企業がスポーツを「使う」時代へ スポーツビジネス進化の行方

スポーツビジネスは今後、どのように進化していくのか。メディアビジネスを核にした1.0モデル、スタジアム一体経営を中心とする2.0モデルを超えて、今、スポーツビジネス3.0が始まっている。これからの展望について、スポーツビジネスの専門家、荒木重雄氏に話を聞いた。

荒木 重雄(スポーツマーケティングラボラトリー(SPOLABo)代表取締役)

――スポーツビジネスは日本よりも海外のほうが進んでいるとされていますが、現状をどのように見ていますか。

荒木 スポーツビジネスに関して、確かに「日本は遅れている」「米国のほうが進んでいる」などと言われますが、それは一面にすぎません。

メジャーリーグ(MLB)のようなプロスポーツに目が行きがちですが、米国のスポーツ市場を見ると、MLBの総収益は約1兆1300億円、一方でスポーツ産業全体の市場規模は約50兆円です。MLBの収益は、たった2%に過ぎません。スポーツビジネスには様々な領域があり、その裾野は非常に広いのです。

日本のスポーツの市場規模は5.5兆円(2015年)ですが、そのうちプロスポーツ興行による収益は7%。この割合は米国でも大差ありません。実は、スポーツビジネスのチャンスは残りの93%にあります。

政府がスポーツの成長産業化を掲げ、スポーツの市場規模を2020年までに10兆円、2025年までに15兆円に拡大することを目指しています。その実現のためには、プロスポーツ興行の価値を高めるだけでなく、スポーツ以外の産業といかに「掛け算」し、領域を広げるかが問われます。もちろん、試合の価値が高まれば掛け算できる要素が増えますから、7%の部分が魅力的であることが前提となります。

メディア中心のビジネスが確立

――スポーツのビジネス化は、どのように進んできたのですか。

荒木 スポーツビジネスの歴史において、大きなターニングポイントはロス五輪です。1984年のロス五輪において、チケッティング、放映権、スポンサーシップ、ライセンスなどを活用して収益拡大を図る事業モデルが確立されました。これは言わば、「スポーツビジネス1.0」のモデルです。

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