2019年9月号
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SDGsの実践 あるべき指標と評価

SDGs「本業化」のためのESG・サステナブル投資

馬奈木 俊介(九州大学大学院工学研究院 都市システム工学講座 教授/九州大学都市研究センター長・主幹教授)、松永 千晶(九州大学大学院工学研究院 環境社会部門 都市工学研究室 助教)

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SDGs(持続可能な開発目標)の開始から3年が経過し、認知の段階から、実践が求められている。実践への大きな要素の1つとして、金融の取り組みが注目されている。ESG投資をはじめとして、SDGsの実践、推進のために資金が地域も含めて適切に循環することが求められているが、まだ、地域や中堅中小規模の企業においては縁遠いテーマとなっている。本コラムは、SDGsの実戦―ESG経営・金融編―として、SDGsの評価指標として期待されている「新国富指標」に関する国連の代表執筆者である九州大学大学院・都市システム工学講座教授の馬奈木俊介氏と、同助教の松永千晶氏により、金融・投資・融資に関するテーマを連載していく。

1.SDGsの包括性とその課題

国連でミレニアム開発目標(MDGs: Millennium Development Goals)から持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)への変遷において、最も顕著なのは目指す目標とそれらを担う主体の包括化であろう。今日では、開発目標が対峙する社会問題や社会的課題は、地球レベルの気候変動や資源の枯渇といった環境問題に加え、貧困や紛争、労働、健康、教育や経済、国・地域間の格差の問題など多岐にわたる。関係する主体についても同様である。特筆すべきは、SDGsでは課題解決のための企業の創造性とイノベーションを期待し、企業の役割を重視したことにある1)。まさにSDGsの基本コンセプトである「だれ一人取り残さない」(No One Left Behind)の実現に向けたものと言える。

ご存知の通り、SDGsは17の目標(ゴール)と、各目標に関する169ものターゲットで構成されている。さらに、各ターゲットには具体的な指標が設定されており、その達成度を可視化することでSDGsの実行可能性を高める構造となっている。

しかし、この包括的な構造ゆえに、すべての指標の観測を行うことは困難である。事実、今年4月の国連のSDGsの環境に関するターゲットの進捗状況の報告によると、該当する指標の68%において全世界での達成度評価に必要なデータが揃っていない(図2)2)。また、SDGsおよびその背景にある公文書では、SDGsを達成するために実施される施策が有効かどうかや、それをどのように判断すべきかについては言及されていない3)ことから、SDGsが前提とする包括的な「持続可能性」を判断するには既存の評価指標では不十分であると言える。

図1 SDGsの環境に関するターゲットの進捗状況

出所)文献2)を元に筆者作成

2.国や地域によるSDGs達成の評価指標「新国富指標」

これらの問題に対応しうるとされるのが、国連持続可能な開発会議(リオ+20)において提示された新国富指標(IWI: Inclusive Wealth Index)だ。IWIは、GDP(国内総生産)やHDI(人間開発指数)といった従来の指標では国や地域の全財産(富、豊かさと同義と考えてよい)を捉えられていないという共通の認識を背景に、富のさまざまな要素を包括的に分析することを目的とし4)5)、UNU-IHDPとUNEPを中心に多くの専門家らによって調査・研究がなされた成果である。これまで曖昧とされた国や地域の政策で持続可能性が改善されたかどうかを、この指標の増減で簡便に判断できるという点で優れており、SDGsの成果指標として大きく期待されている6)

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