FAX番号:03-3478-8410
  4. メールアドレス:jken@mpd.ac.jp
  5. メールまたはFAXで資料のご請求をされる場合、以下の内容を記入してお送りください。
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