2019年8月号

実務家教員による大学教育

今社会に求められる「ソーシャル・ナレッジ・マネジメント」とは

川山 竜二(学校法人先端教育機構 社会情報大学院大学 研究科長・教授)

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前回は、実務家教員の研究能力の必要性についてと、実務家教員が生み出すべき「実践の理論」と知識の複数性について論じた。今回は、さらにメタ的な視点から「実践の理論」について考えていきたい。

実務家教員は、「実践知」の体系としての「実践の理論」を創造して終わりではない。実務家教員は「実践の理論」を最大限普及させ活用させることも課せられているのだ。そうした要請に応えるためには、2つの観点に注意を払う必要がある。ひとつは、創られた「実践の理論」が社会にどのように位置づけられるのかという点である。もうひとつの点は、自らが創造した「実践の理論」そのものを反省し相対化する視点である。

実践知の布置
――知識を社会や組織に位置づける

前者の論点について簡潔に述べよう。実践知や実践の理論は、社会に遍在する知見や経験知、暗黙知などを結晶化させたものである。しかしそれらは、形式知として結晶化させたものでしかない。したがって、実践知や実践の理論が社会や産業のどのような領域・場面で活用され役立つのかという「実践知の布置」を明らかにしなければならない。さらに言えば、「実践の理論」という体系のなかには、そのような「実践知の布置」も包摂されていなければならない。つまり、抽象と具体の往復運動が「実践の理論」には組み込まれている。

「実践の理論」を反省する
――反省と相対化

それでは後者の反省と相対化の論点はどうだろう。自らの経験から創造した知識や価値観を反省し相対化することが必要である。自らの経験や暗黙知は、自らが拠って立つ価値観を常に反省し、問い直すことでより先鋭化する。ときには、真っ向から対立する「実践の理論」とぶつかったときも相対化することが求められる。

実践の理論は、実務の現場で活用されることになるが実践知の活用によって、状況は常に変化する可能性を秘めている。社会や実践のおかれている状況が変われば実践の理論は常に見直しが必要となってくる。また、同じ領域の実践の理論といえども価値観や視座が異なれば当然対立することもあるだろう。そうした場合、双方の理論を相対化して受けることも必要になってくる。

ソーシャル・ナレッジ・マネジメント
――社会認識論へ

このようにあげた「実践の理論」などの実践知を適切なかたちで社会や組織に位置づけることを、ソーシャル・ナレッジ・マネジメント(Social Knowledge Management=SKM)と呼ぶことにしよう。このSKMは、実務家教員だけに求められている能力ではない。たとえば、企業組織で暗黙知を形式知化したときに、どのような実践場面で活用されるのかという観点からも整理する必要がある。つまり、実践知を体系化しようと思うものは「その知識が社会や組織においてどのような場面で位置づけられ活用されるのか」を管理することも求められるのではないか。それこそが「実践の理論」を創造したものの責務である。

 

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