2020年11月号

実務家教員による大学教育

知識のトライアングルと担い手

川山 竜二(先端教育機構 社会情報大学院大学 研究科長・教授)

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知識社会、人生100年時代、リカレント教育の高まりとあいまって私たちは学び続けることが求められている。社会からの期待(圧力?)によって人々が常に学び続ける社会をハイパー・ラーニング・ソサエティといった。

リカレント教育と聞くと、どうしても「学び直し」というイメージから「学び手」を想定しがちである。人生を通じて学び続けなければならないという態度そのものを考えなおす必要がある。学び続けるということは、だれか別の人が創り出した知識を受け取ることになる。それは知識の消費者を意味する。すなわち知識のフォロワーである。この知識のフォロワー的体質からの脱却が、Society5.0時代の学習戦略といえる。自らが知識を創り出す側へと転回しなければならない。それは知識の生産者であり、知識のリーダーである。

ここでいう知識とは、科学的な知識を思い浮かべるかもしれないがそれだけではない。自らの経験知を体系化させ実践知にすることもひとつの知識の形態である。個々の企業等の中に集積された暗黙知を形式知化して継承することや、さらには、これらを理論化・体系化して、生産性の向上へとつなげることもまたしかりである。

そこで重要なのは、自身の経験知を振り返り可視化するための言語化である。経験知を単純に言語化すればよいわけではない。経験知を実践知に変換させたとして、それらの知識が組織や社会でどう役に立つのかをも明らかにしておく必要がある。知識の適用範囲といえばよいだろうか。たとえば自分自身の経験知は「企業特殊能力(その企業・組織の内部でのみ通用するスキルや知識・ノウハウ)」の場合もあれば、より普遍的なスキルや知識の場合もある。知識を有効に活用するために、自らの知識がどこに位置づけられるのか見定めることが不可欠である。知識として可視化するのは、他者に伝えることが目的となる。なぜその知識を学ばなければならないのか、その知識を学びどのように生かすのかが明確にされていなければ伝達される側(学び手)は、積極的に学習しようとしないだろう。自らを振り返ることで知識を創造し、さらに創造した知識を俯瞰的にみて適切に分析するというメタ的な視点が求められる。

知識を他者が利用することを前提にしたとき、その知識は①共有可能な性格を帯びている必要があり(論理的・説得的・他者に伝達することができる)、②有用性(どのように役立ち組織・社会に位置づけられるのか)を備えていることが重要だ。

知識社会では、新たな知識の創造・普及・活用が課題となる。新たな知識を創り出したらそれで終わりではない。その知識を共有することで、広くその知識を必要な対象者に対して普及させることが必要となる。くわえて知識を普及させるだけでなく、その知識を活用することが重要である。その知識の活用によって、あらたな実践がつくられ知識がアップデートされてゆく循環が構築できるのかが知識社会の鍵となる。

知識のトライアングルを円滑に回転させる能力と実務家教員にもとめられる能力が一致する。実務家教員に必要とされる3能力だ。それは実務経験・実務能力、教育指導力、そして研究能力である。

 

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