【6月22日 鈴木憲和農林水産大臣会見】肥料・輸出・品種流出、農業の三大課題に突破口狙う

農林水産省の鈴木憲和農林水産大臣は2026年6月22日に行った記者会見で、6月18日から21日にかけて実施したモロッコ・フランス出張の結果と、同日午後に農林水産省地下のあふ食堂で開催する新規食品の試食会について報告した。国際情勢が不安定さを増す中、食料・経済安全保障の強化と農林水産物・食品の輸出拡大という二つの課題に対して、どう国際連携を築くかを直接交渉で確かめてきた出張となった。

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肥料の命綱、モロッコから供給の約束取り付け

出張の中核をなしたのが、モロッコ王立りん鉱石公社のムスタファ・テラブ会長との会談だ。農業生産に欠かせない肥料原料であるりん安(りん酸アンモニウム)の安定供給について意見交換を行い、日本の需要を満たす供給に向けて努力するという約束をテラブ会長から得た。会談後には同公社がジョルフ・ラスファールに保有するりん鉱石加工場の視察も行い、生産現場の実態を直接確認した。

中東情勢の不安定化を背景に、来年以降の調達見通しに不透明感が増している。鈴木大臣は会見の中で、こうした状況を踏まえながら様々な需要増に対してもしっかりと安定供給を求めたと説明した。また、食料生産の安定化に向けてG7でも議論していることに触れ、モロッコとの連携のあり方についても意見を交わしたと述べた。

アフメド・エル・ブアリ農業・海洋漁業・地方開発・水資源・森林大臣との会談では、りん安の安定供給に向けた両国の連携強化を確認したほか、園芸博覧会への出席依頼や植物工場などの分野における二国間の協力についても意見交換を行った。

現地スーパーの幹部に直談判、日本食の棚広げる

フランス訪問では、現地系大手スーパーマーケットの幹部や寿司製造事業者、日本食品卸事業者との意見交換を実施した。寿司などへの日本産米の利用や、日本産農林水産物・食品の取り扱い拡大について積極的に要請した。あわせて現地系大手スーパーマーケットが開催した日本食・日本産米のイベントにも出席している。

鈴木大臣は会見で、2030年に農林水産物・食品の輸出額5兆円という目標の達成に向け、引き続き日本産食品の市場開拓に精力的に取り組むと述べた。

品種流出は「深刻な問題」、育成者権管理機関を8月中に設立

会見では記者から、愛媛県の中村時広知事から申し入れを受けた新品種みかんの流出問題についての質問が出た。鈴木大臣は、愛媛果試第48号(商標名:紅プリンセス)が中国に無断流出した疑いがあり、現在中国で品種登録申請が行われている状況だと説明した。シャインマスカットの流出事例では許諾料換算で年間約200億円弱の損失が生じているとして、今回の事案も深刻に受け止めているとした。

農林水産省としては、愛媛県が中国の法律に基づいて証拠収集や警告状の送付・訴訟などを行う場合に必要な支援を適切に実施する方針を示した。さらに、語学や法令の専門知識の確保が育成者権者にとって大きな負担となっている実情を踏まえ、育成者権者に代わって日本の優良品種の海外での無断栽培を抑止しつつ、ライセンスを通じた海外収益化を支援する育成者権管理機関を、遅くとも8月中までに立ち上げると表明した。

在庫削減に参加しない生産者、制度の網を広げる議論へ

酪農関係の質疑では、新型コロナウイルス感染症拡大以降の需要減に伴う脱脂粉乳の在庫増加問題が取り上げられた。大臣は、全国の生乳生産者や乳業者が資金を拠出して取り組んできた在庫低減対策に参加せずに恩恵だけを受けているケースがあるという構造的な課題を認めた上で、令和7年度(2025年度)から主な補助事業の要件としてクロス・コンプライアンスを導入し、不公平感の抑制を図ってきたと説明した。現行の「畜産経営の安定に関する法律」に基づいて交付する加工原料乳生産者補給金へのクロス・コンプライアンス適用については、自民党内での議論や現場の声を踏まえながら対応策を検討すると述べた。

輸入停止の撤廃を求めつつ、南米市場の開拓も視野に

韓国のTPP(環太平洋パートナーシップ協定)加盟申請をめぐっては、具体的な影響についての言及は差し控えつつも、日本産農林水産物・食品に対する輸入停止措置の撤廃に向けて引き続きあらゆるルートから働きかけを続けると述べた。

メルコスールとの経済連携協定(EPA)交渉については、約3億人の人口と約3兆ドルの経済規模を持つ有望な市場と位置づけ、日本の農林水産物・食品の輸出促進につながる交渉姿勢で臨むと述べた。一方で、畜産業を中心に国内生産者の間に懸念が根強いことも認識しており、重要5品目をはじめとした農林水産物のセンシティビティに十分配慮した上で対応するとの方針を改めて示した。

未来の食卓を試食する、各国大使館関係者も参加

記者会見では、同日15時30分から農林水産省地下のあふ食堂で開催する新規食品の試食会についても発表があった。日本成長戦略会議の下、17の戦略分野の一つであるフードテックに関するワーキンググループ(座長:鈴木憲和農林水産大臣)が、国内外の市場獲得に向けた施策を検討してきた成果の一端として位置づけられる。非動物由来のたんぱく食品や機能性・栄養に優れた食品など多様な原材料から作られた製品を出展事業者が提供し、需要拡大の可能性を探る。各国大使館の関係者も招待した。