持続可能な開発は「地方のプロセス」 4つの目標と実践の道筋

環境問題への対応のなかで醸成されてきた「持続可能な開発」という概念。地球規模の課題解決を地域で実践するために、イクレイは「持続可能な開発は"地方のプロセス"である」として4つの目標と、辿るべき発展的道筋を掲げる。SDGs達成に向け、自治体の果たす役割は大きい。

世界に発信される自治体の声・
イクレイの特徴

1970年代以降、地球環境問題、特に公害問題の深刻化を契機に、環境問題に関する国際的なルールづくりが進むとともに、国際的な合意を着実に履行していくアクターとして、人々の生活と密接にかかわる自治体の重要性が注目され、国際的な対話の場においても自治体の声を積極的に取り入れる流れが生まれたことは第1回でご紹介しました。こうした潮流の中、国際的な環境問題を取り上げる自治体協議会として発足したのがICLEI(イクレイ)International Council for Local Environmental Initiatives(国際環境自治体協議会)です。

ここで、イクレイの特徴について触れておきたいと思います。イクレイは会員となる自治体によって構成される議会制民主主義を取る組織です。3年に一度、選挙を通じて会員自治体から地域理事が選任されます。世界は9つの地域に分かれており、地域理事はそれぞれの地域の会員を代表します。地域理事はイクレイ議会の構成員となり、議会は最高意思決定機関および監督機関として、世界理事の選出やイクレイ憲章の改定、6年ごとに改定される戦略計画の承認などの権限を有しています。世界理事は全世界の会員を代表し、その中から会長が選ばれます。地域・世界理事の任期は3年で、イクレイの世界大会に合わせて選挙が行われます。こうしたイクレイの公正なガバナンス体制は、国連など国際的な議論の場においてイクレイの発言が自治体を正式に代表する声として認識されている所以の一つになっています。

環境問題と持続可能な開発

近年日本でも広く知られるようになった「持続可能な開発」という概念は、1987年に取りまとめられたブルントラント委員会報告書で提唱されたもので、「地球環境や自然環境が適切に保全され、将来の世代が必要とするものを損なうことなく、現在の世代の要求を満たすような開発が行われている社会」と定義されています。環境問題の解決を考えるうえで「持続可能な開発」という一つの軸が生まれ、環境分野単独の取り組みではなく、社会・経済を包括した総合的な取り組みが必要であるとの認識が広がり始めました。そして、1992年に開催された地球サミットでは、この「持続可能な開発」を実現させるための行動計画として「アジェンダ21」が採択されました。

「アジェンダ21」では、取り組むべき課題とその解決策の多くが地域的な活動に深く関わっていることから、行動計画の実現には地方公共団体の参加と協力が重要との認識の下、自治体レベルの行動計画「ローカルアジェンダ21」の策定が提案されました。これを受けてイクレイは、自治体が「ローカルアジェンダ21」を策定する際のガイドラインづくりや、「アジェンダ21」の実施状況をレビューするために国連が設置した「持続可能な開発委員会(CSD)」への参画など、行動計画の推進に寄与してきました。

こうした活動を通じて、2000年にイクレイは「持続可能な開発」の実現をイクレイのミッションに含めることとし、2003年には「国際環境自治体協議会」という名称を「イクレイ―持続可能な都市と地域をめざす自治体協議会(ICLEI-Local Governments for Sustainability)」に変更しました。環境分野にとどまらず、環境・社会・経済を包括的に捉え、持続的な社会の実現を目指すという方針を新たにしました。

なお、こうした流れは国際的にもみられ、国連環境開発会議(地球サミット)の10周年にあたる地球サミット2002は「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルク・サミット)」という名称となりました。その10年後に開催された「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」において、持続可能な開発目標を策定することが決まり、世界共通の目標であるSDGsの採択につながったという経緯があります。

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