2020年8月号
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SDGsの実践 あるべき指標と評価

ESGと企業価値:ケーススタディI

馬奈木 俊介(九州大学都市研究センター センター長・主幹教授)、岸上 祐子(九州大学大学院 工学研究院 研究員)

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評価される経営システムの変化

2020年6月16日、グッチやサンローランといったハイブランドを要するグローバルファッション企業、ケリング(KERING)の取締役にエマ・ワトソン氏ら3名が就任した。いずれも自身の事業、仕事のほかに社会的な活動家として知られている。例えば、エマ・ワトソン氏は、映画「ハリー・ポッター」シリーズをはじめ世界的に有名な女優だが、その一方で男女平等やハラスメント撲滅のために活躍し、同社のサステナビリティ委員会の議長にも就任している[1]。

© Carter Bowman

彼女らの起用は、単に有名人だからというわけではない。同社は「彼らの知見や能力、そして、様々なバックグランドや視点はケリングの取締役会にとって貴重な付加価値となります」と発表している

エマ・ワトソン氏が関心を寄せ取り組むジェンダーに関する問題は国連の持続可能な開発目標(英:Sustainable Development Goals、略称:SDGs)ではゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」として取り上げられている。こうして、「目標」として掲げなければならないほど、まだ平等が実現されているといはいえない状況があるのだ。

経済協力開発機構(英:Organization for Economic Cooperation and Development、略称:OECD)が発行する「世界のジェンダーギャップ報告書2020(The Global Gender Gap Report, 2020)」によると、世界で女性が役員になっている企業の割合は、上位はフランス約43%、アイスランドで43%、ノルウェー約42%だ。上位でもまだ半数に満たない。ちなみに、アジア諸国は20%以下のカテゴリーに、インド約14%、中国約8%、ロシア連邦7%、日本約5%、インドネシア約3%、韓国約2%とずらりと並ぶ[2]。

我が国では、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(通称:女性活躍推進法)」が2015年に成立し、2016年4月1日に施行された。この法律により、国・地方公共団体および301人以上の大企業は、女性の活躍に関する情報の開示と行動計画の策定・公表が義務付けられた。そのため2015年には1142人だった女性役員数は、2016年には1388人、2017年には1510人と増加している。しかし女性の登用が増加しているとはいえ、依然として上場企業の役員に占める女性の割合は5.2%と男性の役員数と比較すると圧倒的に低い(2019年7月末時点)[3]。

世界で増加するESGへの投資

企業にとって女性の役員登用はどのようなメリットがあるのだろうか。前述のエマ・ワトソン氏の登用は、投資家だけではなくCNNのニュースサイトや「ELLE」「VOGUE」「FIGARO」などのファッション誌サイトからも注目を集め報道された。しかし女性の役員登用は、こういった著名人の登用による話題作りで世間の目を集めるだけではなく、企業価値を高める投資の面にも影響を与えている。財務情報のほかEnvironment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス=企業統治)の3つの観点も考慮するESG投資が増加しているからだ。ESG投資はヨーロッパが先行していたが、この3つの観点から推察できるように、この投資が増えることはSDGs達成にも貢献することにつながることになり、他の国でも増加している。

世界のESG投資額の統計を集計している国際団体のGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)が2年ごとに発行する報告書によると、2016~2018年の間に、世界全体のESG投資額は34%増加し、30兆6,830億米ドル(約3,418兆円)となったとされる。また、ESG投資が全体に占める割合も増加している[4]。日本では2016年は474ドルだったのが2018年には2180ドルにも増えた。

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