2019年10月号
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スポーツの新ビジネス

トップ選手の「思考」をAI化、チーム強化に活かす

乙部 信吾(LIGHTz 代表取締役社長)

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一流のアスリートはどのような思考回路を経て、そのプレーを選択しているのか。「思考」をAI化し、それを選手の育成やチームの強化に活用する。それは、100年後にも価値を持つ「知」のアーカイブをつくる取り組みでもある。

乙部 信吾(LIGHTz 代表取締役社長)

AI(人工知能)はスポーツをどのように変えるのか。その可能性の一端を示しているのが、2016年につくば市で創業したベンチャー、LIGHTzの取り組みだ。

LIGHTzの中核となるテクノロジーは「スペシャリストの思考のAI化」。ものづくりの匠など熟練技術者のノウハウのAI化を進めているほか、重点領域の1つとしてスポーツに照準を定め、各種競技のトップ選手の「思考」のAI化を進めている。

スポーツにおけるAI活用と言うと、フィジカルデータ(身長・体重や身体能力のデータ)やバイタルデータ(脈拍、血圧、体温などの生体データ)を収集・蓄積してパフォーマンスの向上を目指すというイメージも強いが、LIGHTzが焦点を当てるのはあくまで「思考」であり、それは世界的に見てもあまり開拓が進んでいない分野だという。

LIGHTzの乙部信吾社長は、「思考」のAI化というアプローチのメリットについて、次のように語る。

「これまでのAIやデータ分析は、例えばサッカーならば、ボールがどう動いたのか、選手がどれだけ走ったのかなど『個』のデータでした。実際の試合ではボールを持っていない選手の動きを含め、連動性やフォーメーションの位置取りが重要であっても、『個』のデータではそれを分析できません。選手の『思考』を可視化したデータであれば、チームワークや連動性の問題を解くことができます」

他にも、「思考」という主観的な要素を考慮することで見えてくることがある。

「サッカーで試合中の走行距離を測定し、それがナンバー1だったら、その選手は良かったと思われがちですが、実際には走らなくてもよい場面で走っただけかもしれません。どのような意図で走っていたのかなど、走りの質を見るためには、客観的なデータだけでなく『思考』という主観的な要素を含めて考える必要があります」

独自のヒアリング手法を使い、
言葉を積み上げていく

それでは、スペシャリストの「思考」のAI化は、どのようにして実現されているのか。スポーツ選手は饒舌な人ばかりでなく、必ずしも言葉で表現するのが得意とは限らない。LIGHTzは独自のヒアリング手法を駆使し、スペシャリストとの対話を重ね、複雑な思考を整理していく。

「ヒアリングは基本、2時間×8回。週に1回、2時間のヒアリングを8週間にわたって行い、プレー中にどんなことを考えているのか、言葉をひたすら積み上げていきます。最初は『何も考えていない』と話していた選手でも、試合の動画を見ながら、『ここで何を見ていたのか?』『なぜそう判断したのか?』など1つ1つのプレーについて言葉を引き出していくと、どういった状況でどのような判断をするのか、思考回路が見えてきます。私たちは、そのようにして収集・解析した思考を『ブレインモデル』という形式に落とし込み、視覚的に把握できるようにします」

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