2020年5月号

自治体 働き方改革

神戸市 コールセンターDXで市民満足度向上

有坂 公孝(神戸市 行財政局 業務改革専門官 兼 働き方改革推進プロジェクトリーダー)

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職員の働き方改革と行政サービスの維持・向上に取り組む神戸市役所は、NTT西日本グループのNTTマーケティングアクトに、市民からの問い合わせ電話受付をアウトソース。神戸市総合コールセンターのICT機能拡充とAIチャットボットの活用により、市民サービス向上と業務効率化の両立をめざしている。

有坂 公孝 神戸市 行財政局 業務改革専門官 兼 働き方改革推進プロジェクトリーダー

阪神・淡路大震災の影響で
市の職員が大幅に減少

日本の労働人口が減少している中、神戸市にとっても生産性向上は大きな課題だ。神戸市の行財政局業務改革専門官であり、働き方改革推進プロジェクトリーダーを兼任する有坂公孝氏はこう語る。

「官民を問わず、生産年齢人口の減少に対応することは喫緊の課題です。労働力の減少は全国共通の問題ですが、神戸には、平成7年に起きた阪神・淡路大震災という固有の事情もあります。その影響は大きく、財政危機を乗り越えるため平成27年までの20年間に、神戸市は職員数を33%削減しました。その間、市の人口は増加、仕事量も増加しましたが業務効率化が追い付かず、個々の職員の頑張りに支えられてきました。担い手の疲弊は、行政サービスの質の低下につながります。そのような危機感の下、市民に優しく、市民のために職員がいきいきと活躍できる市政をめざして、働き方改革に取り組んでいます」

膨大な問い合わせに対応する
高機能なソリューション

神戸市では働き方改革と行政サービスの拡充を進めるために、業務改革と市民サービス改革を柱とした「働き方改革ロードマップ」を平成30年度に策定した。

働き方改革ロードマップの中で大きな課題の一つとして挙げられているのが、電話問い合わせへの応対だ。入電数は、平成28年度に約452万件(うち、区役所が約213万件)にのぼっていた、と有坂氏は言う。

「職員による電話応対には、大変な労力と時間を要します。1回の応対時間は5分から8分程度としても、件数が膨大で全庁でのコストと職員の負担はかなりあると推定されます。例えば、取り組み中の仕事が電話応対で頻繁に中断すると、集中力が途切れて効率性が下がるおそれがあります。事務処理中の場合には事務ミスを誘発する要因にもなりかねません。このような中、神戸市はICTを活用した総合コールセンターを導入しており、職員の生産性向上に重要な役割を担っています。具体的には、高機能FAQシステム、有人対応によるハイブリッドなイベントWeb申込システム、AIチャットボットなどが導入されています」

職員の負担を軽減するICTを
活用した総合コールセンター

神戸市総合コールセンターはNTTマーケティングアクトが運営し、年中無休で朝8時から夜9時まで同社スタッフが問い合わせ業務を担っている。

コールセンターでは、市が準備したFAQ(回答支援データベース)に基づいてオペレーターがその場で回答する。応対履歴の状況から、担当課の職員と連携しFAQの追加、変更を行い、内容を充実させることで、さらなる完結率と市民の満足度向上につなげている。

神戸市では、年間通して様々なイベントを数多く開催しているが、従来は担当部署の職員が電話で受け付けていた。これらをコールセンターに全て集約し、市と共同開発したWeb申込システムも活用することで、職員の負担は劇的に削減された。昨年度約6万件の申し込みのうち、6割ほどは24時間受付可能なWeb申込システムへの直接申し込みであり、Webを利用しない市民からの申し込みについては、電話応対したオペレーターがシステムへ入力することで、市民、オペレーター、職員、三者の手間と時間を軽減した。

オペレーターはコールセンター業務の専門人材が務め、多岐にわたる問い合わせにも的確に対応する。「オペレーターの方々は、市のイベントや業務について職員よりも詳しいかもしれません(笑)」と有坂氏は語る。

NTTマーケティングアクトが運営を担う神戸市総合コールセンター

代表電話も全てアウトソース
さらなる働き方改革を推進

神戸市では、総合コールセンターに加え、代表電話もNTTマーケティングアクトでの対応に順次集約している。

オペレーターは、市職員へ転送の際に部局電話帳システムを活用しており、迅速で的確な応対が可能となっている。

従来、市民からの電話には本庁と各区役所が個別に対応していたが、市民から「問い合わせ先がわかりにくい」「たらい回しにされた」「電話がつながらない」などの声も寄せられていた。移行後は、コールセンターの代表交換オペレーターが応対し、迅速で均一な対応をすることで、市民の満足度向上をめざしている。

有坂氏は、これらの取り組みによって市職員の電話応対件数が減少傾向に転じただけでなく、以前はできなかった別部署への電話転送も可能にしたことで、市民のかけ直しの手間を削減することにつながったと語る。行政サービスの品質向上と職員負担の軽減につなげることで、市民にも職員にも優しい市政というテーマの実現に向け着実に進化している事例だ。

また、市民の問い合わせ内容のデータを蓄積し、分析することで、電話応対の効率化だけでなく、市の業務そのものを改善するヒントも得られる。有坂氏は、神戸市への電話問い合わせが顕著に多い原因を今後のデータ分析で明らかにして、改善につなげることを計画していると語る。

AIチャットボットを導入、
有人チャットも開始

ICTソリューションのもう一つの柱が24時間稼働のAIチャットボットだ。市のホームページ内に設けられた総合コールセンターのポータルサイトでは、「チャットで質問する」という項目を選択できる。調べたいことを選択、入力すれば、AIが情報の関連性を判断し、必要と思われる情報が案内される仕組みだ。

AIチャットボットにおいても入力データを蓄積し、応対の洗練や最適化といったブラッシュアップを常時行っている。市民が知りたいことをFAQやAIチャットボットで解決できれば、電話応対の削減が見込まれる。

加えて、今年度からは総合コールセンターの運営時間帯に、チャットの有人連携も開始する。チャットボットが回答できないものについて、有人チャットにエスカレーションしてチャット上でオペレーターが回答する仕組みだ。

NTT西日本がICTシステムを活用して構築したコールセンターを、NTTマーケティングアクトが運用。神戸市は2社と毎月定例会を実施して、課題解決や応対向上に継続的に取り組んでいる。

「NTT西日本グループは他都市での実績も豊富で、様々なノウハウをお持ちですので、市民の満足度を高め、行政の生産性を高めるような、プロフェッショナルなサービス提供を期待しています」と有坂氏。

今後は、行政手続きのデジタル化、スマートシティ化など、社会的課題への有力なソリューション提供を期待していると言う。

生産性向上という課題に直面している自治体にとって、ICTの利活用は不可欠だ。優れたソリューションが、自治体行政を支える時代になっている。

※ 文中の職員数の削減数、入電件数、イベント申込件数は、神戸市行財政局データの数値。

 

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