【2026年7月31日 鈴木憲和農水大臣会見詳報】米価は意識せず、備蓄回復を優先
農林水産省は2026年7月31日午前、鈴木憲和農林水産大臣による定例記者会見を本省で開いた。大臣は冒頭、7月28日に発生した「令和8年熊本地震」への対応状況、幹部人事の刷新、そして新設した外来害虫対策本部について報告した。会見後半の質疑では、食料品の消費税減税や太平洋クロマグロを巡る国際交渉、政府備蓄米の買い戻し時期などに質問が相次いだ。
震度7の爪痕、農地被害への即応急ぐ
気象庁によると、地震は2026年7月28日16時27分ごろ、熊本県熊本地方を震源として発生した。マグニチュードは7.1で、宇城市と八代郡氷川町で最大震度7を観測し、気象庁はこの地震を「令和8年熊本地震」と命名した。鈴木大臣は会見の冒頭、犠牲者への哀悼の意と被災者への見舞いを述べたうえで、発災直後から総理の指示を踏まえ、農林水産省を挙げて被災地支援に取り組んできたと説明した。
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まず食料支援では、パン3万個をすでに避難所へ配送し、水やスポーツドリンク計3万2000本の配送も終えた。7月31日中には水2万6000本とお茶約1万本が物流拠点に到着する見込みで、現地の要請を受けた水14万本、スポーツドリンク3万5000本の追加発送に向けた準備も進めている。さらに、カップ麺2万食やレトルト米約1万食、乳児用液体ミルク900本、栄養バランスに配慮したカップご飯約1万食についても、速やかに発送できる体制を整えたという。
一方で、農林水産関係の被害も明らかになりつつある。日本なしの落果などの農作物被害、農業用ハウスの倒壊、カントリーエレベーターの破損、農地の亀裂、農業用水路の損傷が確認された。被害調査への支援要望を受け、熊本県庁と農林水産省の職員による調査班を現地に送り、体制を19人まで拡大して調査を進めている。防災重点農業用ため池674か所と農業用ダム75か所については99%の点検を終え、大規模な被害は確認されていない一方、堤体の損傷など重大な被害が57か所で見つかっており、応急対応を急いでいる。林業では県内の林道32か所が損壊し、水産業では県内漁港の初動点検が完了、約3割にあたる26漁港で防波堤や岸壁の傾きなどの被害が確認された。政府の現地対策本部には農林水産省本省から幹部を含む職員3名を派遣し、県や市町村へは7月30日までに延べ97名を送り込んだ。
事務次官交代へ、幹部人事を刷新
震災対応の報告に続き、鈴木大臣は幹部人事の交代を発表した。渡邊毅農林水産事務次官が2026年8月5日付で退任し、6日付で長井俊彦畜産局長が後任に就く。長井氏が空ける畜産局長には谷村栄二林野庁次長を充てる。農林水産審議官も渡邉洋一氏から坂勝浩消費・安全局長に交代し、坂氏の後任の消費・安全局長には大島英彦大臣官房検査・監察部長が就く。林野庁長官は小坂善太郎氏に代わって長崎屋圭太国有林野部長が昇格し、輸出・国際局長は杉中淳氏から山口潤一郎農産局農産政策部長へと交代する。いずれも2026年8月6日付での発令となる。
クビアカツヤカミキリに全国対策本部
人事の発表に続き、鈴木大臣は新たな害虫対策にも触れた。サクラやウメ、モモなどを加害する特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」は、2026年7月時点で20都府県での発生が確認されており、被害は農地や森林にとどまらず、公園や街路樹、学校にまで及んでいるという。こうした事態を受け、農林水産省と環境省は同日、石原宏高環境大臣と鈴木大臣を本部長とする「クビアカツヤカミキリ対策本部」を設置した。全国知事会、全国市長会、全国町村会も構成員に加わり、地域住民への効果的な周知、現場のニーズを踏まえた防除、より効果的な防除方法の研究開発の推進などを、関係省庁と地方自治体が連携して議論していく。
消費減税、農業者支援の行方注視
質疑では、食料品への消費税減税に関する質問が集中した。高市早苗首相は7月30日、2027年4月から2年間、食料品の消費税率を現在の8%から1%へ引き下げる方針を表明し、8月上旬までに党内の議論をまとめるよう自民党に指示した。鈴木大臣はこの動向を注視する考えを示し、7月29日の社会保障国民会議の中間とりまとめに触れながら、仕入れ税額控除の恩恵を受けにくい農業従事者への対応や、外食産業を含めた資金繰り支援に向けた予算措置の検討が盛り込まれていると説明した。支援内容の具体化は2027年度からの実施を見据え、関係省庁が事業者の実情を確認しながら進めるとし、党内議論の行方を見つつ省内での検討も深める考えを述べた。熊本地震で被害が出た梨農家への支援については、まず被害状況の把握を急ぎ、既存の施策も含めた経営支援のあり方を検討すると答えた。
クロマグロ協議とコメ備蓄の判断
太平洋クロマグロを巡っては、山下雄平農林水産副大臣が7月30日にメキシコを訪れ、ロペス農業・農村開発大臣、サルガド国家水産養殖委員長らと協議した。日本側は資源管理の重要性と、資源状況に応じた適切な漁獲枠設定の必要性を伝え、7月上旬に長崎市で開かれた全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)・中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)北小委員会の合同作業部会でまとめた調整案への理解を求めた。鈴木大臣は、メキシコ側から前向きな反応があったことを明らかにし、早期の協議再開に向けて全力を尽くす方針を示した。
質疑の最後には、政府備蓄米の買い戻し時期についても質問が及んだ。鈴木大臣はかねて、適正水準とされる100万トンに対し、足元の備蓄量が32万トンにとどまっていることを明らかにしており、31日の会見でも適正水準への回復を進める必要があると強調した。そのうえで、供給不足が生じる見込みが低いことを見極める点も重要だと述べ、8月末ごろに判明するとみられる2026年産米の作柄を踏まえ、市場価格への影響に配慮しながら買い戻しの量と時期を判断する考えを重ねて示した。米価の動向を意識した判断ではないとも付け加えた。
今回の会見では、熊本地震への緊急対応と幹部人事の刷新、そして新設の害虫対策本部という性格の異なる案件が同時に動き出した点が印象的だ。被災地の生活と生産基盤の復旧、外来種による農業・森林被害の拡大防止、消費税減税に伴う農業者・外食業者への影響緩和という3つの課題は、いずれも予算編成や党内議論の進展に左右される。新体制に移る農林水産省がこれらをどう調整していくか、次回以降の会見でも焦点になりそうだ。
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