【7月17日鈴木憲和農水大臣会見】備蓄米買戻しの判断、米価動向を見極めへ
農林水産省は2026年7月17日、鈴木憲和農林水産大臣(すずき のりかず)による定例記者会見を開いた。会見では、生乳の需給安定策、政府備蓄米の買戻しや買入れ、米国産の生食用生鮮ばれいしょの輸入解禁に向けた手続きの進捗、株式会社ニチレイへのサイバー攻撃に伴うシステム障害、太平洋クロマグロの資源管理をめぐる国際会議の結果という5つのテーマについて質疑が交わされた。国内農業の制度設計から、食料供給を揺るがしかねないサイバーリスク、国際的な資源交渉まで、論点の幅広さが目立つ会見となった。
生乳需給、不公平是正が焦点に
新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに牛乳の消費量が落ち込み、保存の効く脱脂粉乳の在庫が膨らむ状態が続いてきた。これを受け、全国の生乳生産者と乳業者は資金を出し合い、国の支援も加えながら、脱脂粉乳の在庫を減らす取り組みを続けている。
Photo by Eric Akashi/ Adobe Stock
一方で、この対策に加わらないまま、需給の安定や乳価の引き上げといった恩恵だけを受け取っている生産者が一部に存在するという課題も指摘されてきた。農林水産省はこうした不公平感を和らげるため、対策への参加を各種事業の要件に組み込む「生乳需給安定クロスコンプライアンス」といった対応をすでに進めている。
2026年7月16日、自由民主党(自民党)は農林水産省に対し、加工原料乳生産者補給金についてもクロス・コンプライアンスの対象とすることや、生乳を少量ずつ複数の乳業者へ分散して出荷する少量複数出荷への対応を強化するよう申し入れた。鈴木大臣は会見で、提言の中には法改正が必要な項目も含まれるとの認識を示した上で、生乳需給の安定に向けて速やかに対応する考えを明らかにした。
備蓄米、買戻し判断は慎重に
米をめぐっては、自由民主党水田農業振興議員連盟(会長:小野寺五典衆議院議員)が2026年7月14日、食料安全保障の観点から政府備蓄米の在庫水準を早期に回復させる必要があるとして、買戻しや買入れに向けた準備を速やかに進めるよう求める緊急決議をまとめ、鈴木大臣に直接申し入れた。
政府は2025年、米価の高騰を受けて備蓄米約59万トンを放出しており、放出した分は原則5年以内に買い戻すこととされている。農林水産省は2026年度予算に、このうち15万トン分の買戻し費用を計上している。
鈴木大臣は、政府備蓄米が食料安全保障上不可欠な仕組みであり、備蓄水準の回復を着実に進める必要があるとの考えを示した。産地からも買戻しに関する様々な声が寄せられており、関係者の関心の高さを認識しているとも述べた。
その上で今後の対応については、米穀の需給と価格の安定に関する政府の基本指針に沿って、需給状況や販売動向を見定めながら判断する方針を改めて示し、買戻しの時期や規模について踏み込んだ言及は避けた。
米国産ばれいしょ、審査大詰めへ
米国は2020年、一般に流通する生食用の生鮮ばれいしょについて日本に輸入解禁を要請した。植物防疫上のリスクを確認する手続きは、農林水産省が定める標準手続きに従って進められており、全体で11段階に分かれている。現在は3段階目にあたる病害虫のリスク評価を、日米両国の検疫当局が共同で進めている。
この評価が終わると、4段階目としてリスクを管理するための具体的な措置が必要になる病害虫の特定に移る。特定された病害虫については内容を公表する方針だ。鈴木大臣は、検疫当局間で科学的な観点から協議が続いていることを踏まえ、解禁の具体的な時期を見通すのは現時点で難しいとの立場を示した。
ニチレイ障害、17日から順次復旧
冷凍食品大手の株式会社ニチレイ(本社:東京都中央区、代表取締役社長(CEO):嶋本和訓氏)では2026年7月13日、サーバーへの不正アクセスによりシステム障害が発生し、ニチレイロジグループ各社が運営する冷蔵倉庫の入出庫業務と、ニチレイフーズの冷凍食品出荷業務に影響が生じた。同社は同日、顧客や取引先の個人情報などを保護するため、グループで使用するシステムを遮断する措置を講じた。
同社は7月15日に第2報を公表し、調査の結果、この障害がサイバー攻撃によるものだったと確認したことを明らかにした。被害を受けたサーバーの一部には個人情報が保管されていたため、漏えいの可能性がある事案として個人情報保護委員会に報告している。
障害の影響は外食チェーンやスーパーなど取引先にも波及し、食品供給の混乱が広がった。ニチレイは外部のセキュリティ専門会社と連携して安全対策を講じた上で、7月17日から冷蔵倉庫の入出庫業務と冷凍食品の出荷業務を順次再開すると発表している。
鈴木大臣は、システムを遮断した結果、外食事業者や小売事業者の事業活動にも影響が出ていると説明した。その上で、業務再開が円滑に進み、同社からの食料品供給が回復するよう、農林水産省として引き続き状況を注視していく考えを示した。
クロマグロ増枠、合意至らず
太平洋クロマグロの資源管理をめぐる国際会議が2026年7月8日から14日にかけて、長崎市の出島メッセ長崎で開かれた。中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)北小委員会と全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)の合同作業部会などが開かれ、日本、米国、メキシコ、韓国など複数の国と地域が参加した。
水産庁によると、現行の漁獲枠は体重30キログラム以上の大型魚が1万1869トン、30キログラム未満の小型魚が5125トンとなっている。日本は資源量の回復傾向を踏まえ、2027年以降、大型魚の枠を25%広げて1万4836トンとする一方、小型魚の枠は6%縮小して4823トンとする案を提示していた。
会議はすべての参加国・地域の同意による全会一致が原則となっているが、東側の太平洋海域を管轄するメキシコが最終日になって急きょ増枠を主張し、これまでの調整案に反対したため合意には至らなかった。鈴木大臣は、メキシコの対応について、関係国・地域が積み重ねてきた交渉努力を無にするものであり極めて遺憾だとの認識を示すとともに、漁業者の心情を踏まえれば残念な結果だと受け止めていると述べた。
今後については、メキシコが交渉姿勢を改めて建設的な協議に応じることが不可欠だとした上で、他国とも連携しながら、できるだけ早期の協議再開を模索する考えを明らかにした。全米熱帯まぐろ類委員会の年次会合が8月末に開かれる予定で、水産庁はこれに向けて東西の海域の再調整を目指す方針だ。日本政府は2026年11月末に開かれるWCPFCの年次会合で正式決定し、2027年からの適用を目指している。
今回の会見では、酪農・乳業の構造的な課題から国際的な資源管理交渉まで、農林水産行政が抱える論点の幅広さが改めて示された。生乳や米をめぐる制度運用の行方、ニチレイの供給復旧の進み具合、そしてクロマグロ交渉の再開時期は、いずれも今後の農林水産省の対応を占う材料として注目される。