剣道の経済圏を作る インバウンド向け武道体験、EC展開で成長

老若男女、幅広い競技者を抱える剣道の関連市場に成長余地を見出し、剣道家が事業を開始した。道場経営の支えとして考案した訪日外国人向け剣道体験ツアーSAMIURAI TRIPが成功。確かな剣道のバックグラウンドを背景に、剣道の価値向上とマネタイズを進める。

永松 謙使(パークフォーアス 代表取締役)

スポーツによる産業振興や観光活性化が叫ばれている中で、日本の伝統的な武道である剣道にも変化が起きている。パークフォーアス(東京都大田区)代表取締役の永松謙使氏は、「剣道の経済圏」を作る構想を立て、様々な取り組みを始めている。

競技人口が持つ成長余地

剣道は、剣道具を着けた選手が竹刀で1対1で戦うスポーツであり、稽古を通じた心身の鍛錬を目指す「武道」だ。全日本剣道連盟によると、2017年度末の剣道の有段者登録数は189万人、もう1つのメジャーな武道である柔道と比較すると10倍多い。

永松氏が試算した国内の剣道関連市場は、剣道具だけでも100億円ほど。定期的に稽古をしている実働人口を20万人と見積っても、市場は決して小さくはない。しかも、現在のプレイヤーは中小企業が主で、大手スポーツブランドによる新規参入もなさそうだ。永松氏は、剣道の市場は大きくはないものの、可能性があると分析している。「剣道の市場を構成する要素には、道場、防具・竹刀などの剣道具、剣道指導や対外的な広報などの教育普及活動があります。現状はこれらの各要素が分断されているので、それらをつないで大きくしていきたいと考えています」(永松氏)。

例えば、剣道の稽古に欠かせない剣道場。剣道の試合場は1面9〜11mの正方形で、その外側に1.5mの余白を設ける規則になっている。コート2面と更衣室、倉庫などの付帯設備をカウントすると、道場開設に必要な面積はかなりのものになる。大都市圏でこれだけの屋内スペースを確保・維持する負担は大きい。

実際に現在、剣道場を所有するのは多くが企業や学校、自治体など。多くの剣友会が小学校の体育館などを借りて稽古しており、単独で運営する民間道場は珍しい存在だ。

「現実として民間道場の経営は厳しい。何とかできないかと考え、道場が使われていない日中の時間を活用しようと開始したのが、訪日外国人観光客向けの剣道体験ツアー『SAMURAITRIP』です」と永松氏は説明する。

SAMURAI TRIPは、訪日外国人の初心者向け剣道体験アクティビティだ。札幌から福岡までの全国主要都市圏で開催しており、基本の説明から、剣道具を着けた試合形式のミニゲームまで、約2時間で体験する。

SAMURAI TRIPによる剣道体験の様子。2019年には、桐蔭横浜大学剣道部の協力で、中国人団体客252人に対する講習も実施した

客単価は平均で1万5000円程度と、安いアクティビティではないが、2018年度は25カ国から900人超が参加し、2019年度は2000人程度になる見込み。参加した人からの評判も良く、2018年度にはスポーツ振興賞の観光庁長官賞を受賞している。

剣道は海外でも普及しており、世界剣道選手権の参加国数は56カ国に上る。経験者の剣道留学や、稽古のための来日は既に珍しくない。しかし、全くの初心者の外国人観光客向けの体験講習は国内では少なく、SAMURAI TRIPはその需要に応えるものとなった。

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