性的指向・性自認の知識を全国へ LGBT新法は多様な社会の裏付け
LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)など性的マイノリティに対する差別をなくすための法案を巡り、2020年5月14日、与野党は修正を加えた法案で合意した。LGBT当事者の現状と法整備の必要性について、「LGBT法連合会」理事の五十嵐ゆり氏に聞いた。
LGBT新法を巡り、性的指向(好きになる相手の性)や性自認(自分で認識している性)について、「国民の理解増進」を掲げる自民党と「差別解消」を掲げてきた野党。5月10日に開かれた協議で、法案に「差別禁止」の明記を求めた野党側に対し、自民党は法律の目的に加え、基本理念にも「差別は許されない」と明記する再修正案を提示。14日の協議で、与野党が合意に至った。
適切な認識を高めるには
教育と知識が必要
LGBTの差別を禁止する法律は、EU、オーストラリア、米国などの先進国で制定されている。国連でも同じような動きがあり、グローバルスタンダードになっている。日本において、性的指向や性自認により困難を抱えている当事者に対する法整備を目的とし2015年に創立したのが「LGBT法連合会」(性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会)だ。自身、女性同性愛者である理事の五十嵐ゆり氏は「LGBTに対する理解や知識を持っている人は数年前に比べずいぶん増えました。しかし、残念ながら不当な取り扱いを受けている事案は、まだ山のようにあります」と話す。
同連合会のウェブサイトでは雇用、医療、教育、公共など様々な分野で、LGBT当事者が社会で直面する困難リストをあげているが、その事例は300以上に及ぶ。
つい最近も、東京都豊島区で会社勤務の20代男性が性的指向を上司に勝手に暴露(アウティング)され精神疾患に陥る被害があった。男性はアウティングを禁止する豊島区の条例にもとづく申し立てをし、会社側が謝罪、和解に至っている。
「アウティングという行為の『何が問題か』を分かっていない方は非常に多い。偏見や差別的な考えを持つ人がまだ多いなかで、自分の望まない形、望まないタイミングで、望まない人に伝わってしまう恐怖感は、なかなか理解してもらえません。一方で、この件は条例に基づく解決がなされ、法的な裏付けの重要性を再認識する事例ともなりました」。
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