観光・誘客の将来は? 個人移動・オンライン・屋外化が顕著に

自粛期間中で移動の制限される状況下でも宿泊地のテレワーク利用など「旅行業」へのニーズは見られる。バーチャル空間も活用した、観光地プロモーションのあり方とは何か。

牧野 友衛(トリップアドバイザー 代表取締役)

起こっている変化

非常事態宣言以降、各施設の営業自粛や短縮が求められる中で、各施設はすでにできる対応を始めている。ホテルではリモートワークになった会社員のためのデイユースの提供や、レストランのテイクアウトやデリバリーの対応、美術館博物館では映像での展覧会の配信や、観光協会によるデジタルプロモーションなど変化はすでに起きている。観光客のみならず、外出の自粛によりお客さんが消えた中で、各施設や各業界が試行錯誤して起こした変化は、外出や移動自粛の緩和がなされた後も、今後戻らず恒常的なものになると思う。

新型コロナウイルス感染症の終息に数年かかる可能性が指摘される中では、「アフター・コロナ」が意味するのは「コロナ終息後」の世界ではなく、「コロナ発生以降」の世界であり、コロナが存在する中でもどう観光があるべきかを考える必要がある。

旅行者の変わらないと
変わるもの

この4月に弊社では日本を含む世界の旅行者の調査を実施した。世界で共通するのは、コロナに対して不安を感じながらも、6割を超える人たちが「旅行が重要だ」と考えているということだ。

外出自粛中にもかかわらず、郊外の観光地に人が増えたり、中国の連休中に1.2億もの人が国内を移動したりという報道からもわかるのは、旅行が人にとってはなくてはならないものだということだ。それだけ強い旅行への欲求から、「アフター・コロナ」であっても、人が旅行に行くことは変わらない。ただそのあり方が、これまでとは変わってくるのが想像される。

先の調査では世界的にも次の旅行の予定として「国内旅行に行く」という回答が最も多く、日本人旅行者については88%が「国内旅行に行く」と回答した。旅行の時期に関しては調査した4月時点から1年以内が61%、半年以内だと34%と考えているため、年内にも国内旅行の需要の回復は見込まれる。一方で、海外旅行は1年以上見合わせるという意見が9割だったため、その分が国内に向くことも期待できる。国内の旅行先については34%が90分以上の移動を伴う旅行として最も多く、23%が国内線を利用しての旅と続き、17%が自宅から近場、14%が90分以内の移動となっている。距離に関係なく旅行に行く意向がわかるが、自宅から近場での「ステイケーション」も17%あることから、東京であれば都内のホテルで観光気分を味わえる部屋や体験を提供するなどそのニーズに見合うものを提供していくことができるかもしれない。

非常事態宣言前にも、キャンプ場の人気や近場の温泉地への車での旅行が増える傾向が見られたが、これまで以上に「車での旅行」、「アウトドアや自然散策」が増えると回答した人達が3割以上いた。感染症対策のために屋内や密集を避けるために、今後はトレッキングやキャンプを始めとした屋外アクティビティや、タクシーやレンタカーといった個人での移動のニーズが見込まれる。

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