トライアルHD、宮若市　リテールAI開発拠点の開設で協定締結

トライアルホールディングスは、九州北部を中心にスーパーマーケットやディスカウントストアを運営している企業。小売・流通業向けソフトウェアやITシステム開発も手掛けてきた。宮若市は、福岡市と北九州市の中間に位置しており、農業が盛んなほか、トヨタ自動車九州の工場もある。

連携協定に基づき、トライアルホールディングスは宮若市の廃校になった小学校と中学校をリノベーションし、小売業向けAIおよびそれを活用したデバイスの開発拠点を作る。同社社長の亀田晃一氏は連携協定発表の記者会見で「当初、AIの開発拠点は東京に置く計画で、オフィス探しなどにも着手していた。しかし、今のタイミングで人口が集中する都市部に職場を置く意味を考え、自然が豊かで自社の小売店が近くに多くある宮若市にオフィスを構えることにした」と背景を説明した。

現在進んでいる計画では、まず2021年5月末に、市内の吉川小学校跡地をAI開発センターにする。続いて、同6月末にはリテールAIデバイス開発拠点を宮田西中学校跡に、ファッションビレッジを笠松小学校跡にオープンする。トライアルグループの技術開発を担う企業Retail AI（東京都港区）では、スマートショッピングカートやAIカメラといったIoT機器を開発し、小売店で実証してブラッシュアップしてきた。これらはグループの小売店で利用するだけなく、他社のスーパーマーケットでも利用され始めている。ここで開発したシステムを実地でテストする、「スマートストア」型の店舗も、市内のショッピングセンター跡地に出店する計画だ。会計機能やレシピのレコメンド機能を備えた「スマートショッピングカート」を導入する。

このような先端のシステム開発に関わるIT人材などを宮若市に集める計画で、施設の開設に合わせて、吉川幼稚園跡をリノベーションした住居・一時滞在施設も整備する。ファッションビレッジは、デザイナー・パタンナーやインフルエンサーなどが集まる場にし、ローカル5Gを活用した動画によるマーケティングなどに利用することも考えている。

さらに今回の連携では、宮若市の地元の農産物の活用や、大都市の近場の宿泊型観光地としての発展も目指している。2022年3月には、農産物直売所「ドリームホープ若宮」を、旧吉川小学校のグラウンドに移設拡大してオープンさせる。同小学校の体育館には、ドリームホープ若宮に農産物を納入している農家の食材を食べられる「グロッサリア」も開所する。これに先立ち、福岡市の有名フレンチレストラン颯香亭のオーベルジュが2021年4月に完成予定だ。温泉宿泊施設「虎乃湯」、古民家を利用し温泉も楽しめる「古民家neri」も2021年5月にオープンする。