鈴木大地スポーツ庁長官が語る ラグビーW杯、東京五輪のレガシー

本年2019年から、スポーツの世界的イベントが、日本国内で相次いで開催され、2020年以降、将来世代に受け継がれるレガシーへの期待も高まっている。より多くの国民がスポーツの魅力を感じて取り組み、健康な生活を実現するよう促すスポーツ庁の取組とは。

鈴木 大地 (スポーツ庁 長官)

国民一人ひとりのスポーツ参加を

――庁を挙げたお取組の中で、スポーツをめぐる現在の動向をどうご覧になっていますか。

スポーツ庁では、競技力向上だけでなく、スポーツの促進で健康を提供し、医療費の抑制に貢献しようとしています。現在は、スポーツをやる側だけでなく支える側でも専門化や高度化が進んでいます。このような中で、スポーツに関わる仕事をする人は増えていると思います。

――健康寿命を延ばすには、一人ひとりの意識や適度の運動が大切です。

今後は平均寿命だけでなく、健康寿命を延ばすことがますます重要になります。そのためには、人間が本来持つ機能を衰えさせず伸ばしていけるよう、運動機能や筋肉を使っていくことが大切です。薬を使わず、運動によって体調を改善できることもあるでしょう。

――産官学の連携に関しては、スポーツではどのような役割分担ができるでしょうか。

まず、「学」の部分で現在、大学スポーツ改革を始めています。日本版NCAA設立準備委員会で検討を重ね、大学横断的、かつ競技横断的な統括組織である「一般社団法人大学スポーツ協会」(通称UNIVAS)を、今年3月に設立しました。

今後は大学の研究力や教育力、マンパワー、そして若い人たちのアイデアを、スポーツに活かしていこうとしています。この取り組みによって地域間のつながりができるなど、様々な可能性が生まれると思います。

私は日本オリンピアンズ協会の会長も務めていますが、日本に4,000~5,000人いるオリンピアンは、セカンドキャリアでその能力やキャリアを活かしきれていないと感じます。産官学の間における人材の流動性を高め、例えば学校の外部指導者としてオリンピアンやアスリートが子どもたちの指導をできれば、彼らの能力が活かされるだけでなく、教員の負担軽減にもつながるはずです。また、それらの人々が地域のスポーツで核になっていけば、地域が元気になると思います。

その際、スポーツの専門性を持つ方々にも教育原理など、教育現場に必要な最低限のカリキュラムを吸収していただくのが良いと思います。逆に教員の方々もスポーツの指導では、その専門性を学んでいただくのが良いでしょう。

――スポーツの社会における価値とはどう提供されるでしょうか。

我々はスポーツの促進で健康を提供し、日本の最重要課題の1つである医療費の適正化に貢献しようとしています。また、それ以前にスポーツで体を動かすことは喜びや楽しみ、QOLの向上にもつながります。

スポーツ庁では、健康行政に関して厚生労働省と連携して取り組んでいます。スポーツは健康に良く、社会を良くするということを多くの方に実感していただければ、スポーツの価値は向上します。

国民の皆さんがスポーツに親しんでいただけるためには、全国各地でスポーツ熱が向上することが必要です。そのためには、至るところにスポーツを楽しむ人がいて、そのための場があることが大切です。

スポーツの語源といわれる「デポルターレ」は、遊びや娯楽、気晴らしなど非日常的なことをすることを指し、幅広い意味を持っています。競技性の高いものだけが、スポーツではないのです。

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