【2026年7月10日 鈴木憲和農林水産大臣会見】スーパー米価3554円、改正食糧法と備蓄米買い戻しが左右する今後の値動き

農林水産省は2026年7月10日、地理的表示(GI)保護制度に「日本茶」、静岡県の「浜名湖うなぎ」、石川県の「加賀れんこん」の3産品を新たに登録した。同日開かれた鈴木憲和農林水産大臣の定例記者会見では、このGI登録に続き、8日に成立した改正食糧法の運用方針、農業法人の倒産件数が過去最多を更新したことへの見解、太平洋クロマグロの資源管理をめぐる国際交渉の状況、そして政府備蓄米の買い戻しに関する判断基準が相次いで取り上げられ、コメの需給と価格の安定に直結する論点が並んだ。

「日本茶」全国単位でGIに

地理的表示(GI)保護制度は、地域固有の自然環境や伝統によって育まれた品質や評価を持つ農林水産物・食品の名称を、知的財産として保護する仕組みである。今回の登録によって、国内のGI登録産品は170産品となった。

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このうち「日本茶」は、特定の産地を指定せず日本国全体を対象とする、農林水産物としては初めてのGI登録となる。産地を限定しないGI登録は、国税庁が所管する「日本酒」に続き2例目にあたる。申請したのは公益社団法人日本茶業中央会(東京都港区)で、2025年10月27日に申請書を提出していた。

会見で鈴木大臣は、世界的な抹茶ブームを背景に緑茶の輸出額が2019年以降過去最高を更新し続けている点を挙げ、GI登録によって日本茶全体のブランド力を高め、他国産との違いを明確にするとともに、模倣品対策を強化する狙いを説明した。同日には登録証の授与式も開かれている。

「需要に応じた生産」を明記

コメの需給と価格の安定を目的とする「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律」(通称・改正食糧法)は、2026年7月8日、参議院本会議で可決・成立した。米の需要減少を前提としてきた生産調整方針を廃止し、生産者が需要に応じたコメ生産に主体的に取り組むことを明記したのが柱である。石破茂前政権が主導した増産方針を転換し、過剰生産を抑制することで価格の安定を図る狙いがある。

施行は段階を分けて進む。加工・中食・外食事業者などの流通実態を把握するための届け出事業者の拡大・定期報告の義務化と、需要に応じた生産の促進策は、いずれも公布後1年以内に施行する。備蓄制度の見直しは公布後2年以内に施行し、今年度は民間事業者に一定量の米穀保有を義務付ける「民間備蓄」の実証事業を進める。民間備蓄では、国内の適正備蓄量100万トンのうち20万トン程度を集荷・卸売事業者などに担ってもらう想定である。

会見で鈴木大臣は、2027年度以降の水田政策における支援単価や要件について、生産現場や与野党からの意見を踏まえ、予算編成の過程でできるだけ早く具体化させたいとの考えを示した。法律の成立を受け、今後はコメの需給安定を通じた価格の安定と、主食の安定供給の実現に向けた実務が課題になる。なお、スーパーのコメ平均価格(5キロ税込み)は2026年7月3日時点で3554円となり、2週ぶりに値下がりしている。米価の動向は、今回の法改正の運用や、後述する備蓄米の扱いを判断する上でも重要な指標となる。

農業法人の倒産、30年で最多の51件に

会見ではこのほか、農業分野の経営環境に関する質問も出た。株式会社東京商工リサーチ(TSR)の調査によると、2026年上半期(1~6月)の農業法人の倒産は51件(前年同期比8.5%増)となり、1997年以降の30年間で初めて50件を超えた。2021年の20件から5年連続で増加しており、倒産形態はすべて消滅型で、破産が46件と全体の9割を占める。

業種別では、施設園芸を含む野菜作農業が22件(前年同期比10.0%増)と最多で、養豚業と園芸サービス業がそれぞれ6件で続いた。会見で鈴木大臣は、大規模な設備投資を行ったものの販売が計画通りに伸びなかったことや、猛暑による生産量の減少、資材・飼料価格の高騰が資金繰りを圧迫していると分析した。設備投資で多額の負債を抱える事業者ほど追加の借り入れが難しく、行き詰まるケースが目立つという。

農林水産省は、施設園芸等の燃料価格高騰対策や農林漁業セーフティネット資金による支援に加え、食料システム法に基づく合理的なコストを考慮した価格形成の取り組みを通じて、農業経営を下支えする方針である。

太平洋クロマグロ、大型魚の漁獲枠拡大へ交渉続く

続いて話題になったのは、太平洋クロマグロの資源管理である。中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)関連の国際会議が、2026年7月8日から長崎市の出島メッセ長崎で開かれている。会議は2026年7月14日まで続き、日本や米国、韓国、台湾など12の国・地域が参加している。

太平洋クロマグロの資源量は近年回復が進み、一部の海域では既存の漁獲枠を早期に使い切って操業を停止する事態も生じている。こうした状況を踏まえ、日本政府は30キロ以上の大型魚の漁獲枠を現行の1万1869トンから1万4836トン程度へ、実質25%拡大する一方、小型魚の枠を5125トンから4823トン程度へ縮小する調整案を軸に交渉を進める方針である。ただし、資源保護の観点から枠拡大に慎重な国もあり、全会一致を原則とする会議で合意できるかは見通せていない。

会見で鈴木大臣は、資源の増加傾向を踏まえて大型魚の漁獲枠拡大を目指し、関係国との調整を主導すると説明した。一方、漁獲枠が拡大した場合の消費者への価格影響については、水産物の市場価格が需給など複数の要因で変動するため、現時点で見通しを示すのは難しいとの考えを述べた。

備蓄米の買い戻し、判断基準を改めて説明

一部の報道では、鈴木大臣が2026年6月に官邸側へ政府備蓄米の買い戻しを打診したものの、物価高対策に逆行する可能性を理由に難色を示されたと伝えられている。会見でこの点を問われた鈴木大臣は、施策の検討過程について一つひとつコメントすることは控えると述べ、事実関係への言及を避けた。

政府は2025年、コメの価格高騰や供給不足への対応として、入札と随意契約により合わせて59万トンの備蓄米を放出した経緯があり、この放出分をいつ買い戻すかが焦点となっている。鈴木大臣は、主食用米の販売動向や民間在庫の状況、非主食用米を扱う事業者の原料米需要、各産地の作付意向といった複数のデータを踏まえ、米穀の基本指針に沿って今後の需給状況を見定めた上で判断する考えを示した。あわせて、食料安全保障上必要とされる備蓄水準100万トンの回復を目指す方針に変わりはないと強調した。