2021年7月号
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ダイバーシティが生む新市場

新しい自己の表現にニーズ AR/VR時代の多様性を考える

渡邊 信彦(事業構想大学院大学教授)

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通信環境や機材のスペック向上により、AR/VR空間でのアイデンティティの自由度が増している。ビジネスからプライベートまで、様々なシチュエーションに合わせた姿を選べるとき、自分らしさの表現を支援する様々なプラットフォームやビジネスが生まれる。

Psychic VR Labでは、入社式をVR空間内で実施。新入社員が空間を作成し、相互理解のきっかけとしている

インターネットやバーチャルリアリティの世界では、アバターを使って多様な自己を表現できる。Psychic VRLab取締役 COOを務める渡邊信彦氏(事業構想大学院大学教授)が、XRによる多様なアイデンティティの実現と、それに伴うビジネスチャンスについて話した。

渡邊 信彦 事業構想大学院大学教授、 Psychic VR Lab取締役 COO

XR技術は爆発的な普及間近

インターネット上のコミュニケーションでは、現実世界の生身の自己とは異なる自分のキャラクターをつくることができる。ごく初期の文章のみのやり取りでも、現実とは異なるアイデンティティをつくる人はいた。2016年末に生まれたバーチャルYouTuberは、既に複数が商業ベースでも活躍するほど一般化している。バーチャルリアリティ(VR)やオーギュメンテッド・リアリティ(AR)などのXR技術が普及すれば、多様な自己が現実の自己の延長となっていくと渡邊氏はいう。

今現在も、VR機器を使えば、全く異なる自分になりきることは不可能ではない。ただし実際のところは、さほど没入感のないシチュエーションでコンテンツを楽しんでいるユーザーが多数派だ。その理由は、ネットインフラ側と、ユーザー側の双方で環境が未整備であるためだ。

まず、ネットインフラ側の理由。バーチャルな自己をまとった多数の人が集まって交流する際には、莫大な通信を安定して提供し続ける必要がある。また、ユーザーそれぞれの行動に合わせたデータ処理も膨大になるため、技術上の限界がある。現在採用できる解決策として、アバターを単純化する、一度に接続できる人数を制限するなどがある。例えば、KDDIが渋谷区観光協会や渋谷未来デザインなどと2020年に立ち上げた「バーチャル渋谷」では、参加者のアバターはデフォルメされた四角いロボットのような形で統一されている。

ユーザー側も、VRに対応している人はまだ少ない。最も売れたVRデバイスとして注目されている、米フェイスブック社傘下のオキュラス社が販売するVRヘッドセット「Quest 2」でも、2020年の販売台数は100万台ほど。うち9万台程度を日本での売り上げが占めると推定されているが、人口全体で見た普及率はまだ低い。ソーシャルVRアプリをうたう「VRChat」でも、9割以上のユーザーがVRではなく、PCからの接続と見られている。

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