埼玉の町工場から 脊髄損傷者のリハビリ用無動力歩行具を開発

 

UCHIDA(埼玉県入間郡)は、脊髄損傷者用の無動力二足歩行装具「C-FREX」を2018年2月23日に発表した。同日、都内で開催された埼玉医工連携成果発表会でプレゼンテーションし、試作器を公開した。

 

UCHIDAはマネキン製造から出発した企業で、現在はカーボン複合素材を用いた試作品製作が主な事業だ。同社が脊髄損傷者用の歩行装具の開発には着手したのは5年前。国立障害者リハビリテーションセンター研究所と共同で、脊髄損傷で運動麻痺となった患者の歩行訓練用の装具開発を始めた。

 

開発にあたり、(1)カーボン複合素材を用いることで軽量・強靭にする、(2)使用時に専門家の同席が必要になる動力アシストは使わず、無動力として患者個人で使用できるようにする、(3)患者が使いたくなるかっこいいデザイン、を目標とした。この取り組みが評価され、同社は、2016年にパリで開催された複合材料技術展JEC WORLDでInnovation Awardを受賞した。今後は、患者の移動時の利便性を挙げるため、車椅子とセットで使えるようにする予定だ。

 

試作器のテスト歩行では、患者は杖とC-FREXによってトレーニングルーム内をスムーズに移動できた。動力アシスト機能はないが、二重振り子の原理を用いることで、患者に残された身体機能を生かしながら歩行訓練ができるという。

 

今後も、国立障害者リハビリテーションセンター研究所と協力して開発を続ける。まずは、C-FREXを用いた歩行による患者の身体への影響を評価するとともに、脊髄再生医療後のリハビリツールとしても使用できるようにする計画だ。2020年を目標に製品化し、「東京パラリンピックでは、聖火ランナーがこの装具を装着して歩けるようにしたい」と、同社の内田敏一社長は話した。

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