2019年7月号

実務家教員による大学教育

職業経験から導いた知で貢献 研究能力は実務家教員にも必須

川山 竜二(学校法人先端教育機構 社会情報大学院大学 研究科長・教授)

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前回は、専門職教育が「社会人の学び直し」に通じるという観点から、「実務家教員とリカレント教育」の関連性について述べた。今回は、専門職教育や職業教育の一端を担う実務家教員の研究能力について論じていくことにしよう。

実務家教員の研究能力?

実務家教員には、①実務経験・実務能力、②教育指導力、③研究能力の3点が必要であると考えている。前回、リカレント教育という側面から実務家教員は、アンドラゴジーの観点を持つ必要性やリカレント教育プログラムの開発の担い手になりうることを論じた。それはいわば、実務家教員の教育指導力という側面である。今回は、実務家教員に必要とされる能力としての研究能力を取り上げたい。

実務家教員に研究能力が必要なのだろうかと考える者もいるかもしれない。だがしかし、実務家教員に研究能力は必須のものであると考える。研究能力を求める必要はないと考える者は、おそらく「研究能力」の意味を狭義的にとらえているのではないだろうか。つまり、学会発表や論文を執筆し学会誌に掲載される学術業績を研究と考えているのではないだろうか。もちろんそれは、研究能力を示すわかりやすいかたちではあるし、学術業績を有することに越したことはない。だが、学術業績のみを研究能力の証左とみなすのは有益なことではない。研究能力を「新たな知見」を生み出すことであると考えれば、より多義的で重層的な見方をすることができるのではないだろうか。ここで言いたいのは、学術業績によって生み出される学知と、実務家教員によって形成される実践知の、どちらがより優位なのかということを主張するものではない。実務家教員が唱える持論が、すべて実践知になるわけでもない。実務家教員の研究能力というのは、実務経験を持論として言語化しさらに、誰もが納得でき実際の現場で活用できるような実践知にする能力ということになる。

「実践の理論」と知識の複数性

実務家教員が関与する実践知としては、以前にも言及した「実践の理論」がキーワードになるだろう。この「実践の理論」という単語は、専門職大学に関する文部科学省の資料にも掲出されているし、「個人の能力と可能性を開花させ、全員参加による課題解決社会を実現するための教育の多様化と質保証の在り方について」という文部科学省の答申にも示されている。「実践の理論」そのものの定義は、明確にはなされていない。この単語の文脈を考えれば、理論と実践を架橋するもので、職業実践や社会課題解決にも寄与できる知識体系のこととも言える。

知識の社会史を紐解けば、さまざまな分野において学術研究者と実務経験をもつ実務家の知見が相互に作用して新たな知識が形成されてきた。「実践の理論」とは、まさにこうした学知と実践知が融合した専門知の体系なのではないだろうか。したがって、「実践の理論」の構築は、研究者教員、実務家教員どちらもが担わなければならない、お互いの対話によって生み出されていくものではないだろうか。

 

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